マグネシウム二次電池は、現在普及しているリチウムイオン電池のデメリットを解消する未来の電池です。実用化に向けて開発を進めていますが、製品化には時間を要するものと考えています。
マグネシウム合金二次電池の主な特長は、
体積あたりの容量が大きい(マグネシウムは2価のカチオン)
リチウムやコバルトに代表される二次電池用金属資源の枯渇問題が無い
リチウムイオン電池で問題となっているデンドライト成長による発火の危険性が低い
融点が650℃と高いため、150℃以上の環境下でも使用可能であり、且つ安全性が高い
セパレーターや筺体の低廉化が期待でき、電池としての低コスト化が見込まれる
・・・など、安全性や小型化、低コストが担保され、さらに大容量化も実現可能です。
当社は、マグネシウム合金圧延材の開発、製造、販売において業界をリードしてきました。1998年基礎研究を開始し、2002年には大型コイルによるマグネシウム合金展伸材を量産化。パソコン筐体、スマートフォンのシャーシやスピーカー振動板などに採用されております。
そして、マグネシウムの新たな用途を開拓すべく、2017年に金属メーカーとして初めてマグネシウム合金二次電池用電極材料の開発に着手しました。従来のマグネシウム合金二次電池の開発においては、負極材料のほとんどは、純マグネシウムあるいはAZ31合金(Al:3%含有、Zn:1%含有)が使用されてきました。しかし、これらは電池活性が低く、実用的な性能が得られない状況でした。
そこで、当社は電池活性を高めた負極材料の開発を実現するべく、埼玉県産業技術総合センター(以下、SAITEC)および中央工産株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役:齋藤 一)との共同研究によって開発を推進し、2018年11月開催の第59回電池討論会(1G08)で発表、2019年7月12日国際特許出願(優先日2018年7月13日)に至っています。
●開発のポイント
1. 構造用材料としては従来タブーとされ耐食性を大きく損なうCuなどの添加を試み、その結果、電池活性を劇的に向上させた電極材料の開発に成功しました。Cu添加合金では、マグネシウムとCuの金属間化合物であるMg2Cuの粒子状析出物が存在し、充放電の核になるため優れた性能が得られます。
従来合金AZ31とCuを添加した開発合金の電流密度と酸化還元電位の関係を比較すると(資料1・2)、Cu添加合金では高い電流密度まで安定した充放電ができるのに対し、従来合金では充電不能です。充放電後の電極表面(資料3)には、Mg2Cuの粒子状析出物に起因する粒状の化合物が観察されました。これが繰り返しの充放電を可能にする核となっていると推察されました。
※資料1~3:SAITEC提供
※資料2は正極に活性炭素電極を用いた場合の充電-放電特性を示しています。図のように、活性炭素本来の充放電挙動が得られており、このレートに追随できる負極であると言えます。また、充電-放電の繰り返しに対する高い安定性も確認できています。
2. 結晶方位を制御した合金に電池活性が高い結晶面を電極面に揃えることで、電池活性を向上できることを見出しました。マグネシウムは稠密六方晶構造で、底面の(0001)面は電池活性が低く、従来合金の圧延材の表面には、この(0001)面が現れ電池活性が低くなっていました。
そこで、電極表面に(0001)面以外の面を露出すると電池活性が高くなり、充放電の性能の向上を確認。これを実現する方法として、Caなどの元素を微量に添加し、結晶方位の制御を行いました。
マグネシウム合金二次電池で唯一、高速の充放電が可能であることが確認されている活性炭を正極に用い、本開発合金を負極にすることで、従来にない速い速度で200回という充放電の繰り返しが可能なことを確認しています。
これまでマグネシウム合金二次電池の開発は、主に正極および電解液の開発に力が注がれ、実用的な性能を持った正極材料、セパレーターなどと負極材料とを組み合わせた二次電池としての評価は実施されていませんでした。
今回、マグネシウム二次電池の開発者向けに負極材サンプルの試験提供を行うことを通じて、関係各所の連携が深まり、実際に電池を製作し、性能を評価していただくことで開発が推進され、マグネシウム合金二次電池の製品化が加速されることを願っています。
●提供サンプル概要(予定)
合金:Cu添加マグネシウム合金圧延材
サイズ:板厚0.2mm ※はがきサイズを数枚
●会社概要
商号:日本金属株式会社(NIPPON KINZOKU CO.,LTD.)
創業:1930年11月10日
設立:1939年12月2日
本社:〒108-0014 東京都港区芝5丁目30番7号
証券コード:5491(東証一部)
ホームページ:https://www.nipponkinzoku.co.jp/
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