1. 沿革
1930年に初代社長が東京都にスプリング専門工場を設立して創業した。1946年に株式会社に改組し、社名を株式会社加藤スプリング製作所に、2001年に現在の株式会社アドバネクスに変更した。
1964年に東証2部へ新規上場を果たし、2004年に東証1部へ指定替えとなった。
同社は、1980年代以降、世界的なヒットを飛ばし、トップシェア製品を輩出した。音楽テープ用テープパッド(国内シェア70%)、ビデオテープ用リーフスプリング(世界シェア50%)、3.5インチフロッピーディスク用シャッター(世界シェア80%)、携帯電話用ヒンジ(世界シェア50%)、光ディスク用センターハブ(国内シェア90%)などである。現在は、医療用の留置針用ばねで国内シェア60%を獲得している。
海外への進出も早く、1971年に米国に子会社を設立したのを皮切りに、シンガポール、イギリス、香港、タイ、中国、ベトナム、メキシコ、ドイツ、チェコ、インドネシア、インドに海外子会社を開設している。
製品ライフサイクルを10年以上とする市場にターゲットを移行
2. 事業内容
同社は、これまで多くのオンリーワン製品によりトップシェア製品を輩出してきた。それらの中には、国内にとどまらず、世界でもトップシェアを築いたものがある。1971年から海外に進出しており、米国、欧州、アジアに数多くの生産・販売拠点を展開している。自動車や医療機器などの市場で、グローバル展開をし、タイムリーな供給を求める世界的な規模のメーカーをターゲットとし、グローバルニッチトップを獲得できる分野に特化する戦略を採っている。「エリア」「顧客」「領域」「加工技術、製品」の4つの軸から事業戦略を策定し、自社の競争力が強く、市場の成長性が高い、自動車、医療機器、規格品を注力市場としている。
2015年3月期にプラスチック事業を売却したため、現在は精密ばね専業メーカーである。単一事業セグメントであるが、用途別と所在地別の連結売上高の内訳を公表している。取引先は約2,000社あり、製品種類は約15,000種類に及ぶ。世界の主要な日欧米系のTier 1となる自動車部品会社と取引をしている。
用途別売上高は、かつて売上高の半分を占めていたOA機器が大幅に減少し、自動車が2015年3月期から最大の顧客先となり、2020年3月期第2四半期では5割を突破した。日本の電気機器メーカーは、かつてAV機器などで世界市場を席巻したが、デジタル化の進展やスマートフォンなどの新製品の登場、新興国の台頭により、事業規模の縮小や撤退に追い込まれた。事業環境の変化に対応して、同社は強みが発揮でき、長期的に持続的な需要が見込める市場にターゲットを移行した。製品のライフサイクルは、家電が約1年、OA機器で約3年であるのに対し、自動車は約10年、医療機器は約20年、航空機は約25年、規格品は数十年と極めて長い。
2020年3月期第2四半期の市場別売上高構成比は、自動車(輸送機器)が50.6%、OA機器が14.8%、医療機器が8.6%、精密機器が4.4%、航空機器が4.1%、インフラ・住設機器が3.5%、AV・家電が2.9%、情報通信機器が2.6%、その他が8.5%であった。OA機器の想定以上の落ち込みにより、自動車が50%を超え、医療機器と航空機の構成比が上昇している。
所在地別の売上高構成比(2020年3月期第2四半期)は、日本が40.6%、米州が11.3%、欧州が9.7%、アジアが38.5%である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
<SF>
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