―中国需要の復活が強力な追い風、商社・海運に続く中核セクター化の公算―
鉄鋼株に対する注目度が高まっている。世界的なインフレ懸念が高まるなか、株式市場ではバリュー株を見直す動きが強まっているが、低PER・高配当利回りの鉄鋼株はその中核として、投資家の熱い視線を集めている。中国の鉄鋼需要の回復期待もあり、鉄鋼株は世界的な上昇基調にある。商社株や海運株に続く、人気セクターとして鉄鋼株には見直し機運が膨らんでいる。
●日米欧で鉄鋼株は上昇基調を強める
鉄鋼株に対する関心が世界的に高まっている。日本では日本製鉄 <5401> [東証P]の株価が2021年末から直近までに4割強上昇したが、米国のニューコア
この鉄鋼株上昇の背景にあるのが、中国需要の回復期待だ。中国は世界の鉄鋼需要の半分を占めるとも言われるが、昨年12月にゼロコロナ政策が撤回されたことをきっかけに一気に世界の大手鉄鋼株に対する見直し買いが流入している。
●中国関連のほか自動車や軍事向け需要増に期待も
また、鉄鋼株にとって追い風となっているのが、世界的なバリュー株見直しの機運だ。日本製鉄の株価は今期予想連結PER3倍台で同配当利回りは6%台が見込まれる水準。低PER・高配当利回りで割安株の代表的な存在となっているが、米ニューコアの連結PERも7倍台、欧州のアルセロールミタルは同2倍台程度と低PER水準にある。世界的なインフレ懸念が高まるなか、高PERのIT関連などハイテク株から資金が流出する一方でバリュー系の低PER株を見直す動きが強まっている。
鉄鋼業界を巡る経営環境としては「昨年は中国のゼロコロナ政策や半導体不足を背景にした自動車減産などが逆風となったが、今年はその巻き返しによる需要増が期待できる。更に、ウクライナ危機を背景にした軍事需要の拡大も鉄鋼業界にはプラス要因となるだろう」(アナリスト)との声も少なくない。
中国需要の回復期待で鋼材の代表品種である「熱延コイル」などの市況は下落基調から上昇に転じてきている。為替面で一時の大幅な円安が円高方向に振れている点は不透明要因だが、円安は海外事業の増益要因となるものの原料価格の上昇につながる面もあるだけに、プラス・マイナスの両側面が指摘されている。
●日本製鉄やJFEの期末配当に注目、株価下落なら絶好の買い場の声も
こうしたなか、注目を集めているのが第3四半期決算の内容だ。鉄鋼大手では2月6日にJFEホールディングス <5411> [東証P]、9日に日本製鉄の決算が予定されている。日本製鉄の場合、23年3月期の連結純利益は前期比5.1%増の6700億円と2期連続の最高益が予想されているが、未定とされている期末配当予想は同日に発表される見通しだ。市場では期末も中間期と同様に90円で年180円配当を予想する見方が出ている。
JFEも例年、第3四半期に期末配当の予想を公表している。期末配当は40円で年90円配当を予想する見方があり、足もとの株価は連結PER6倍台、配当利回り5.2%前後の水準となっている。ただ、配当性向は30%程度がメドとされており年80円を見込む声もある。
今後の鉄鋼株の見方に関して、あるファンドマネジャーは「決算発表で会社側から慎重見通しが出され、株価はいったん売られることもあり得る。しかし、そこは絶好の買い場だろう。中国景気が今後かなり高い確率で回復するとすれば、大手鉄鋼会社は来期も堅調な業績が期待できる。足もとの株価で5%や6%といった高配当利回りが見込める鉄鋼株はやはり魅力的だ」という。日本の鉄鋼株には海外投資家も買いを入れている様子だ。中国需要と今来期の業績見通しに左右される面は大きいが、23年は鉄鋼株が商社・海運に続く人気セクターになるとの見方が出ている。
●高配当利回り電炉株や鉄鋼関連株にも物色妙味膨らむ
同じ鉄鋼業界では、電炉株に対する期待も大きい。脱炭素を視野に入れれば、高炉より電炉の将来性を評価する見方は少なくない。電気料金の上昇を製品価格に転嫁できるかが注目されるが、東京鐵鋼 <5445> [東証P]や共英製鋼 <5440> [東証P]、大阪製鐵 <5449> [東証S]のほか、今期4%を超える配当利回りが予想されている中山製鋼所 <5408> [東証P]や合同製鐵 <5410> [東証P]、大和工業 <5444> [東証P]などには再評価余地が膨らんでいる。
また、鉄鋼業界を取り巻く環境が好転すれば、鉄鋼向け耐火物などを手掛ける品川リフラクトリーズ <5351> [東証P]や黒崎播磨 <5352> [東証P]、TYK <5363> [東証S]、ヨータイ <5357> [東証P]などの鉄鋼関連株に一段の物色人気が広がることも期待できそうだ。
株探ニュース
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