2. 企業特長
(1) 成長モデル
アライドアーキテクツ<6081>の売上高は、「顧客企業数」と「顧客単価」の掛け算方式で積み上げられる(ストック型ビジネス)。すなわち、SaaSにより「顧客企業数」の拡大を図るとともに、比較的広告予算のある大手企業に対しては、顧客ニーズに合わせた様々なソリューションを組み合わせた総合提案により「顧客単価」の向上を目指す成長モデルと言える。なお、顧客からの収益源は、SaaSによるサービス利用料(月額課金)をコアとするほか、キャンペーンなどにかかる各種ソリューション(インフルエンサー、制作、運用、コンサルティング、プランニング、広告、インバウンド、越境など)によって構成されることから、「顧客単価」の向上のためには、キャンペーン開催頻度を増やすことやサービス間のクロスセル(組み合わせ)を推進することが重要となる。特に、「ファン・リレーションシップ・デザイン」構想の実現に向けては、WebやSNSに限らず、リアルの場を含めた「ファン」とのつながりをいかに創り出していくのかが、これからの「顧客単価」向上のカギを握るものと考えられる。
(2) 収益構造
主力のSNS関連サービスにかかる原価はSaaS運営費がほとんどであり、基本的には利益率の高い事業モデルである。ただ、広告収入については、広告原価がかかってくるため、広告収入の拡大(売上構成比率の拡大) は売上高を伸ばすことには大きく貢献するものの、売上総利益率の低下を招くことに注意が必要である。したがって、同社の本来の業績の伸びを見るためには、売上高よりも売上総利益額の動きを追うのが妥当と言える。もっとも、業績の変動要因となりやすい海外SNS広告サービスについては実施しないことを決定している。
また、同社は成長フェーズにあるため、広告宣伝費や開発費、M&Aにかかる費用など、将来に向けた先行費用の掛け方(政策的な判断)が営業利益率を左右するところにも注意する必要がある。
(3) 同社の優位性
同社の優位性は、今後市場が拡大するSNSマーケティング領域に特化し深掘りをすることにより、他社に先駆けて独自のポジショニングを確立したところにある。これまで積み上げてきたアセットは、同社プラットフォームに登録された顧客企業のファン総数1,910万人以上、同社サービスにより生まれたUGC生成数1,432万件以上、累計クライアント数5,000社以上に上る。特に、マーケティングプラットフォームの最大の成功要因は、会員ユーザーをいかに増やし、エンゲージメントを創出するかにかかっているが、会員ユーザーは魅力的なキャンペーンが充実しているところに集まる一方、顧客企業も会員ユーザー数の多いところを選ぶことから相互に作用し合う好循環が生まれやすい。また、集客のための広告宣伝費や機能強化等への開発費などにスケールメリットが働く事業モデルであることから、国内最大級の会員ユーザーや顧客基盤、SNS各社との強固なネットワークを有する同社には大きなアドバンテージがある。
また、市場ニーズの拡大に合わせてサービスの拡充(進化)を図ってきたことや、これまで積み上げてきたアセットを生かし、顧客企業のファンベースマーケティングをワンストップで支援できるところも、今後の事業拡大に向けて大きな武器と言える。
3. 沿革
同社は2005年、インターネットを活用したマーケティング支援を目的として、現代表取締役会長の中村壮秀(なかむらまさひで)氏によって設立された。中村氏は、住友商事<8053>を退職後、インターネットビジネスの可能性を信じて、ゴルフダイジェスト・オンライン<3319>の創業に参画し、東証マザーズ上場に貢献した。そこでクチコミの重要性を実感するとともに、社会的意義や市場の大きさを確信したことが、人と企業のエンゲージメントの創出を使命とする同社を設立した経緯である。
2006年にホームページ制作事業の立ち上げと、各分野のエキスパートによるクチコミサイトをスタートさせた。当初はプロやブロガー等のセミプロ向けのコミュニティサイトを運営していたが、2008年に一般ユーザーを対象としたファンサイトモールをスタートさせ、現在の事業モデルが立ち上がった。
事業拡大の転機となったのは、2011年からFacebook向けにサービスを開始したことである。このことが、会員ユーザーの獲得に拍車をかけ、同社の成長を支えてきた。その後もTwitter(2012年)やInstagram及びLINE(両社ともに2015年)との連携も開始している。
2013年11月に東証マザーズに上場。2014年3月にはシンガポールに子会社を設立して「ReFUEL4®」サービス(現在の「CREADITS®」)によるSNS広告クリエイティブ制作事業を立ち上げた。また、2016年4月には中国最大規模のSNS「Weibo」の公式マーケティング会社IMSと提携し、「Weibo」の公認サービス「WEIQ」の日本における独占販売契約を締結するなど、越境プロモーション事業の拡大に向けて足掛かりを築いた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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