1. 2023年12月期第2四半期の業績概要
井関農機<6310>の2023年12月期第2四半期の連結業績は、売上高が前年同期比6.5%増の92,392百万円、営業利益が同6.8%増の2,741百万円、経常利益が同9.8%減の3,003百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同24.8%減の1,939百万円となった。国内事業、海外事業がいずれも増収だったことを受け、売上高は前年同期の実績を上回って着地した。利益面に関しては、販管費が前年同期比で増加したものの、増収効果に加えて適正な利益確保に向けた価格改定を実施したことでコスト増を吸収し、営業利益は前年同期を上回って着地した。
国内売上高については、前年同期比1.3%増加の58,275百万円だった。2023年4月に実施した価格改定とその駆け込み需要の反動や一部生産遅延があったことなどにより、農機製品の売上高は前年同期を下回ったものの、中期経営計画で推進する収支構造改革が順調な進捗を見せ、メンテナンス収入が増加した。加えて、大型農業用施設の受注があったことも売上高を押し上げた。また、同社が注力する環境保全型スマート農業においては、自動抑草ロボットのアイガモロボの販売が好調に推移した。アイガモロボを切り口にこれまで接点のなかった他社顧客との取り引きも出てきているという。今後も、有機農業の普及に向けてアイガモロボの拡販に注力しながら、新規顧客の獲得と関連商品のクロスセルに注力していく方針だ。品目別の売上高は、トラクタなどの整地用機械が前年同期比10.2%減の12,931百万円、田植機などの栽培用機械が同7.7%減の5,117百万円、コンバインなどの収穫調製用機械が同6.7%増の5,775百万円、メンテナンス収入などの作業機・補修用部品・修理収入は同2.0%増の21,460百万円、施設工事などのその他農業関連は同16.4%増の12,989百万円だった。
海外売上高に関しては、前年同期比16.9%増の34,116百万円だった。北米、アジアが前年同期比で減収だったものの、欧州が引き続き好調だったことを受け、前年同期比で増収となった。北米地域の売上高は、同11.9%減の7,400百万円だった。コンパクトトラクタ市場の調整局面が継続したことが響いた。OEM供給先であるAGCO
利益に関しては、増収効果に加えて、原材料価格高騰の影響を受けて価格改定を実施したことにより、営業利益は前年同期比で増益となった。一方、ESG関連の施策を推進するなか、資金調達方法の多様化を目的にESGファイナンスを実施したこと、主に海外子会社での有利子負債増に伴い金融費用が増加したことなどを受け、経常利益、親会社株主に帰属する四半期純利益に関しては前年同期比で減益となった。
2023年12月期第2四半期のトピックスとしては、2023年6月にアーリーステージにあるベンチャー企業等を対象として出資枠10億円を設定したことが挙げられる。同社はこれまでも環境保全型スマート農業推進の一環としてスタートアップ企業である有機米デザインへの出資(2022年6月)をした実績がある。みどりの食料システム戦略や食料・農業・農村基本法の見直しが議論されるなど、同社を取り巻く事業環境や農業そのものの構造が大きな転換点を迎えている。そうしたなかで、今回の出資枠設定により、同社の強みである連携によるイノベーションをさらに加速させ、農業が直面する諸課題の解決に事業を通じて貢献していく考えだ。具体的な出資分野としては、自動化や電動化に資する先端技術・ICT分野、環境分野、6次産業化への参画など食料自給率向上に資する分野などを有望視しており、国内外のベンチャー企業との協業により新規製品・サービス・ビジネスモデルの創出を目指す。2023年12月期第2四半期においては出資先が開発するアイガモロボの販売が好調だった。今後も新たな出資先との協業により、同社業績の拡大と農作業環境の向上に資する製品・サービスが市場に投入されることが期待される。
そのほか、10年ぶりにモデルチェンジされ操作性・居住性・安全性が強化された中型トラクタBFシリーズが市場に投入されたほか、マップデータ連動可変施肥田植機PRJ8-FSも発売された。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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