アンジェス<4563>は、1999年に設立された大阪大学発の創薬ベンチャー。遺伝子医薬に特化した開発を進めており、将来的に「遺伝子医薬のグローバルリーダー」になることを目標にしている。新薬候補品を開発し、販売パートナーとの販売権許諾契約によって得られる契約一時金や、開発の進捗状況等によって得られるマイルストーン収益、上市後の製品売上高にかかるロイヤリティ収入を獲得するビジネスモデルとなる。
1.重症虚血肢向けHGF遺伝子治療用製品の状況について
主力パイプラインであるHGF遺伝子治療用製品は、2019年3月に「標準的な薬物治療の効果が不十分で血行再建術の施行が困難な慢性動脈閉塞症における潰瘍の改善」を効能として、厚生労働省から条件及び期限付製造販売承認を取得し、準備が整い次第、提携先の田辺三菱製薬<4508>を通じて販売を開始する見込みとなっている。また、米国では治験開始に向けた協議を進めている段階だが、まずは国内での販売を優先に取り組んでいく方針だ。
2.その他開発パイプラインの動向
その他の開発パイプラインについては、第1四半期から変化は無く、椎間板性腰痛症治療薬は米国で第1b相臨床試験が、高血圧DNAワクチンはオーストラリアで第1/2相臨床試験がそれぞれ着々と進んでいる。いずれも終了見込みは2020年以降で、安全性と有効性が確認されればライセンスアウト交渉を開始する予定にしている。その他カナダのサスカチュワン大学と共同で進めていたエボラ出血熱抗血清製剤の開発については、動物実験でウイルス感染による死亡を阻止することが確認されたことを発表しており、臨床試験の実現を目指して更なるデータを蓄積すべく前臨床試験を進めていく方針となっている。
3.業績動向
2019年12月期第2四半期累計(2019年1月−6月)の事業収益は前年同期比1.9%減の172百万円、営業損失は1,709百万円(前年同期は1,205百万円の損失)となった。ムコ多糖症6型治療薬「ナグラザイム®」の販売は前年同期比3.4%減の170百万円となり、販売権の承継により在庫分も含めて第2四半期で販売を終了した。研究開発費が前年同期比326百万円増加したほか、販管費も同176百万円増加したことが営業損失の拡大要因となった。
通期業績見通しは、事業収益で前期比45.1%減の335百万円、営業損失で2,800百万円(前期は3,065百万円の損失)と期初計画を据え置いている。「ナグラザイム®」の販売が終了したが、HGF遺伝子治療用製品の販売開始による田辺三菱製薬からのマイルストーン収入や販売ロイヤリティ収入を見込んでいる。費用面ではHGF遺伝子治療用製品の国内における市販後調査費用等の発生等で販管費が増加するものの、研究開発費の減少を見込んでいる。
4.財務状況
2019年12月期第2四半期末の現金及び預金残高は第33回新株予約権の行使完了により、前期末比5,506百万円増加の11,291百万円となった。今回の調達資金は、開発パイプライン拡充(53億円)やHGF遺伝子治療用製品の市販後調査(11.5億)等に充当する予定にしている。2019年3月にゲノム編集技術の開発を行う米Emendo Biotherapeutics(以下、Emendo)に投資を行ったのもその一環となる。なお、同社は国内でHGF遺伝子治療用製品の条件及び期限付製造販売承認を取得したこと、資金調達により財務基盤が強化されたことを受けて、2018年12月期の有価証券報告書において「継続企業の前提に関する注記」の記載を解消している。
■Key Points
・大阪大学発のバイオベンチャーで、遺伝子医薬に特化した開発を進める
・長期間の薬効が期待される高血圧DNAワクチンは、潜在市場規模が大きく注目度も高い
・新株予約権の行使により調達した資金で、成長の種となる開発パイプラインの拡充に取り組む
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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