2. 事業セグメント別概要
ドリーム・アーツ<4811>は、「クラウド事業」「オンプレミス事業」「プロフェッショナルサービス事業」を展開している。クラウド事業は、「SmartDB」「InsuiteX」「Shopらん」「DCR」を提供しており、いずれも月額利用料によるストック収益となる。オンプレミス事業は、過去に販売した「SmartDB」「INSUITE」のパッケージソフトウェアの管理・運用業務でライセンス料がスポット収益、ソフトウェアメンテナンス料がストック収益となる。プロフェッショナルサービス事業は、クラウド事業及びオンプレミス事業にかかるシステム開発・改修、導入支援、各種作業などの労働集約型業務でスポット収益となる。2023年12月期の売上比率は、ストック収益が82.8%、クラウド事業が70.4%を占め、収益基盤は安定している。
(1) クラウド事業
クラウド事業は、自社開発したアプリケーションソフトウェアをSaaSの形態で提供する事業である。提供サービスは、幅広い業界で利用される「ホリゾンタルSaaS(「SmartDB」及び「InsuiteX」)」と、特定の業界で利用される「バーティカルSaaS(「Shopらん」)」及び特定顧客向け開発運用一体型サービス「DCR」がある。ホリゾンタルSaaS及びバーティカルSaaSは月額利用料によるストック収益で、利用人数や用途に応じてユーザーライセンス、バインダー(データベース)ライセンス、各種オプションなどを組み合わせることができる。一方、「DCR」は開発するシステムの要件の個別性が高いため、内容に応じてサービス料を定めている。
a) ホリゾンタルSaaS「SmartDB」
「SmartDB」は、プログラミング不要のノーコード開発ツールである。ノーコード開発ツールは、業務に精通した現場担当者がシステム開発を推進することで、要件定義や仕様設計などの開発プロセスを短縮し、開発生産性の向上を図ることができる。さらには、現場部門自らが業務デジタル化を推進することで、これまで放置されていたアナログ業務のデジタル化が進み、DXに向けた企業文化や組織風土の変革に取り組みやすい環境をつくることにもつながる。「SmartDB」は、ノーコード開発ツールでありながら受託開発にも引けを取らない高度な機能を備えており、単純なデータベースやワークフローといった標準的なものから、ERPのフロントシステムや生産管理・在庫管理などの基幹業務を支えるサブシステムに至るまで、幅広い領域で活用できる。従来は、こうしたMCSの周辺領域もシステムインテグレーターが担っていたが、ノーコード開発ツールの活用により現場主導で開発・運用が可能となるため、投資効率の向上とビジネス環境への機動的な対応が同時に実現した。なお、システムインテグレーターが開発基盤としてノーコード開発ツールを活用し、開発プロセスやシステム運用の効率化を図ることもある。
(主な機能)
企業内の活動は、起案・起票、承認決裁、決裁情報の保管・活用というプロセスをたどるため、企業内で利用する業務アプリケーションは、「入力フォーム」(データを入力するインターフェイス)、「ワークフロー」(入力データの承認・意思決定プロセス)、「データベース」(データの蓄積及び活用)の3つの機能で構成される。「SmartDB」は、これらの機能をプログラミングすることなく、以下のように簡単に開発できる。
・入力フォーム及びデータベース作成機能
あらかじめ用意された25種類のパーツをドラッグ&ドロップ操作で配置し、入力フォームとデータベースを自動的に作成する。
・ワークフロー設定機能
大企業が必要とする複雑な業務プロセス(条件分岐、合議、並行承認、差し戻し、他部署回覧など)を設定する。たとえば、金額や組織などの条件に基づいて承認ルートを判別・分岐したり、複数の部門や担当者が並列で承認したり、特定のワークフローの承認をトリガーとして他のワークフローを開始したりと、多様なプロセスを構築できる。
・データベース活用機能
「SmartDB」に投入されたデータを、様々な形式の表やグラフとして表示することで、分析ツールとして活用できる。また、データとともに格納されたファイルも全文検索の対象としているため、必要な情報へ効率的にアクセスできる。そのほか、あらかじめ用意されたフォーマットに合わせて出力する帳票作成ツールとしても活用できる。
・ダイナミックブランチ機能
「SmartDB」上で開発した複数の業務アプリケーションやデータベースに親子関係を持たせ、動的(ダイナミック)に連携する。業務アプリ/ドキュメント同士での多階層の親子関係(複数も可)の設定や、親子関係のある業務アプリ/ドキュメント間での多段参照・集計等の多様なデータ連携、親子関係のある業務アプリ/ドキュメント間での動的な権限制御ができる。個別の現場で開発された業務アプリも部門間や役職間の壁を越えて連携させ、組織全体の複雑な業務モデルをそのままデジタル上に再現できる。複数のプロセスにまたがる業務やデータを結合し、一元的に管理することで、複雑な要件のERPフロントシステムや基幹業務を支えるサブシステムなど、幅広い領域での活用が可能となる。
・セキュリティ関連機能
同じ入力フォームやデータベース内であっても、項目ごとに閲覧権限を設定する閲覧制限機能を備えている。そのため、機密性の高い情報を含む業務プロセスをセキュリティを確保しながらデジタル化できる。また、IPアドレス制限や二段階認証によって第三者からの不正なアクセスを防止するほか、業務プロセスの承認履歴などのログ出力機能があり、内部統制や各種監査の要求を満たすシステムを開発できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
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