―暖房機器、カー用品、ホームセンターに冬の追い風が吹く―
強烈な寒波が日本列島を覆っている。昨年12月半ばには、新潟・北陸を中心とした 大雪により関越道で多くの車が立ち往生し、自衛隊に災害派遣を要請するに至った。今年に入っても寒さは衰えることなく、各地で大雪をもたらし多くの雪害が発生している。ただ、こうした強烈寒波に襲われるなかで売り上げを伸ばす業態も少なくない。厳冬ニッポンなんのその、ホットな関連銘柄を追った。
●36年ぶりの低温
厳しい寒さが続いている。関東では16日にはいったん寒さも緩んだが、それもつかの間、翌日には再び真冬に逆戻りした。昨年末から全国的に厳しい寒さが続いたことで、暖房のための電力需要が大幅に増加しており、電気事業連合会では節電の協力を呼び掛ける異例の事態にまでなっている。12月中旬以降の大雪と低温の要因を、気象庁では「高緯度帯の偏西風と中緯度帯の偏西風がともに日本付近で南に蛇行し、寒気が流れこみやすくなった。日本付近での偏西風の蛇行には、西シベリアのブロッキング高気圧や熱帯のラニーニャ現象が影響している」と発表している。また、1月上旬の平均気温は北日本で36年ぶり、西日本で35年ぶりの低温となったとしている。しかし、こうした極端な寒さは一部の業種にとっては恩恵ともなる。
株式市場では冬季に入ると、急激な寒波の影響で「大雪」「厳冬」といったキーワードの注目度が急上昇し関連株を刺激することがよくある。特に、首都圏などでの降雪は交通など社会生活に大きな被害をもたらすことも少なくない。思惑が先行する傾向が強いが、今年に限っては既に実需が発生している企業も多く、コロナ禍にあっても業績を押し上げている。
●ダイニチ工業は業績上振れ
石油ファンヒーター大手のダイニチ工業 <5951> は前週末の15日取引終了後、21年3月期の単独業績予想について、売上高を190億円から220億円(前期比16.9%増)へ、営業利益を5億2000万円から12億円(同6.7倍)へ上方修正した。新型コロナウイルス感染症の予防対策として加湿器の販売が好調に推移していることに加え、昨年12月中旬からの気温の急激な低下により、家庭用石油ファンヒーターの売り上げが伸長した。同社では昨年12月29日に、12月第3週の家庭用石油ファンヒーターの出荷台数は前年同週比約2.3倍、第4週の出荷台数は前年同週比約3.4倍になったことを公表。12月中旬は日本各地で急激に気温が下がったことが、出荷台数増加につながったと分析している。株価は昨年12月10日につけた直近安値815円を底に切り返し、寒波来襲を思惑に今月12日には1019円まで買われていたが上昇一服。しかし業績上振れを刺激材料に、きょうは4日ぶりに反発している。
一方、石油暖房機最大手のコロナ <5909> の株価はいま一つ冴えない。昨年10月に今期最終を一転して22%減益に下方修正したことも株価の重石になっているようだ。ただ、寒波を背景に暖房機需要の拡大が容易に予想されるだけに、今後の動向からは目が離せない。
●オートバクス、12月度は3ヵ月連続で上回る
まれにみる大雪は、カー用品の冬もの消費にも大きなニーズを掘り起こしている。オートバックスセブン <9832> は、8日取引終了後に発表した12月度の月次売上概況(速報)で、既存店売上高が前年同月比13.4%増と3ヵ月連続で前年実績を上回った。12月中旬からの冷え込みに加え、年末の寒波により日本海側で広範囲な降雪があり、スタッドレスタイヤが好調に推移。また、タイヤチェーンも大幅に伸長し、クロスレンチやジャッキなどタイヤ交換に必要な工具類や雪用ワイパーも好調だった。株価は13日に1466円まで買われ昨年来高値を更新し、現在は1400円付近で頑強な展開となっている。新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、人との接触回避を可能とする移動手段として自動車利用へのニーズの高まりも株価に浮揚力を与えそうだ。
●フジコーポ、GセブンHDなど
また、タイヤ専門店を展開するフジ・コーポレーション <7605> が発表した12月度の月次実績で、既存店売上高が前年同月比9%増と、3ヵ月連続で前年実績を上回った。主力のタイヤ・ホイールは平均単価が同2%減となったものの、販売本数が同17%増となったことが寄与している。
そのほかカー用品関連では、バッファロー <3352> [JQ]、カーメイト <7297> [JQ]、イエローハット <9882> などにも注目しておきたい。G-7ホールディングス <7508> は「オートバックス」と「業務スーパー」を2本柱にフランチャイズ(FC)展開しており、切り口多彩でおもしろい存在だ。「業務スーパー」では、コロナ禍を背景とした巣ごもり消費にも乗り業績も好調。株価は昨年8月に上場来高値3235円をつけた後は調整局面入りし、現在は2400円近辺でもみ合っている。
●ホームセンターにはジワリ再評価も
ホームセンターも“大雪感応度”は非常に高いセクターのひとつだ。大規模な降雪や寒波は、除雪用品や暖房機器の需要が期待され株価を刺激することになる。36年ぶりとなる低温は、降雪のない地域においても冬物需要を強く喚起する。ここにきては、昨年から続く新型コロナウイルス感染拡大を背景にした外出自粛などによる巣ごもり消費関連株の一角としても注目度が高い。
新潟県を地盤に「ホームセンタームサシ」などを展開するアークランドサカモト <9842> では、寒波の影響について「売り上げにプラスの効果をもたらしている。ただ、今回の寒波は異例だったこともあり北陸などの一部店舗では多少客足が鈍った。しかし、それも現在では回復している」(広報)と話す。また、「巣ごもり消費については、引き続き堅調な需要を見込んでいる」という。昨年12月14日に発表した21年2月期第3四半期累計(3-11月)の連結営業利益は前年同期比33.4%増の101億3500万円に拡大し、通期計画の124億7000万円に対する進捗率は81%に達している。
ケーヨー <8168> は昨年12月28日に発表した第3四半期累計(3-11月)単独決算が、売上高872億8700万円(前年同期比5.7%増)、営業利益48億5500万円(同8.0倍)、最終利益30億6000万円(同2.6倍)と大幅増益となり、営業利益が通期予想を大きく上回って着地した。感染症対策用品や巣ごもり需要からDIY・園芸用品、トレーニング用品、テレワークの普及によりオフィス家具などの販売が引き続き好調に推移した。なお、21年2月期通期業績予想は、従来見通しを据え置いている。
DCMホールディングス <3050> 、コーナン商事 <7516> 、コメリ <8218> なども揃って業績好調。ただ、株価は昨年夏を境に調整している銘柄が多い。コロナ禍での巣ごもり需要は織り込み済みとの見方もあるが、強烈な寒波が業績を更に後押しする可能性もある。じわり調整一巡感もあり、再び緊急事態宣言が発令されるなか、そろそろ再評価機運が高まってもおかしくはなさそうだ。
そのほかでは、ショベル・スコップ大手の浅香工業 <5962> [東証2]、小型除雪作業機を扱うタカキタ <6325> などにも目を配っておきたい。
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