2. 事業セグメント別見通しと注力点
(1) 自動車部品事業
自動車部品事業では、世界的なコロナ禍の影響により半導体不足が続いていることに加え、中国のゼロコロナ政策によるロックダウンなどが重なり、未だ自動車生産の低迷が続いている。しかしながら、世界的な需要及びEV普及の加速により、2024年にかけて緩やかな回復基調が続くと見られる。
アルファ<3434>は、中期経営計画で海外ネットワークを5つに区分けし、この5つのリージョンで事業が完結する仕組みを構築することで、グローバル展開に弾みを付ける方針だ。直近では、原材料高騰に対して「材料置換」「再生材活用等での使用量削減」のほか、在庫管理の徹底、変動費や固定費の削減に注力することで、事業での黒字転換を目指している。一方、先行投資は継続するなど、攻めの基盤構築も怠っていない。一例を挙げると、欧州では、キーセット事業に加えドアハンドル事業に参入することを目的に、2018年10月にSociete de Peinture de Pieces Plastiques SAS(以下、SPPP)を取得、環境規制の厳しい欧州で既存塗装設備を活用したビジネスの早期立ち上げを行った。既にRenault S.A.(ルノー)などにバックドアハンドルを納入しており、今後はVW以外でのビジネス拡大が見込まれる。事業拡大に向け、欧州でのハンドル事業の本格稼働に向けた取り組みのほか、チェコのキーセット工場で生産性向上にも注力する。ドアハンドル事業においては、ハンドルがドアパネルに格納される「フラッシュハンドル」を搭載する欧州車も普及し始めていることから、ハンドルの高付加価値化も期待される。VW向けについては、欧州でキーセット事業でのフルライン受注を目指すほか、北米向けではインサイドハンドルなどの納入を始めた。
中国では、2019年4月に中国の自動車用メッキ部品製造会社のADVANCONを子会社化した。ADVANCONは最新鋭の設備を所有しており、中国での環境規制強化のなかでも優位性があることから、コロナ禍収束後の事業拡大が見込まれる。また、新市場としては、中国でのRKPS(リモートキーレスエントリー&プッシュエンジンスタート)事業も順調に拡大しており、中国トラック市場での新たな事業展開が期待される。さらに、ここに来て急拡大しているのがASEAN地域での事業展開だ。同地区ではいすゞ自動車、フォード、三菱自動車などが主要顧客となっており、2022年3期は中国の不振を埋めて高成長を達成した。2023年3月期以降も収益拡大が続くと見られる。
日本については、日産自動車と三菱自動車が共同開発した軽EV(日産自動車は「SAKURA」、三菱自動車は「ekクロスEV」として2022年5月に発売)のキーセットに同社の製品が採用された。今後も同社製品の採用拡大に向けて、軽自動車向け等へも拡販し、国内でのシェアアップを図っていく方針だ。キーセット事業においては「集中・集約」による生産効率の追求、ハンドル事業においては高付加価値製品の投入なども重要な課題となろう。
(2) セキュリティ機器事業
セキュリティ機器事業では住設機器部門が好調に推移していることから、2023年3月期売上高は期初予想の13,500百万円を大きく上回る見通しだ。
住設機器部門は2008年に標準電気錠を発売以降順調に成長している。成長ポテンシャルが高く、新規住宅への採用率もさらに高まると予想されていることから、今後も売上拡大が見込めると弊社では見ている。直近では、賃貸大手のレオパレス21<8848>が、賃貸物件の約8割にあたる44万件に、同社が(株)ビットキーへ供給している「edロックPLUS Bitkey Edition」を導入することを発表し、2022年6月より導入を開始した。このほかにも賃貸向けに19社から採用を獲得しており、電気錠事業の拡大が続く見通しだ。同社はこのような需要拡大を睨み、ALPHA HOUSING HARDWARE(THAILAND)において2020年より第4工場建設を行ってきたが、さらに第5工場も新設し、2022年11月から稼働している。これにより生産能力が2020年3月期の2.5倍まで高まるとのことで、賃貸向け等の需要にも対応しさらなる拡大が見込めるほか、同業他社に対し生産コスト面でも優位性を維持できると見られる。なお、電気錠分野ではミネベアミツミ<6479>が(株)ユーシンの住宅機器部門を活用していることに注意が必要だ。一例を挙げると、ミネベアミツミはスマートハウス構想として、住宅・ビル用スマートロック事業への本格拡大を目指しており、1台のスマートフォンで自動車及び住宅のドアの施解錠を行えること等を推進している。
ロッカーシステム部門では、リモート対策や置き配など、コロナ禍収束後を見据えた新たなビジネス展開が重要となる。この分野では、オンラインで注文した商品を店舗で受け取るBOPIS(Buy Online Pickup In Store)での展開を加速している。一例を挙げると、2020年11月に、店舗側システムと連携し、QRコードを使って受け渡しができる「STLシリーズ」を発売した。これは、従来店頭で受け渡していた商品を、クラウド管理されたロッカーを介して非対面で顧客に受け渡すことができるものだ。店舗効率化と顧客への利便性提供が同時に図れることから、コロナ禍対策として調剤薬局や飲食店等、多様な業態での利用が期待される。実際、クオール(株)が展開するクオール薬局や(株)ココカラファイングループが展開するココカラファイン、イオン薬局(イオンリテール(株))等で処方箋医薬品等を非対面で店頭受渡しをするロッカーとして採用されている。同分野は、オンライン診療の拡大により調剤受渡しの拡大も予想され、潜在市場としての期待も大きい。加えて、スーパー、ホームセンター、クリーニング店などの業態にも拡大が見込まれるほか、象印マホービン(株)が始めた「象印マイボトルクローク」など、モバイルオーダーとロッカーシステムでの新たな展開が期待される。また、ターミナルロッカーについては、ネットワークによる管理機能に対応した「ICカード対応AISシリーズ」の投入などにより、さらなる事業の拡大を目指す。
このように、セキュリティ機器事業では、電気錠の拡大を中心に、ロッカービジネスでもインバウンド再開、BOPISや新ビジネスの拡大も加わり、2025年3月期の売上計画である13,000百万円を大きく上回り、中期的には20,000百万円も視野に入るビジネスに育ってくると弊社では期待している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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