3. 主要製品の概要
三和ホールディングス<5929>の製品は建材の中でも、シャッターやドア、間仕切など、“動く建材”だ。最も代表的な製品は社名にもあるシャッターだ。シャッターは三和シヤッター工業の売上高の約34%(2018年3月期実績。以下同じ)を占めている。国内市場では、パネル(扉部)の板厚(1mmを基準)によって軽量シャッターと重量シャッターに分類されている。軽量シャッターは主に住宅や店舗で使用され、重量シャッターはそれ以外の大型建築物で使用される。同社の特長として、重量シャッターで特に強みを有している点が挙げられる。
一般的なシャッターは開放時にはロール状に巻き取る形態だが、天井にレールを設置し、パネルをスライドさせて収納することで開閉するタイプもある。これをオーバーヘッドドア(一般名)という。同社は日本においてはオーバースライダーの商品名で展開している。オーバーヘッドドアは機能としてはシャッターと同様だが開閉スピードが速いという特徴があり、シャッターと並ぶ重要な製品となっている。
オーバーヘッドドアについては、その開閉機を独立で販売している。日本・北米・欧州の3拠点で販売しているが、特に北米では、DIY需要もあり、北米市場の売上構成比で第2位を占めている。
ドアについてはマンションの玄関ドアやオフィスビル等のスチールドア、病院や福祉施設用引き戸(いわゆる病室の入り口のドア)など様々なものをラインアップしている。ドアの中で、蝶番(ヒンジ)を有する構造のもの(引き戸以外のほとんどのドアが該当)については特にヒンジドアと称することもある。ヒンジドアは日本と欧州では展開しているが、北米では扱っていない。ドア製品は三和シヤッター工業の売上高の約32%を占めている。
自動ドアは、開閉の動力部(エンジンと称する)とスチールおよびアルミ、ステンレスなどの構造部を同社が製造し、ガラス等(仕入品)を組み込んでセットで販売するのが基本だが、エンジンだけの販売も行っている。自動ドアは日本と米国で展開しており、欧州では扱っていない。
大きな意味でのエクステリア製品には、ストアフロントやメールボックスがある。ストアフロントは商業施設やビルの外観を構成するものだ。素材によってアルミとステンレスがある。メールボックスは集合住宅の郵便受けがメインだが、近年はいわゆる宅配ボックスも伸びている。
同社の業界内でのポジションは、国内ではシェア第1位(“動く建材”の領域において。他の地域も同様)となっている。ライバル企業は製品分野によっても異なり、同社の製品ラインアップと完全に競合する企業はいない。比較的重なりが多いのはシャッターメーカーとなるが、この分野では文化シヤッター<5930>が同社に次いで第2位のポジションにある。マンションドアではLIXILグループ<5938>が、自動ドアではナブテスコ<6268>がそれぞれトップシェア企業となっている。
北米市場でもシェア1位とみられる。第2位はグリフォンの事業部であるCLOPAYとみられ、最近のM&AによってODCに肉薄しているとみられる。
欧州市場でのシェアは第2位となっている。欧主地域ではドイツのハーマンが圧倒的1位のポジションにある。ハーマンは非上場企業であるため情報が限定的であるが、日本市場においては東洋シヤッター<5936>に出資をしている。
重量物であるため消費地生産が原則。販売では、物流・施工面で国内と欧米に違い
4. 生産と販売の状況
同社の製品は、カタログ製品ではあるものの、ほぼすべてが受注生産となっている。理由は大型のビル(オフィスビル、商業施設、工場等)はもちろん、戸建て住宅であっても、開口部のタテ・ヨコのサイズが異なるためだ。それゆえ同社はミリ単位でサイズを調節し生産を行っている。
受注生産の納期は製品によって異なる。住宅用の軽量シャッターであれば1週間程度で納入可能となっている。しかし同社が得意とする重量シャッターは商談・受注から納品までのリードタイムが1年~2年に及ぶことも珍しくない。ビルの建設期間が長い上、シャッターを始めとする同社製品はビルの工事期間の最後期に納品されるためだ。リードタイムの長さは、その間の鋼材価格の変動が受注時の見積もりと実際の生産コストのずれを生みだし、利益に影響を与えるので注意が必要だ。これは、その商慣習から、特に日本市場において特徴的だ。
材料は鋼材がメインで一部アルミやステンレスとなっている。副資材としては塗料などがある。特に重要なのは鋼材で、国内では高炉品をひも付き契約(長期契約)で購入している。欧州も日本と同様の契約形態となっている。一方北米やアジアではスポット価格での取引のため、原材料価格変動としては北米やアジアの方が大きく出やすいと言える。しかし長期契約であっても年をまたぐ場合には、やはり価格が変動する。
生産拠点については、同社は世界中に60ヶ所を擁している。同社製品は重量物であるため、運送費がかかる。したがって消費地生産が大原則と言える。こうした状況を反映して、輸出入は非常に限定的となっている。
販売面では、国内では全国に約300ヶ所の直営の営業拠点を擁し、そこを拠点に営業活動、施工、保守・メンテナンス等を一貫して提供している。“一貫サービス”という事業モデルは日本に特有であり、同社の海外戦略や将来の事業展開を見るうえで非常に重要なポイントだ。
米国や欧州では、基本的には製造までの事業モデルとなっている。同社は製品を原則ディストリビューターと呼ばれる中間事業者に販売し、最終顧客への販売や施工、アフターサービス等は原則ディストリビューターが行うという構造だ。これは国土面積や商慣習等に立脚している。メーカーに徹することは手離れが良いとも言えるが、施工や保守メンテナンスからの収益を取り込めない点が日本の収益モデルと大きく異なる点だ。北米や欧州での事業展開のポイントのひとつに同社は“川下展開”を挙げているが、それがこのことを意味している。
同社製品の需要ドライバーは言うまでもなく建築需要だ。住宅用、非住宅用をともに扱うが、日本は8対2で非住宅用が多いのに対して、米国は半々、欧州は6対4で非住宅用が多い。したがって同社の事業の先行きを占ううえでは、住宅着工件数や建築着工床面積などの各種建築関連統計がまず重要な指標となる。また建築需要は景気動向や金利動向、政策等の影響を受けやすいため、そうした方面にも注意を向ける必要がある。
業績面では季節性も重要だ。建設業界自体が強い季節性を有し、同社もそこに属しているためだ。上期と下期との比較では下期偏重であり、四半期ベースでは第4四半期に収益が大きく偏っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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