今週の新興市場は続落。米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が必要以上に過剰に金融引き締めを続ける懸念などから、週初から売りが先行。20日には日本銀行が金融政策決定会合で予想外の政策修正を発表。イールドカーブ・コントロール(YCC)における長期金利の変動許容幅を拡大させたことが実質的な利上げと捉えられ、株式市場で売りが膨らむ中、新興株はとりわけ厳しい下落に見舞われた。また、引き続き新規株式公開(IPO)ラッシュに伴う需給面での重荷がネガティブに作用したほか、年末特有の個人投資家の損出し売りなども重石として働いたもよう。結局、マザーズ指数などは前の週からの下落の流れが止まらず、週末まで7日続落となった。なお、週間の騰落率は、日経平均が−4.69%であったのに対して、マザーズ指数は−8.72%、東証グロース市場指数は−8.66%だった。
時価総額上位銘柄では、上位20銘柄のうち週間で上昇したのはスカイマーク<9204>(+1.4%)の1社のみだった。また、東証グロース市場において週間で上昇したのはわずか27銘柄に限られ、ほぼ全面安だった。主力処ではビジョナル<4194>が−15.6%、ANYCOLOR<5032>が−15.0%、M&A総合研究所<9552>が−14.5%、セルソース<4880>が−15.0%、弁護士ドットコム<6027>が−12.6%、などとなった。
■金利動向に注意も、リバウンドを意識
来週・再来週の新興市場は強含みか。引き続きIPOラッシュが需給面での重荷となる。ただ、地方上場案件を含め、来週の新規上場は6社とピーク時に比べて少ない。また、年末特有の個人投資家の損出し売りもすでに一巡してきたと推察され、需給面での重荷は大分和らいでくるだろう。そうした意味では、ここは押し目買い妙味が高まっている局面と積極的に捉えたい。
一方、海外勢の多くがすでにクリスマス休暇などに入って全体的に商いが薄い中、米債券市場の動きには留意が必要だ。日銀のサプライズ政策修正を契機に、グローバルな金利上昇圧力が再燃している。一時3.4%台前半まで低下していた米10年債利回りは3.75%まで上昇してきている。年末にかけて米国2年債、5年債、7年債の入札が相次ぐため、薄商いの中、金利動向には注意を払いたい。
年明けは12月に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の公表などもあり、金利動向次第のところではあるが、IPOラッシュが完全に一巡し、年末の損出し売り懸念も完全になくなる中、年末にかけて大きく売り込まれてきた小型株を中心に押し目買い妙味が強まると想定する。市場の関心が金融政策から景気動向に移っている中、米国ではISM景気指数など重要指標が発表される。東証プライム市場の景気敏感株・大型株が敬遠されがちな中、新興市場の中小型株が相対的に有利になってくると考える。一方、週末には米雇用統計の発表が控えるため、週末を跨ぐリスクは意識されやすい。利益がある程度取れれば、持ち高調整が膨らみやすい週末前にはいったん利益を確定することを推奨する。
個別では、直近IPOのトリドリ<9337>やフーディソン<7114>がユニークな事業モデルと高業績ながら上場後の株価推移が良くないため、再評価機運の高まりに期待したい。既存ではビジョナル<4194>なども再評価に期待。ほか、サンクゼール<2937>やtripla<5136>なども面白い。triplaは旅行業界の需要が急回復する中、人手不足が続いているため、好業績が期待できそうだ。
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