―飛沫感染や顔の接触に要注意、治療薬・マスク・メガネなどに需要拡大も―
本格的な花粉症シーズンの到来が迫っている。民間気象会社のウェザーニューズ <4825> は7日、関東南部や九州など8都県が花粉シーズンに入ったと発表した。これにより、既にシーズン開始が発表された地域とあわせ、合計で1都16県が花粉シーズンに突入したという。今年はコロナ禍ということもあり、花粉症によるくしゃみが新型コロナウイルスの更なる感染拡大をまねく要因となる恐れもある。ここのところ、国内の新型コロナ新規感染者数は減少傾向とはなっているものの、依然として予断を許さない状況が続いており、新型コロナ感染拡大防止の観点から 花粉症対策への備えが重要になってくる。
●ピーク時期は平年並みも飛散量は前シーズン比増加見込み
WNIウェザの発表では、関東地方のスギ花粉の飛散ピークは3月末ごろまでで、その後ヒノキ花粉が3月中旬から4月下旬ごろにかけて多くなる見通しという。九州など西日本の飛散ピークは、スギ花粉が3月下旬ごろまで、ヒノキ花粉が4月下旬ごろまでとしている。また、日本気象協会が1月20日に発表した「2021年 春の花粉飛散予測(第3報)」によると、今年の花粉症シーズンは昨年よりも飛散量が多くなるという。同協会では、飛散ピーク時期はスギ・ヒノキともに例年並みとなる一方、花粉の飛散傾向については例年より少ないとしつつも、前シーズン比では非常に多くなると予想しており、昨年に症状が軽かった人も今年の春は注意が必要だ。
花粉症は、くしゃみの症状が飛沫を拡散させてしまうほか、鼻水や目のかゆみから顔に手が触れる機会が多くなり、そうしたことが新型コロナの感染リスクを高めることにつながる。今月から国内でも新型コロナワクチンの接種が開始される見通しにあると伝わっているが、大半の国民へのワクチン接種完了は年後半ごろになるとされ、引き続き感染防止策の徹底が求められる状況に変わりはない。こうしたことから、花粉症対策への関心は例年以上に高まるとみられ、関連需要の増加が見込めそうだ。
●スギ花粉症治療薬手掛ける鳥居薬
鳥居薬品 <4551> は、2018年からスギ花粉症の減感作療法(アレルゲン免疫療法)薬「シダキュア スギ花粉舌下錠」を販売している。減感作療法とは、アレルギー疾患の原因となるアレルゲンを低濃度から投与し、高濃度へ移行させていくことでアレルゲンに対する過敏性を減少させる治療法のこと。同社が前週4日に発表した20年12月期決算では、シダキュアの売上高は7割近い伸びとなり、今12月期も2割増見通しと引き続き高い成長を見込む。
●目薬、洗浄液、スプレーなど多彩な対策製品
小林製薬 <4967> は、洗眼液「アイボン」や鼻うがい用洗浄液「ハナノア」、マスクでは「のどぬ~るぬれマスク」を手掛けている。ロート製薬 <4527> は、「アルガード」ブランドで目薬や飲み薬・鼻炎スプレー、目・鼻用洗浄液などの花粉症向け商品を販売している。参天製薬 <4536> が取り扱う目薬「サンテAL」「サンテALクール」は、充血やかゆみを抑える抗ヒスタミン剤に加え、炎症で傷ついた組織の修復を促す成分が配合されている。また、目に花粉やほこりなどが入った際に洗い流すことができる点眼型洗眼薬「ウェルウォッシュアイ」も提供している。
エステー <4951> は昨年12月、同社が手掛ける「MoriLabo(モリラボ)」ブランドから、「花粉バリアシール」「花粉バリアスプレー」の発売を開始した。「MoriLabo」は、同社が18年から展開しているヘルスケア製品ブランドで、スギ花粉のアレル物質の働きを低減するというトドマツから抽出した成分を活用している。同ブランドからは、マスクの外側に塗ることで浮遊するスギ花粉をガードする「花粉バリアスティック」も販売されている。アース製薬 <4985> は「アレルブロック 花粉ガードスプレー」を手掛け、低刺激タイプのもの、消臭効果や保湿成分を加えたものなどを販売している。フマキラー <4998> [東証2]は「アレルシャット」シリーズで花粉対策向けのスプレーや鼻クリームなどを提供している。
資生堂 <4911> は、花粉やPM2.5、ウイルスをブロックするスプレー・ジェルを手掛ける「アレルスクリーンEX」シリーズや、花粉などから肌を守る美容液やクリームなどを展開する「アレルバリア」シリーズを手掛けている。1月25日には、微粒子ガードスプレー「アレルシールド ミスト」を3月から販売開始することを発表している。コーセー <4922> は花粉症向けに「アレルテクト ミスト」など3製品を1月から発売している。同社は昨年1月から花粉対策スプレー「アレルテクト スプレー」を販売しており、今回「アレルテクト」をシリーズ化し、ウイルスや花粉ブロックニーズに幅広く対応するブランドとして提案の幅を広げていくとしている。
●引き続き需要高いマスク
マスクは例年、冬から春先にかけてインフルエンザ予防や花粉症対策としての需要があったが、コロナ禍によって年間を通した必需品となっている。「超立体マスク」「超快適マスク」を販売するユニ・チャーム <8113> 、「アレルキャッチャーマスク」を提供するダイワボウホールディングス <3107> のほか、「Newクリーンメイト」シリーズで花粉マスクや花粉めがねを手掛ける重松製作所 <7980> [JQ]などに注目したい。また、マスク関連株として脚光を浴びた川本産業 <3604> [東証2]、中京医薬品 <4558> [JQ]、アゼアス <3161> [東証2]、興研 <7963> [JQ]なども引き続きマークしておきたい。
●花粉対策メガネでJINSHD、愛眼、三城HD
メガネブランド「ジンズ」を展開するジンズホールディングス <3046> は12年から花粉対策メガネを手掛けるが、昨年12月には新製品を追加し、新たに「JINS PROTECT」シリーズとしてブランドのリニューアルを行った。同シリーズの商品には、花粉を最大98%・飛沫を最大83%カットする「JINS PROTECT」や、飛沫カットに加え保湿機能が付いた「JINS PROTECT MOIST」がある。また、今回追加した新製品「JINS PROTECT PRO」は、専用バンドやメガネと顔の隙間をカバーする透明フードがついていることで密着性を高め、飛沫を最大92%カットするとしている。
メガネの卸・小売大手の愛眼 <9854> は今月1日、花粉症による飛沫感染リスクなどへの対策として「抗菌 アイガン ガードグラスEX」を全国の店舗で販売すると発表した。同商品は、飛沫・花粉を最大99%カットし、ブルーライトカットレンズや抗菌加工を施したパーツを使用した多機能グラスだという。三城ホールディングス <7455> は運営するメガネブランド「パリミキ」において、花粉カット率が最大97%で、黄砂や風じん防止などの効果がある花粉・飛沫対策メガネ「Safety Glasses」を提供している。
●三陽商は「花粉プロテクトコート」提供開始
アパレル大手の三陽商会 <8011> は1月15日、21年春シーズンの「花粉プロテクトコート」を1月下旬から順次提供していくと発表した。同社が手掛ける「マッキントッシュ フィロソフィー」「ポール・スチュアート」など5つのブランドから、花粉対策機能を備えたスプリングコートを販売する。同商品は、表面の凹凸が少ない、高密度に織られた平らな生地を使用しており、軽く払うことでコートに付着している花粉の多くを落とすことができるという。同社では「花粉プロテクトコート」について、メンズは07年から、ウィメンズでは10年から販売を開始しており、花粉飛散シーズンに向けて毎年提案を行っているとしている。
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