―コロナ禍でも色褪せないダイナミズム、“半導体争奪戦”で浮上するのはこの株だ―
●産業構造の変化で新たな需要のステージ創出
半導体関連株のダイナミズムが復活しそうな気配となっている。新型コロナウイルスは世界経済及び株式市場に多大な影響を与え、既にその脅威が認知されてから1年以上が経過したが、今なおアフターコロナの景色は見えてこない。
しかし、コロナ禍で世界の産業や経済構造が変化したことによって新たに創出された需要がある。新型コロナは消費の巣ごもり化を進展させたほか、テレワークの導入加速や企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)投資を加速させた。結果としてもたらされたものが、情報通信機器やデジタル関連機器の市場拡大とデータセンターの増設需要である。そして、それらが膨大な半導体需要を生み出した。くしくも世界は5G時代に本格突入しており、通信の付加価値化と相乗してこの流れはもはや止まらないものとなっている。
●5G、スマホ、自動車に飲み込まれる半導体
5G対応スマートフォンやパソコンなどの情報端末はもとより、エレクトロニクス武装が進む自動車向けに半導体需要は急増している。売れ行きは絶好調であるのに、半導体供給が間に合わないことにより生産調整を強いられた自動車業界がメディアを賑わしたが、この半導体不足はあらゆる産業に広がろうとしている。
こうしたなか、半導体の製造は国家を支える重要インフラであることに気がついたバイデン米政権は、巨額のデジタルインフラ投資計画を新たに打ち出し、半導体サプライチェーンの強化を謳い、その実現に向け本腰を入れる構えをみせている。バイデン政権は今月に入り、米インテルや台湾の受託生産最大手TSMC幹部とオンライン協議を行ったことが伝えられたが、早速インテルは3月下旬に米国で受託生産事業を始めることを表明している。スーパーサイクル突入の様相を呈す半導体業界を象徴するように、インテルは2024年に米アリゾナ州で日本円にして2兆円規模の新工場を稼働させる予定にある。
●強靱な半導体供給網の確保が喫緊の課題に
一方、TSMCは3年間で約11兆円の設備投資計画を最近発表し話題となった。これは、米中摩擦による政治的な対立が影響しており、欧米の半導体メーカーが生産委託先として、元来中国メーカーに発注する分を台湾メーカーに付け替え、その最大の発注先がTSMCであったという伏線がある。半導体不足は、需要もさることながら政治的理由を背景とした調達難という背景があるのだが、いずれにしても米中冷戦時代を迎え、国家安全保障の側面からも強靱な半導体供給網の確保は喫緊の課題となっている。
こうした状況を裏付けるかのように、世界の主要半導体企業の業績は有卦(うけ)に入っている。直近脚光を浴びたのは、オランダの露光装置メーカーASMLホールディングだ。今月21日に発表した同社の21年1-3月決算は大幅増収増益で売上高、利益ともに市場予想を上回ったほか、21年12月期の売上高予想を上方修正した。同社の決算発表は、日米の株式市場においても半導体セクターが物色人気化する起爆剤となった。
●需要のビッグウェーブが押し寄せる
こうした流れのなかで、日本の半導体製造装置 メーカーにも需要のビッグウェーブが訪れている。世界の半導体製造装置メーカー上位15社のなかで東京エレクトロン <8035> をはじめ日本企業は約半分の7社を占める状況にある。世界半導体市場統計(WSTS)は昨年12月、21年の半導体市場規模が約50兆円(前年比8.4%増)と過去最高水準に達するとの見通しを開示しているが、現在の世界の状況を考慮すると、この数字は更に伸びる可能性がありそうだ。
「株価は経済を映す鏡」というが、それは必ずしもマクロ的な見地ではなく、ミクロの視点でも資金が流れ込む場所を如実に照らし出す。今のように世界中で“半導体争奪戦”の気配が漂う状況にあって、半導体製造装置メーカー及びその周辺技術を有する銘柄群の株価も大きく見直されるチャンスが巡っている。来週は27日にアドバンテスト <6857> 、30日に東京エレクトロンと大手半導体メーカーの本決算発表が相次ぐが、21年3月期だけでなく22年3月期の業績も拡大基調は不変といえる。今の地合いでは好決算発表が必ずしも当該銘柄の株高につながらないという弱みはあるが、業界全体の好環境が改めて確認されることになるだろう。
ここは、あえて夢を内包する中小型株に照準を合わせてみたい。今回のトップ特集では、半導体関連の中小型有望株に焦点を合わせ、中期的にみて株価の居どころを大きく変える可能性がある銘柄を一挙10銘柄リストアップした。
●中期株価変貌に向け期待十分の10銘柄
◎TOWA <6315>
モールディング装置(樹脂封止装置)を主力とする半導体製造装置メーカーで、超精密金型でも高い競争力を誇る。同社の強みとするコンプレッション方式によるモールディング装置は採算性が高く、台湾のTSMCなどアジア大手半導体メーカーの設備投資増強の動きを取り込み利益急成長の牽引役を担う。21年3月期営業利益は前の期比4倍化を見込むが22年3月期以降も2ケタ成長トレンドを継続する可能性が高い。
◎QDレーザ <6613> [東証M]
半導体レーザー技術を駆使した応用製品の開発製造を手掛けている。視覚障害を持つ人を対象とした網膜走査型レーザーアイウェアの育成に力を入れている。同社は中核技術として量子ドットレーザーの開発に成功しており、半導体業界における永遠の課題である微細化技術でもキーテクノロジーとなるだけに業界からの注目度は極めて高い。業績は赤字継続ながら、将来的な収益変貌期待からマザーズ市場でも存在感を際立たせている。
◎ザインエレクトロニクス <6769> [JQ]
ファブレス半導体メーカーの草分けで、独自ノウハウを武器に特定用途向け製品で高シェアを獲得、アナログ・デジタル双方に通じた自社ブランドのLSI開発を強みとし、自動車やデジタル機器分野で高水準のニーズを獲得。5GやAI・IoT、電気自動車(EV)など成長分野に照準を合わせた中期戦略を進める。直近では超小型5G通信モジュールの販売を開始しており重点分野での需要取り込みを狙う。
◎内外テック <3374> [JQ]
半導体製造装置部品の仕入れ販売を行う電子部品商社で受託製造も行っている。東京エレクトロンとの取引関係が厚く収益環境は今後も含めて良好。企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)投資拡大などに伴うIT機器需要や高速通信規格5Gの商用サービス本格化に伴う需要が旺盛。21年3月期業績は営業利益段階で6割近い増益を見込むが、会社側予想から更に上振れる可能性もある。
◎インスペック <6656> [東証2]
半導体基板の外観検査装置メーカーで商品技術力が高い。その礎となっているのが、外観検査で求められる画像処理、メカトロニクス、光学センシングの3分野の技術をすべて社内で保有していること。コロナ禍で納期のずれ込みも影響して足もとの業績は低迷しているが、22年4月期以降は回復トレンドに向かう見通し。直近、国内外の企業から合計4億8000万円の大型受注を獲得し22年4月期に納入予定。
◎トーカロ <3433>
コーティング材料を高温の熱源を使った加熱吹き付けによって皮膜形成する表面処理加工(溶射加工)のトップ。好採算の半導体製造装置部品向けで需要を捉えており、業績は極めて好調に推移している。プラズマ溶射やアーク溶射、フレーム溶射など幅広く産業界のニーズに対応している。21年3月期業績は2度にわたる上方修正を行い、営業2割増益を見込んでいるが、22年3月期も2ケタ伸長が有力視される。
◎ホロン <7748> [JQ]
電子ビーム技術を駆使して半導体やナノテク分野で検査・計測技術を提供。フォトマスク回路検査装置やローラーモールド測定装置などを展開するが、商品競争力の高さに定評がある。特に半導体の微細化投資を背景に市場が急拡大しているEUV露光装置向けなどで高水準の需要を獲得している。業績は前の期に爆発的な利益の伸びをみせた反動もあって21年3月期は大幅減益見通しながら、中長期的な成長余地の高さにかげりは全くない。
◎山一電機 <6941>
ICの基板装置や検査で使用する検査用ソケットの大手メーカーで、スマートフォン向けテストソリューションなどで旺盛なニーズを取り込んでいる。米アップルのサプライヤー企業の一角としても実績が高く、5G対応スマホの好調を背景に収益機会が拡大。21年3月期営業利益は微増予想ながら22年3月期は2ケタ成長が有力視。自動運転車普及をにらみ業界最小の車載デジタルカメラ用コネクターを開発している。
◎アオイ電子 <6832> [東証2]
独立系ICメーカーで半導体集積回路やモジュール、MEMS(微小電気機械システム)デバイスなどを手掛ける。21年3月期は営業6割減益見通しと低調ながら、ここで底入れとなる公算大。携帯情報端末向けで優位性を持つが、足もと5G対応スマートフォンの増産が収益拡大を後押しする局面に入った。22年3月期は利益倍増の可能性を内包する。年56円配当にしてPBR0.6倍近辺は評価不足が歴然だ。
◎タツモ <6266>
中国や台湾メーカーを主な需要先に貼合・剥離装置や洗浄装置などの半導体製造装置や搬送ロボットを手掛け、液晶用塗布装置でも競争力が高い。台湾のファンドリー最大手TSMCが打ち出した巨額の設備投資増強などで中期的な追い風は強力。直近開示した23年12月期を最終年度とする中期経営計画では経常利益段階で28億4700万円(20年12月期実績18億4900万円)を掲げている。
株探ニュース
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