世界的な半導体のひっ迫状況については、一部の半導体についてはライン確保の困難によって製造ができない面はあるものの、全体としては緩和の兆しが見られてきた。製造委託先であるファウンドリー側の設備増強が実現してくることによって絶対値の増加が見込まれる。また、画像処理半導体(GPU)を手掛ける米エヌビディアが業績予想の下方修正を発表するなど、急激なインフレの進行によって消費者の購買意欲が大きく低下し、パソコンやスマートフォンの需要減が見られていることから需給緩和も進む可能性がある。これにより半導体製造ラインを確保しやすくなり、テックポイント・インク<6697>においては、CMOSイメージセンサーなどの戦略商品の量産に向けた生産ラインを確保することができると見込まれる。
ウクライナ問題については、これによってエネルギーや資源価格が高騰したという背景がある。同社の半導体生産委託先においても生産コストの上昇の影響から値上げの動きは発生しているが、今後も委託先から調達価格の値上げを要請される可能性はあると見ている。その場合には同社において、販売価格に転嫁する努力が必要になってくるだろう。
コロナ禍による影響では、3月末から5月末までの約2ヶ月間にわたり上海市がロックダウン(都市封鎖)となり、半導体業界全体にとって大きな打撃となった。同社においても半導体製造工程において一部上海に所在する工場に委託しているため、ロックダウン期間中は供給が滞り、在庫の販売と代替調達(委託先の別地域の工場で製造)により調達コストの上昇はあったものの、需要家への供給を続けることができた。ただし、他社においては供給を維持できなかったところもあるため、半導体生産のひっ迫状況とあわせて、完成品メーカーにおいて部品が揃わずに製造が滞る事象も発生。そのため、同社への納品要請にも影響が見られている。
また、ウクライナ問題やコロナ禍による影響から、世界的なインフレーション(物価上昇)が深刻化している。消費が混迷するなか、同社半導体を使ったカーナビシステムなどの車載用アフターマーケットや監視カメラの全体需要は軟化している。そのため販売先の完成品メーカーの一部においては部品の在庫調整の動きも出てきているようだ。こうした背景に基づき、2022年12月期下期については顧客先での在庫調整などに伴う需要減によって弱含みで推移すると見込んでいる。
監視カメラ及び車載カメラの両分野ともさらなる成長が見込まれる。コロナ禍の影響などから減速は重要な事業機会を逸したものではない
なお、世界的な景況感の不透明要因から目先的には需要減が見込まれるものの、同社のアナログ方式とIP方式合計の監視カメラを合わせた監視カメラシステム出荷台数規模は、同社の「事業計画及び成長可能性に関する事項」によると、2023年に2億4,510万台、世界市場規模は金額で683億4千万米ドルと予測されており、2019年から2025年までの世界市場の年平均成長率は15.03%と予測されている。また、車載カメラシステムにおいては2019年時点の出荷台数が1億3,045万台、市場金額は約99億米ドルであったのに対して2035年には出荷台数が3億1,237万台、市場金額は約352億米ドルと予測されているなど、監視カメラ及び車載カメラの両分野とも市場として確立されることから、成長が見込まれている事業分野であると言える。
監視カメラシステム市場は、旧式低解像度機種の耐用期間後の交換に際して高解像度機種が選択されているほか、車載カメラシステム市場については、ドライブレコーダーの普及やサラウンド・ビューなどの操作・安全補助機能の進化・拡大において新技術を用いた高機能製品が求められている。同社はアナログ・デジタル混載技術を持っており、完成品メーカーの多様な要求に対応することができるほか、5ヶ国に6事業拠点を設けるなど、就労条件の多様化を図り、優秀な人材の確保につなげている。さらに、監視カメラの映像伝送に必要な4種の半導体(イメージセンサー・ISP・Tx・Rx)すべて(CMOSイメージセンサーは第3四半期よりサンプル出荷を開始)を供給可能、また車載用では(ISP・Tx・Rx)3種の供給が可能(ISPとTxは一体化製品もある)である。機能別半導体を組み合わせた提案をすることで、製品メーカーにおいては半導体相互の接続調整が容易になるため、同社半導体の採用機会を増やすことができる。さらに、中国メーカーが世界の市場シェアの大部分を獲得しており、年間生産台数の約半数が同社の既存顧客によって製造されている。今後、画素数が800万画素の4Kカメラ向けCMOSイメージセンサーが本格化してくることによって、よりシェアを大きく伸ばすことが可能になると弊社では考えている。なお、米中貿易摩擦による影響については、米国では中国所在の特定のメーカーの製品の購入を規制していると見られる動きがあるため、規制が強化される局面では影響は少なからず受けることになろう。ただし、他社製品にすぐさま切り替えるのは困難であり、結果的には同社製品を既に採用している米企業においては、他社経由から同社製品を購入する動きに向かわせると弊社では考えている。
なお、需要の減少は、主に中国の主要都市の封鎖、他社半導体製品の供給不足、及び世界的なインフレ圧力によるものであり、同社が事業機会を逸したといった性質のものではないと弊社では見ている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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