3. 治療用・診断用アプリの開発パイプラインと国内市場規模
サスメド<4263>の治療用・診断用アプリの開発パイプラインは、2023年8月10日時点で10件となっている。
不眠障害治療用アプリ(販売名:サスメド Med CBT-i)(開発パートナー:久留米大学)については、2021年12月に塩野義製薬と販売提携契約(塩野義製薬に対して日本における独占的販売権を供与、契約締結に伴う一時金及び開発進展などに応じたマイルストン収入として総額最大47億円を受領)を締結した。そして2023年2月15日付で厚生労働省より医療機器製造販売承認を取得した。現在は塩野義製薬とともに、マーケティングプラン・メディカルプランの策定やオペレーション構築など、保険適用に関する協議及び上市(2023年内の見込み)に向けて準備を進めている。製品上市後は塩野義製薬から販売額に応じたロイヤリティーを受領する。なお不眠障害治療用アプリに関する技術は、これまで日本、米国、韓国、インドネシアにおいて特許が成立し、2023年2月には欧州特許庁より特許査定を受けている。
進行がんを対象疾患領域(意思決定支援)とするアドバンス・ケア・プランニング(以下、ACP)用プログラム医療機器「SMD402」(開発パートナー:国立研究開発法人 国立がん研究センター)については、探索的試験において2023年2月に被験者登録が完了した。期待される効果としては、患者の心理的苦痛の軽減、不安・抑うつ症状の改善、不適切な治療の中止などがある。
腎臓病リハビリアプリ「SMD201」(開発パートナー:東北大学、日本腎臓リハビリテーション学会)については、2023年2月に探索的試験の患者登録が完了した。期待される効果としては、腎機能の改善もしくは悪化抑制、透析治療への移行防止などがある。慢性腎臓病患者の腎機能の改善もしくは悪化抑制においては腎臓リハビリが有効であることが示され、保存期の慢性腎臓病患者において運動療法をはじめとする腎臓リハビリが推奨されている。また、医療の質と効率性の向上を両立させるために、スマートフォンを活用した治療用アプリは医療ニーズに合致すると同社は考えている。
耳鳴を対象疾患領域とする「SMD403」については、2022年11月に杏林製薬<4569>の子会社で、耳鼻科領域の新薬事業を強化している杏林製薬と共同研究開発及び販売に関する契約を締結した。契約一時金(1億円)を既に受領しており、今後の開発進捗に応じたマイルストン(契約時判明分で6億円)に加え、製品上市後は販売額に応じた一定のロイヤリティーを受領する予定である。現在は臨床研究の開始に向けてアプリ開発中である。
そのほかの開発状況としては、治療分野では、乳がん患者運動療法アプリ「SMD401」(開発パートナー:国立研究開発法人 国立がん研究センター)が検証的試験の開始に向けて準備中である。遷延性悲嘆障害を対象疾患領域とする「SMD102」、オピオイド誘発性便秘症を対象疾患領域とする「SMD202」については、それぞれ探索的試験の開始に向けてアプリ開発中である。乳がん切除後疼痛症候群(PMPS)を対象疾患領域とするAcceptance & Commitment Therapy(ACT)アプリ「SMD105」(開発パートナー:名古屋市立大学)については、臨床研究を実施中である。
診断分野では、妊産婦うつを対象疾患領域とする「SMD103」(開発パートナー:名古屋大学)が探索的試験の開始に向けてアプリ開発中である。既にアルゴリズム及び装置に関する特許が成立している。ADHD(注意欠陥・多動性障害):視線解析を対象疾患領域とする「SMD104」は探索的試験の開始に向けてアプリ開発中である。
同社が進めている開発パイプラインの国内市場規模(保険償還点数×対象人数)は、同社資料によると不眠障害治療用アプリ「サスメド Med CBT-i」についてはターゲット市場を1,000億円、潜在患者まで含めると3,500億円と推定している。このうち、ターゲティング需要であるSAM(Serviceable Available Market)については、合計400億円超(既存の睡眠薬治療からの切り替えニーズ192億円+不眠症の自覚があるが睡眠薬治療に抵抗がある未治療患者の掘り起こし216億円)と試算している。そのほかの開発中パイプラインの国内市場規模は、乳がん患者運動療法アプリ「SMD401」が72億円、ACP用プログラム医療機器「SMD402」が309億円、腎臓リハビリアプリ「SMD201」が660億円と推定している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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