―求められる感染の実態把握、株価浮上気配のワケあり銘柄を徹底追跡―
国内での 新型コロナウイルス感染者数の増加が止まらない。その背景には、感染拡大初期に対応の遅れが指摘されていたPCR検査の拡充加速も一つの要因として挙げられている。検査数増加で感染者数が表面化した格好ともいえるが、一方、罹患者の増勢に歯止めがかからず入院施設などの逼迫化を懸念する声も多い。しかし感染状況が把握できてこそ真正面から新型コロナウイルスと対峙できることになる。国も民間の検査機関を含めて検査数の更なる拡充を図る方針だ。PCR検査を巡る関連株の動向を追った。
●検査体制強化の動き加速
厚生労働省は、7日に発表した地方自治体における検査体制の点検状況(概要)で、PCR検査などの検査需要は、今後の流行ピーク時で1日当たり約5万6000件になるとした。また、検体採取能力、PCR検査能力の件数については、9月末には約7万2000件が確保される見込みだとしている。日本における感染者数について、当初はPCR検査数の少なさが国内外から指摘され実態把握にほど遠いとの声が上がっていたが、ここにきて検査体制強化の動きが加速している。日々発表される感染者数の増減に、日本列島は一喜一憂する日々が続いているが、こうしたなか最前線で活躍する関連株への期待も大きい。
●ミズホメディー、PCR検査への関心改めて意識
直近では13日の取引終了後に、ミズホメディー <4595> [東証2]が新型コロナウイルス感染症遺伝子検査キット「スマートジーン 新型コロナウイルス検出試薬」(研究用試薬)が公的医療保険適用の対象となり、8月19日に発売すると発表。これを受けて、株価は翌日にはストップ高となりPCR検査への関心の高さを改めて意識させることになった。きょうも一時383円高の2097円まで買われるなど、上げ足を速めている。同試薬は、PCR法を用いた「全自動遺伝子解析装置Smart Gene(スマートジーン)」専用の遺伝子POCT検査(診察室、病棟及び外来患者向け診療所など、患者に近い医療現場での検査)キット。遺伝子の抽出・増幅・検出の全ての工程を1つのカートリッジ内で行い、1時間程度で新型コロナウイルスを検出することができるという。これにより基幹病院だけではなく、開業医、診療所などでも、高感度な新型コロナウイルス感染症の遺伝子POCT検査を検査当日中に行えるようになる。なお、20年12月期業績への影響は「売上高へ寄与するものと期待されるが、現在精査中」としている。
●PSS、医学生物には浮揚の気配
プレシジョン・システム・サイエンス <7707> [東証M]は、提携するエリテック社製の全自動PCR検査装置「エリート インジーニアス」とPCR試薬「エリート MGB SARS-CoV-2 キット」を8月3日から販売開始した。併せて、自社ブランドの全自動PCR検査装置「ジーンリード エイト」とセルテスト社製「COVID-19」検査用PCR試薬「VIASURE SARS-CoV-2 PCR」についての同日発売を発表するなど、検査にかかわる動きを活発化させており今後の展開からも目が離せない。また、前述の検査用PCR試薬2製品は、保険適用の対象製品になっているという。今後の事業見通しについては、同製品販売を見込んだ事業計画を策定中だとしている。更に7月22日には、経済産業省の「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」に採択されたと発表した。同社では、全自動PCR検査システムの積極的な製品供給を行うための体制構築を事業方針として掲げており、試薬及び消耗品増産のための設備投資を目的として申請していたもの。補助金の採択金額は上限で20億2300万円。なお、20年6月期業績に及ぼす影響はないとしている。4月初旬には400円前後だった株価は上昇ロードを一気に駆け上がり、6月中旬には3150円に買われるという急騰劇を演じ市場の注目を集めた。現在は、上昇一服で2000円水準にあるが、目先調整一巡感も。
臨床検査薬・研究用試薬を製造する医学生物学研究所 <4557> [JQ]は、6月に同社が製造・販売する新型コロナウイルス検出キット「MEBRIGHT SARS-CoV-2 キット」が、唾液検査でも使用可能となったと発表した。同キットは、5月21日に製造販売承認を取得した、リアルタイムPCR法を原理とする体外診断用医薬品。この一部変更申請の承認により、使用可能な検体の種類が広がり、新型コロナウイルス感染の診断補助で活躍期待が高まっている。株価はここ下値模索が続いているが、7月31日につけた直近安値2784円で底打ち感も漂うだけに、目を配っておきたいところだ。
●タカラバイオは継続注目
タカラバイオ <4974> には継続注目。株価は6月11日に3535円まで買われ年初来高値を更新した後は上昇一服場面にあるが、それでも高値圏で頑強展開を続けている。同社は、4日の取引終了後、21年3月期連結業績予想について、売上高を338億円から396億円(前期比14.6%増)へ、営業利益を45億円から65億円(同3.6%増)へ上方修正した。新型コロナウイルス検査用のPCR関連製品やDNAワクチン関連の製造受託など、業績への寄与が期待できるアップサイドの要素を新たに業績予想に織り込んだという。また、同社は大阪大学とアンジェス <4563> [東証M]らのグループと新型コロナウイルスに対する予防用DNAワクチンの開発に携わっており、この切り口でも注目場面は続きそうだ。
そのほかでは、新型コロナウイルス感染症研究に使用できる研究試薬を豊富に取り揃えるバイオ専門商社のコスモ・バイオ <3386> [JQ]、第1四半期が営業益84%増で対上期計画進捗率73%となった臨床検査薬中堅のカイノス <4556> [JQ]などからも目が離せない。
●BML、HUグループには光明も
一方、PCRなど検査の最前線に立つ民間の 臨床検査大手の業績は厳しい状況だ。PCR検査受託数は増加しているものの、新型コロナウイルス感染拡大による影響で、健康診断や受診患者数の減少などが響いている。ビー・エム・エル <4694> は11日に発表した第1四半期連結決算が、売上高が前年同期比15.3%減の261億900万円、営業損益1億800万円の赤字(前年同期31億7900万円の黒字)、最終利益1億1100万円(同21億3400万円の黒字)となった。また、7日に発表したH.U.グループホールディングス <4544> (7月1日、みらかホールディングスから社名変更)の第1四半期の連結最終損益は13億8300万円の赤字になるなど、総じて臨床検査大手の業績は芳しくない。ただ、光明もないわけではない。
BMLでは「臨床検査事業で、健康診断の再開などにより検査数量は回復してくるとみている。PCR検査に関しては、足もと受注は拡大していくと考える」(経営企画部)という。事業者は、労働安全衛生法第66条に基づき、常時使用する労働者に対して1年以内ごとに1回は定期健康診断を実施しなければならず、また労働者は事業者が行う健康診断を受けなければならないことから、新型コロナウイルスにより減少した受診患者数も年度末に向けて後ずれすることで回復基調を見せることが予想される。ある業界関係者は「健康診断などによる検査が、業務のなかでどのくらいの比率を占めるかで影響も違うだろうが、少なくとも業績回復の足掛かりにはなるのではないか」と話す。BML、HUグループともに株価は下値を探る展開が続くが、その動向には注視しておきたい。
新型コロナウイルスの猛威は、収束見通しからは程遠い状況へと追いやっている。秋には、更なる感染拡大も懸念されるなか、まずはPCR検査の拡充、そして医療体制の強化が最重要課題として求められている。
株探ニュース
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