―カジュアルなプレゼントとして浸透、株主還元など法人利用も拡大中―
デジタルギフトの利用が広がっている。EメールやSNSを通じて手軽にプレゼントを贈ることのできるデジタルギフトは、お中元やお歳暮、結婚などのフォーマルな場面で贈られる「フォーマルギフト」とは異なる手軽な「カジュアルギフト」として、若者を中心に利用する人が増えている。
コロナ禍により対面でお祝いやプレゼントを渡す機会が減り、その代わりとしてデジタルギフトの利用が増えたが、コロナ後も手軽なプレゼントとして定着しているようだ。個人だけではなく、法人の利用も広がりつつあり、関連企業のビジネスチャンスも広がりをみせるだろう。
●カジュアルなプレゼントとして浸透
デジタルギフトとは、EメールやSNSなどネットを通じて贈り合うギフトのこと。実店舗で商品と引き換えられるギフトカードをURLやQRコードで贈る「eギフト(ソーシャルギフト)」や、送られてきたURLやメッセージに受け手が住所を入力すると後日商品が届く「配送ギフト」などがあるが、いずれもお互いの住所などを知らなくても贈ったり受け取ったりができるのが特徴。また、100円台の菓子や雑貨などの手軽な贈り物がしやすいことから、カジュアルなプレゼントとして浸透しつつある。
例えば、2015年にサービスを開始した、LINEヤフー <4689> [東証P]のeギフト「LINEギフト」を利用したことがある累計ユーザー数は、24年7月時点で3500万人を超えているという。年間利用者数(23年4月~24年3月)も贈った人が約1000万人、もらった人が約1500万人で、LINEユーザーの5人に1人が年間でLINEギフトを利用していることになる。
●ギフト市場は微増トレンドもデジタルギフトは拡大
デジタルギフトを含むカジュアルギフトは、成長が見込まれる市場だ。
矢野経済研究所(東京都中野区)が今年2月に発表した「ギフト市場に関する調査を実施(2023年)」によると、23年の国内ギフト市場規模は小売金額ベースで10兆8190億円(前年比2.7%増)になったと見込まれている。全体としては微増トレンドとなっているが、カジュアルギフトは23年の単年の成長率が前年割れするものと見込まれるものの、コロナ前と比較すると成長幅は大きいと予想している。
また、24年は11兆20億円(同1.7%増)で推移すると予測。カジュアルギフトの拡大傾向に加えて、ライフスタイルの変化や技術の進化などがデジタルギフトの拡大につながっているようだ。
●コロナ禍経て幅広い年代で利用へ
また、デジタルギフトの利用層もコロナ禍を経て広がりをみせている。
ギフトモール(東京都中央区)オンラインギフト総研が全国の10~50代の男女2250人を対象に行った調査によると、ソーシャルギフト(デジタルギフト)を利用したことがある割合は全年代でコロナ前は6.6%だったが、コロナ後は16.6%と10ポイントも増加した。25~29歳がコロナ前の7.7%からコロナ後は26.0%に増えたのが顕著だが、50代も55~59歳が2.3%から7.6%に増えており、比較的年齢が上の世代にもソーシャルギフトが浸透していることがうかがえる。
個人間だけではなく、最近では法人の利用も増えており、アンケートやレビューを書いてくれた人に贈るプレゼントや、休んだ社員・職員の代わりに仕事を負担した人に贈るプレゼントといったシーンでデジタルギフトを利用するケースも増えている。コミュニケーションの新たな手段として、デジタルギフトは定着しているといえよう。
●デジタルギフトの関連銘柄
前述のラインヤフーと並んで、デジタルギフト関連の代表格とされるのがeギフト大手のギフティ <4449> [東証P]だ。eギフトの発券から流通・販売まで一気通貫で提供する「eギフトプラットフォーム事業」が主力で、eギフトサイト「giftee」の運営や、店頭での引き換えが可能なeギフトの生成から自社サイト上で販売するためのシステム「eGift System」、eギフトを活用した法人向けソリューション「giftee for Business」などのサービスを提供している。足もとでは個人需要の増加に加えて、法人のeギフト利用が大幅に増加し流通額の増加が続いており、24年12月期連結営業利益17億200万円(前期比34.3%増)を見込む。
CARTA HOLDINGS <3688> [東証P]は、子会社DIGITALIOが法人向けデジタルサービスのインセンティブキャンペーン支援の一環として、デジタルギフト「デジコ」を展開している。PayPayマネーライトやAmazonギフトカードなど選べるギフトは6000種類以上ラインアップされているのが特徴という。同事業のグループ業績への貢献度は大きくはないものの、カルタHDの24年12月期は連結営業利益20億円(前期比53.6%増)を見込む。
デジタルプラス <3691> [東証G]は、法人向けサブスクリプション型のデジタルギフトサービス「デジタルギフト」を提供している。オリジナルデザインの設定や自社商品のギフト化などさまざまな機能を用意しているのが特徴で、最近では株主優待として採用されるケースも増え、流通総額は順調に拡大している。同事業の貢献もあり、24年9月期連結営業利益は2500万円(前の期2億7700万円の赤字)と実質8期ぶりの黒字転換を見込む。
ジェイ・エスコムホールディングス <3779> [東証S]は、デジタルマーケティング事業の一環として、日本及び韓国でデジタルギフト事業を展開しており、日本では子会社マフィンが法人向けデジタルギフトサービス「mafin」を展開している。足もとでは商品の多様化や顧客の拡大を進めており、早期の業績貢献に向けて注力している。
オンワードホールディングス <8016> [東証P]は、カタログギフトなどの企画販売を手掛ける子会社の大和が、デジタルギフトサービス「dozo」を展開している。もらった人が5つの選択肢のなかから、ほしいものを選んで受け取れるギフトサービスで、贈り手は100種類ものユニークなテーマから、相手の個性に合わせて贈ることができるのが特徴だ。
株探ニュース
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