5月第1週(1、2日)、第2週(8-12日)の間、新興市場はもみ合いが継続。決算発表が佳境に入るなか、東京証券取引所からのPBR(株価純資産倍率)1倍割れの改善要請を受けた直後とあって、国内企業からは株主還元策の発表が相次いだ。このため、投資家の目線は東証プライム市場の銘柄に集中しやすく、新興株の商いは盛り上がりに欠ける状況が続いた。連休明けの週後半には米4月の物価指標でインフレの鈍化基調が確認され、米金利が大きく低下するなど支援材料もあったが、これも好感されず、東証株価指数(TOPIX)や日経平均が年初来高値を更新するなか、新興株は冴えない状況が継続した。なお、5月第1、2週の間の騰落率は、日経平均が+1.84%であったのに対して、マザーズ指数は+0.33%、東証グロース市場指数は+0.23%だった。
個別では、ジーニー<6562>、フォースタートアップス<7089>、デコルテHD<7372>などが決算を受けて売られ、5月第1、2週の間の値下がり率ランキング上位にランクイン。セルシード<7776>は開発製品の治験届提出の遅れが嫌気され、-25%と下落率トップになった。ほか、Ridge-i<5572>、レオス<7330>、ispace<9348>など直近の新規上場銘柄で値崩れする銘柄が見られた。一方、業績関連のリリースを材料にピアズ<7066>、ストリームM<4772>、フレクト<4414>、アプリックス<3727>などが急伸し、値上がり率ランキング上位に入った。
■決算発表一巡で新興株に目線向くか
来週の新興市場は強含みか。日経平均やTOPIXが年初来高値を更新する一方、マザーズ指数は2月中旬以降、レンジ推移から抜け出せていない。今週は、米国の消費者物価指数(CPI)と卸売物価指数(PPI)でインフレの鈍化基調が改めて確認でき、米金利が大きく低下する中ではあったが、冴えない展開が続いた。
しかし、来週は週初15日を過ぎれば国内企業の決算発表も一巡する。これまで決算発表に合わせた株主還元策の強化や中期経営計画の発表を背景に、東証プライム市場の銘柄に投資家の目線が向きがちだったが、こうした新興株にとって不利な環境も転換してくることが予想される。
一方、米国では地銀の経営不安が再燃しているほか、連邦政府の債務上限問題がくすぶっており、海外市場発の警戒材料には事欠かない。こうしたリスク要因が表面化してきた際には流動性リスクの高い新興株は真っ先に売り対象となるため、注意が必要だ。また、商品投資顧問(CTA)など機械的な売買主体が手掛けることのない新興株は投資家心理や市場の実体を反映しやすく、先行性が高い傾向をもつ。このため、新興株が日経平均やTOPIXにキャッチアップするのではなく、日経平均などの方が調整する形で新興株との乖離を埋めてくる展開も想定される。
ほか、ispaceなど売買代金上位の銘柄で値崩れしている銘柄が散見されるほか、足元では、日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信<1357>の発行済み投資口数が過去最多を更新する一方で、日経平均の年初来高値更新が続いており、個人投資家の含み損益の悪化状況も気掛かりだ。新興株の出遅れ解消に期待したいところだが、慎重さは引き続き保っておいた方がよさそうだ。
個別では、悪くない決算にもかかわらず出尽くし感が先行したサンウェルズ<9229>やM&A総研HD<9552>などに注目していきたい。なお、6月の新規株式公開(IPO)としてABEJA<5574>、Globee<5575>の2銘柄が決定している。
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