―新型コロナ第6波に突入、国内感染者急増で検査需要拡大局面へ―
新型コロナウイルスの感染がまたしても拡大している。国内においては、いったん落ち着きをみせた感染者数だったが、感染力の非常に強いオミクロン株の出現により状況は悪化の一途をたどっている。新型コロナの脅威が再び増すなか、ようやく正常化に向けて動き出していた経済活動にも水を差しそうだ。こうした状況で、まずは感染者数の把握が重要なことは言うまでもない。感染第6波に突入するなか、 PCR検査に絡む銘柄のいまを点検した。
●1日当たり2万5000人を突破
1日当たりの新型コロナ感染者数が15日、ついに2万5000人を突破した。昨年8月以来の水準で、感染力の強さを考慮すると更なる陽性者の増加は必至だ。厚生労働省によるとPCR検査実施件数も、ここにきて増加傾向をみせている。民間検査会社(主に行政検査)によるものは、昨年11月後半では2万件前後だったものが現在では3万~4万件とほぼ倍化している状況だ。加えて、民間検査会社による主に自費検査については、1月9日以降のデータは17日時点で更新されていないが、それまでは5万~6万件で推移していた。国内では、さまざまな検査機関におけるPCR検査の1日当たりの検査能力は約38万5000件で、現在のところ余裕はあるものの、オミクロン株は感染力が極めて高いだけに、今後の感染状況次第では逼迫することも考えられる。
●第6波、想定超える可能性も
国内において、初めて新型コロナの感染者が確認されてから15日で2年が経った。PCR検査については、一昨年の感染が拡大しはじめた当初、検査数の少なさが国内外から指摘され急速な改善が求められたが、官民挙げて検査体制の強化を進めたことで現在は大幅に拡充している。PCR検査は、地方衛生研究所・保健所、大学、医療機関、そして民間の検査会社で行われているが、このなか民間の担う役割は検査数も拡大しており非常に大きい。また、デルタ株に続きオミクロン株など新たな変異株が出現するなか、検査試薬などを手掛ける企業もスピード感のある対応で検査能力を高めることに尽力しており、民間検査企業とともに検査数の増加を企業業績に反映させている。新型コロナの影響により経済活動が停滞し厳しい経営環境に置かれる企業が多いなか、PCR検査に絡む企業についてはおおむね業績に安心感があることもポイントといえそうだ。
また、PCR検査については、第6波は想定しつつも、いったんは感染者数が落ち着きをみせたことで、検査数の減少ないしは現状維持を予想していた企業も少なくはない。ここにきての急激な感染拡大は、従来予想を超えるものになる可能性もある。
●ファルコHDは頑強展開
こうしたなか、全体相場が波乱展開にあっても堅調な株価推移をみせているのが臨床検査受託大手のファルコホールディングス <4671> だ。昨年11月には1700円近辺で推移していた株価だが、12月に入ると上昇加速し同月27日には上ヒゲで2164円まで買われた。現在は上昇一服も、2000円トビ台で頑強展開。11月9日には22年3月期の連結業績予想について、売上高を448億円から478億円(前期比9.6%増)へ、営業利益を28億円から40億円(同53.0%増)へ上方修正し、同利益については過去最高を見込む。新型コロナが猛威を振るった第5波の影響で関連検査の受託数が関西圏及び東海圏を中心に当初の想定を超えて著しく増加したことが要因だという。なお、上方修正公表時点では、10月以降は関連検査の受託数は落ち着きつつあり、第3四半期以降は当初の想定の範囲内になるとしている。
●HUグループ、BMLは休養十分
一方、同じく臨床検査及び臨床検査薬を手掛けるH.U.グループホールディングス <4544> 、臨床検査大手のビー・エム・エル <4694> の株価は上値の重い状況が続いている。とはいえ両銘柄ともに業績は好調だ。HUグループは昨年11月、22年3月期の連結業績予想について、売上高を2490億円から2547億円(前期比14.2%増)へ、営業利益を300億円から355億円(同39.8%増)へ上方修正。上期における新型コロナ感染者数の急増に伴い、PCR検査の受託数及び高感度抗原定量検査試薬・迅速抗原検査キットの需要が想定を上回って推移したことに加えて、大規模イベントに関連した検査需要も想定を上回った。また、BMLも22年3月期の営業利益段階で前期比60.5%増の320億円を見込んでいる。PCR検査に再び注目が集まるなか株価は休養十分、水準訂正に向かうことも考えられる。
●PHCHDは超低温フリーザー+PCR検査
昨年10月、東証1部に上場したPHCホールディングス <6523> にも目を配っておきたい。傘下のLSIメディエンスは、2020年2月から新型コロナのPCR検査受託サービスを開始しており業績にも寄与している。22年3月期は営業利益で前期比55.4%増の273億4700万円を計画しており、波乱展開をみせる株式相場が正常軌道に復帰すれば、下値模索を続ける同社株にも再評価機運が高まりそうだ。同社は旧パナソニックヘルスケア(現PHC)を傘下に持つ持ち株会社で、血糖値測定器や電子カルテ、細胞培養機器など各種ヘルスケア機器・サービスの開発・製造・販売が主な事業。ここ数年は、新型コロナワクチン保存用の超低温フリーザーでも注目を集めている。上期に超低温フリーザーやPCR検査の売り上げが業績に寄与したが、下期においても同フリーザーの需要が継続する見込みだ。同社もまた、PCR検査の需要について昨年11月12日に公表した業績修正時点では今後の減少を見込んでいる。
●バリュー株シフトで値を崩す島津
オミクロン株が急速にデルタ株と置き換わるなか、PCR検査の検査試薬を手掛ける企業も対応に忙しい。島津製作所 <7701> は、一昨年の感染拡大期から新型コロナ検出試薬キットを発売するなど検査体制の拡充を支えてきたが、株式市場でもこれを評価した買いが流入するなど投資家の熱い視線を集めてきた。今月7日には、オミクロン株のスクリーニングに貢献する「E484Aプライマー/プローブセット」(研究用試薬)を発売するなど素早い対応をみせている。22年3月期は、営業利益で前期比18.6%増の590億円を計画し2期連続での最高益更新を見込むなど好調継続。ただ、高PERのグロース株を売る動きが強まるなか、値がさ株である同社株も大きく売られている。いったんは様子見も、マーケットの落ち着きを見ながら押し目買いも一法といえそうだ。
●保土谷、東ソーにも活躍期待
新型コロナの検出試薬も手掛ける塩ビ・ソーダ大手の東ソー <4042> にも注目。昨年12月2日につけた1618円を底値に切り返しジリ高歩調を継続しており、きょうは24円高の1837円で取引を終えている。また、保土谷化学工業 <4112> はPCR診断キット用材料の需要拡大を享受する一社だ。韓国子会社SFCのPCR診断キット用材料も安定した販売が継続している。22年3月期は、会計基準の変更に伴い売上高の前期との比較はないものの営業利益で50億円を計画する。株価は13日、6200円まで買われ昨年来高値を更新している。そのほかでは臨床検査薬大手の栄研化学 <4549> 、オミクロン・デルタ株などを特定する新型コロナ郵送PCR検査などを行うリプロセル <4978> [JQG]の動向にも目を配っておきたい。
株探ニュース
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