電通<4324>の調査によれば、2017年の日本の総広告費は前年比1.6%増の年間6兆3,907億円と6年連続で前年を上回った。そのうち、同社の主力事業が属する「展示・映像他」も、前年比6.1%増の3,389億円と拡大した。訪日外国人観光客の増加への対応や東京オリンピック・パラリンピックに向けた環境整備など、観光関連が好調な上、モーターショー開催年であったことから自動車関連の展示会需要が大きく寄与した。一方、地方においても「地域おこし」に向けた施策が増えているようだ。今後については、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、東京ビッグサイトや幕張メッセなど展示会場の使用が制限されることによる影響が懸念されるものの、企業の宣伝広告活動やイベント市場の活性化が期待されている。
一方、同社の事業ドメインである「リアルエクスペリエンス&コミュニケーション事業」は、その一部を担うイベント支援会社や空間ディスプレイ制作会社を始め、元請け的な存在である総合代理店などとは一線を画しており、同業者の数は多くはない。また、その同業者の規模も比較的小さい事業者がほとんどである。差別化の難しい案件では、チャレンジャー(下位企業)による価格攻勢が厳しくなっている上に、異業種からの新規参入等により競争も激化しているが、これまでのイベント・展示会事業における豊富な実績や顧客接点を生かしながら、サービス領域の拡充や付加価値の向上によりマーケティング・パートナーへと進化を目指す同社にとっては、十分に優位性が発揮できる業界構造にあると考えられる。
上場している類似会社には、イベント支援会社としてテー・オー・ダブリュー<4767>、セレスポ<9625>等、空間ディスプレイ制作会社として乃村工藝社<9716>、丹青社<9743>、スペース<9622>等が挙げられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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