高炉では、鉄鉱石とコークス(石炭)を高さ100メートル以上の大きな炉(高炉)の中に入れ、溶解、還元反応をさせることで鉄を取り出す。電炉では、原料の鉄スクラップを電気炉の中に入れ、黒鉛電極に高電圧をかけることによってアーク放電(熱電子放出を主とした雷に似た放電のことで、強い光と高い熱を発生させる特徴を持つ)を起こし、その熱で鉄スクラップを溶かして鉄を取り出す。
高炉の特徴としては、設備が非常に大規模であり設備費用がかかるが、効率的に鉄を作り出すことができるので大量生産に向いている。ただし、いったん設備を止めると炉の中で鉄が固まり、再稼働時に時間とコストがかかるため、長期間の継続稼働が前提とされる。電炉は、比較的小規模な設備で済むため設備費用は高炉に比べ安い。また、電気を止めたり入れたりを繰り返しながら操業するため事業環境に応じた操業調整が容易であり、多品種少量生産に向いている。
環境面では、高炉は鉄鉱石の中に含まれる酸素とコークスに含まれる炭素が反応するため、多くのCO2が発生する。電炉は、高炉に比べてCO2排出量が少ない。電炉で排出されるCO2は、主に使用する電気によるものであり、原料が鉄そのものであるため、高炉よりも約1/4の排出量になっていると言う。今後再生可能エネルギーを使った電気の利用が増えれば、電炉のCO2排出量がさらに低下するものと期待される。
電炉メーカーは建築用の部材を供給しているイメージがあるが、同社の場合は産業機械に使われるのが約6割、土木・建築に使われるのが3割程度である。一般的な電炉メーカーに比べ、広範囲にわたって材料を供給しているということが強みである。さらに電炉は小ロット、多品種生産に強いうえ、短納期も実現している。
また、同社は名古屋の市街地に立地する都市型製鉄所である。愛知県は、国内有数の工業地帯が発達しているほか、東京・大阪の中央に位置することから、インフラ面も非常に充実している。さらに、工業地帯から多くの鉄スクラップが発生するため、同社にとって重要な原材料である鉄スクラップの調達が有利となることが強みである。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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