1. 会社沿革
スカラ<4845>は1991年12月にデータベースサービスの販売代理店として創業したのが始まりで、1999年に三井情報開発(株)からメインフレーム用のデータベース管理システム「Model204」※のサポートサービスを顧客も含めて引き継いだことを契機に業績が大きく成長した。
※米国Computer Corporation of America及びSirius Software(現Rocket Software)が開発したDBMSで、国内では日本銀行<8301>や東京電力ホールディングス<9501>などの大企業が顧客となっていたが、市場環境の変化により需要がなくなり2016年秋にサービスを終了した。
2000年に入って、企業の情報システムがメインフレームから分散処理型の小型サーバーへ移行するなかで、同社は成長を続けるためには事業構造の転換が必要と判断し、2001年の株式上場時に調達した資金を活用してM&A戦略によって事業を拡大していく戦略を進めていくことになる。2003年に特許管理システム事業(製品名:PatentManager)をインターサイエンス(株)から買収したのを皮切りに、CRM分野への参入を目的として(株)ディーベックス、IVR(自動音声応答)分野への参入を目的としてボダメディア(株)を子会社化したほか、ニュース配信サービスの(株)ニューズウォッチやWebサイト開発のトライアックス(株)などインターネット領域における事業会社を相次いで子会社化し、ストック型ビジネスとなるSaaS/ASP事業をコア事業として拡大していくとともに、システムエンジニアの拡充により自社サービスの開発力強化を進めていった。
直近では、2016年7月に営業支援ソフト大手のソフトブレーンを子会社化(2018年6月末時点の議決権ベースの所有比率は50.2%)したほか、2017年8月にはEC事業への進出を目的として対戦型ゲームのトレーディングカード売買を行うECサイト運営会社のplube(出資比率100.0%)、2018年3月にはコールセンター拠点(24拠点)を利用して、光通信グループが有するブランド・商材におけるカスタマーサポートコンサルティングを行うレオコネクト(出資比率66.0%)、同年11月には光通信グループ等でアウトバウンドコールを行う企業やコールセンター向けにクラウドPBXサービスを提供するコネクトエージェンシーをそれぞれ子会社化している。
なお、同社は機動的な経営を行うために2004年に持株会社体制に移行しており、現在は連結子会社12社で事業を展開している。また、2016年6月期より会計基準を国際的なIFRSに切り替えて業績開示を行っている。
Webサイト内の検索サービス「i-search」、FAQサービス「i-ask」などで国内トップクラスのシェア誇る
2. 事業内容
同社の主力事業は、企業のCRM領域の業務効率改善に資するITサービスを提供するSaaS/ASP事業と、ソフトブレーングループのSFA事業(営業イノベーション事業)、フィールドマーケティング事業、レオコネクトのカスタマーサポート事業の4事業とその他(ソフトブレーンのシステム開発及び出版事業、plubeのEC事業)に分けて開示している。2019年6月期第2四半期累計の事業別売上構成比は、SaaS/ASP事業で21.9%、SFA事業で28.8%、フィールドマーケティング事業で23.3%、カスタマーサポート事業で16.0%、その他で10.0%となっている。また、セグメント利益の構成比ではSaaS/ASP事業で27.9%、SFA事業で45.5%、フィールドマーケティング事業で12.5%とこれら3つの事業で全体の85.9%を占めている。
(1) SaaS/ASP事業
SaaS/ASPの主要なサービスとしては、Webサイト内の検索サービス「i-search」やFAQサービス「i-ask」、自動音声応答システム「IVR」、ニュース配信サービス等がある。
このうち、「i-search」は2007年からサービスを開始し、現在は大手企業を中心に導入社数が約400社以上、市場シェアは15%前後で業界トップシェアとなっている。参入企業が10社以上あるが、同社のサービスは検索結果に画像を表示することで見やすさをアップし、ユーザーを的確に誘導できることが特徴となっている。月額利用料金は平均で10~15万円となる。
「i-ask」は2008年頃からサービスを開始し、金融・保険業界向けを中心に約200社に導入されている。よくある質問とその回答をあらかじめ企業サイト内に登録しておくことで、ユーザーの自己解決を可能にするサービスとなる。コールセンターへのアクセス件数を軽減し、コスト削減に寄与すると同時に顧客満足度の向上につながるサービスで、業界シェアは約15%とオウケイウェイヴ<3808>に次ぐ2位となっている。月額利用料金は平均で20~30万円となる。
「IVR」は企業の電話窓口で音声による自動応答を行うシステムとなり、SaaS型で提供していることが特徴となっている。従来は企業側でPBX(構内交換機)を導入しなければならず投資負担が大きかったが、SaaS型の提供となるため安価にサービスを利用できるほか、キャンペーン時など期間限定で利用したいニーズにも対応可能なことが特徴となっている。
その他、法人向けニュース配信サービスや、顧客ニーズに応じたWebサイトの企画・開発・制作・保守運用サービスなども行っており、サービスラインナップが豊富で特定のサービスに依存していないことが特徴となっている。また、2018年10月に子会社化したコネクトエージェンシーが提供するクラウドPBXサービスも含まれる。
カスタム開発案件では、IoT・ビッグデータに関連するシステムの開発及びサービスの提供も行っている。代表的な例として、損害保険ジャパン日本興亜(株)が販売する安全運転支援サービス「スマイリングロード」(法人向け)※1やスマートフォン用アプリ「ポータブルスマイリングロード」(個人向け)※2がある。これらサービスでは、利用者のドライブレコーダーから送信される走行データ等のビッグデータを(株)スカラコミュニケーションズのサーバーで受信し、同社が開発したWebシステムによって運用・管理している。
※1 IoT技術を活用してドライブレコーダーから収集した運転走行データの処理を始め、ドライバーや管理者のための運転診断データの提供や、運転評価システムに基づき高評価を得たドライバーへのポイント付与や懸賞応募など、ドライバーが安全運転に取り組むことができる数々の機能を、Webサイトやスマートフォンアプリを通じて提供し、継続的な安全運転の促進と事故予防に寄与するサービス。
※2 スマートフォンアプリを通して、ドライバーの万一の事故時にワンプッシュで事故報告する「安心」の機能、運転診断やリアルタイム情報提供など事故防止に役立つ「安全」の機能、「快適」なカーナビゲーション機能を提供し、安全運転の促進と事故予防に寄与するサービス。
(2) ソフトブレーングループの事業
ソフトブレーングループの事業は、SFA事業、フィールドマーケティング事業、その他に分けられる。SFA事業は主に、営業支援ソフトである「eセールスマネージャー」の開発・販売と営業課題を解決するためのコンサルティングサービス、スキルトレーニング、企業におけるスマートデバイスの導入支援サービスなどが含まれる。「eセールスマネージャー」は使い勝手No.1ソフトとして評価が高く、SFAの国産ベンダーとしては業界トップで、累計導入社数も5,000社を超えている。
また、フィールドマーケティング事業では、主に消費財メーカーを顧客とし、店頭でのフィールド活動やマーケット調査などを、30~50代の主婦層を中心としたキャスト(登録スタッフ)を活用して行っている。2018年12月末時点でキャスト数は全国で約9万人、カバーする店舗数もコンビニエンスストアやドラッグストアなど16万店舗を超えており、国内ではトップクラスの規模で事業を展開している。最近ではBtoCだけでなくBtoB領域へのフィールド活動にも展開を始めている。
システム開発事業及び出版事業についてはその他のセグメントに含まれているが、両事業合わせても年間売上で7〜8億円、営業利益で数千万円程度でここ数年推移しており、収益に与える影響は軽微となっている。
(3) カスタマーサポート事業
2018年3月に子会社化したレオコネクトの事業となる。顧客企業のサービスや商品に対する問合せ受付から、対応後のフォローアップまでを行うインバウンドコールセンター(全国24拠点)の運営に関するコンサルティング業務を行っている。光通信グループやその代理店などが顧客で、当面はコールセンターに「i-livechat」や「i-assist」などを導入し生産性向上を図ること、また、既存顧客に対して同社グループと協業して各種ITサービスを拡販していく戦略となっている。また、第2ステップとして、光通信グループ以外の新規顧客開拓も進めていく方針となっている。
(4) その他
その他には、ソフトブレーンのシステム開発、出版事業のほか、plubeのEC事業が含まれる。対戦型トレーディングカードの売買を行うECサイト「遊々亭」を運営している。ゲーム業界での認知度は高く、中古カードの価格値付けでは参考指標にされるほどの影響力を持ち、海外ユーザーからの購入も多い。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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