大山季之【米国株マーケット・ビュー】―新たな投資サイクルのはじまり、ビック・テックは「ファンタスティック・フォー」の時代へ <AIの衝撃①>
◆「ティッピング・ポイント」を超えたエヌビディアの好決算
2月21日に発表されたエヌビディア
アームの値動きを見て感じるのは、今回の決算発表までは、孫正義さん(ソフトバンクグループ <9984> 会長兼社長)があれだけ生成AIの可能性とアーム事業の重要性を訴え続けていながらも、マーケットはそれを素直に受け取っていなかったのではないか、ということだ。決算結果とガイダンス(業績予測)が出て初めて、AI(人工知能)が同社の業績にこれほど寄与しているということを、皆が理解したのだ。
エヌビディア決算について当初、2024年1月期第4四半期の売上高は会社予測が200億ドルでコンセンサスが204億ドル、もし220億ドル以上を上げたら、マーケットにも驚きが広がるだろう、などと言われていた。結果、221億ドルの売上高で、続く24年2月-5月期も240億ドルの売上高見通しを示すなど、マーケットの期待以上のガイダンスが発表された。
もちろん、昨年以来、生成AIが次のイノベーションの中心になるということは、誰もが考えていた。だが、昨年までは言葉だけが先行していて、具体的にどれだけ利益を生むのかは織り込めていなかった。それが、今回の一連の決算で一気に証明されたわけだ。エヌビディアのCEO、ジェンスン・フアンが言う通り、完全に「ティッピング・ポイント(急激に事象が変化する転換点)」を超えたと言えるのではないか。
◆「あの企業も"AI銘柄"だった」‥決算で見えてきた各社のAI戦略
さらに今回の決算で特徴的だったのは、想定より広い範囲のハイテク企業に、生成AIの恩恵が生じていたことが分かったことだ。例えばIBM
2月29日に決算発表したデル・テクノロジーズ
さらにAIサーバー関連では、1月29日に24年6月期第2四半期の決算を発表し、ガイダンスを上方修正したスーパー・マイクロ・コンピューター
いま、エヌビディアのAI半導体 の"唯一の弱点"として挙げられているのは、大量のデータを処理するために、通常の半導体より熱を持ってしまうことだ。その点、同社のサーバーは冷却装置に定評があり、競合のデル・テクノロジーズやHPエンタープライズ等の大手企業が見向きもしなかった頃から、いち早く、エヌビディアのチップを搭載したサーバーを世界中に販売してきた。ドライと言われるアメリカ企業でも、こうした関係性は大きな意味を持ち、ジェンスン・フアンも同社には恩義を感じていると言われる。
結果として、GPU不足に喘ぐ大手企業を尻目に、同社では優先的にエヌビディア製のチップを調達することができ、生成AIブームを担う"陰の主役"と目されるまで評価が高まっている。リスクを取ってAIに賭けた企業とリスクを取らなかった企業で、明暗が分かれているのだ。
◆EVが後退し、ビック・テックは「ファンタスティック・フォー」の時代へ
いずれにせよ、今回の決算結果によって、アメリカの株式マーケットでは、「生成AI」を中心とした全く新しい投資サイクルの時代が幕を開けた、と言っていいのではないか。一方、対照的なのは、「EV(電気自動車)」に対するマーケットの関心だ。
先日、アップル
ところで、前回の記事で、マグニフィセント・セブンの構成企業について、市場関係者の中では様々な意見が出ていることを伝えたが、ここにきて目立ってきたのは、マーベル・コミックの主人公たちになぞらえて「ファンタスティック・フォー」にすべきではないかという意見だ。エヌビディア、マイクロソフト
アマゾンは今年に入ってから生成AIではいまのところ、目立った発表はないが、何と言ってもAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)という世界最大のネットワーク・インフラ網を持つ企業だ。データセンターが不可欠な生成AIのサービスでも優位なポジションにいることは間違いない。
メタは昨年、GAFAMの中では一人負けのような状態だったが、大リストラを経て、急速に業績を立て直している。決算発表によると、広告事業が好調で、その要因が生成AIの活用にあるという。エヌビディア製のAI半導体の大量購入も伝えられ、昨年まで取り組んでいたメタバースから生成AIへと事業を一気にシフトしたことで、俄然、市場の評価が高まっているのだ。
一方、EVに事業が偏っているテスラ
そうしたマーケットの意識の変化を表しているのが、トヨタ自動車 <7203> の再評価ではないか。皆さんご存じのように、トヨタは一時期、EVブームに乗り遅れていると批判され続けてきた。だが豊田章男会長は、一貫して「EVへの移行には時間がかかる」と語り、PHV(プラグイン・ハイブリッド車)の開発を重視してきた。それが間違いではなかったと、ここにきて、マーケットが理解するようになってきたのだ。
▼大山季之【米国株マーケット・ビュー】<AIの衝撃②>はこちら↓(本日11時30分配信)
「生成AI相場」で押さえておきたい3つのリスクと1つの投資戦略
【著者】
大山季之(おおやま・のりゆき)
松井証券マーケットアナリスト
1994年慶應義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)に入社。2001年ゴールドマン・サックス証券、10年バークレイズ証券、12年から金融コンサルを経て現職に至る。これまで、機関投資家向け株式営業を中心に、上場企業へのファイナンス提案、自社株買い、金融商品組成などに関わる。現在は松井証券のマーケットアナリストとして、米国のマクロ経済分析や企業、セクターの分析等を行う。
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