アンジェス<4563>は、1999年に設立された大阪大学発の創薬ベンチャー。遺伝子医薬に特化した開発を進めており、将来的に「遺伝子医薬のグローバルリーダー」になることを目標にしている。ビジネスモデルは、新薬候補品を開発し、販売パートナーとの販売権許諾契約によって得られる契約一時金や、開発の進捗状況などによって得られるマイルストーン収益、上市後の製品売上高にかかるロイヤリティ収入を獲得するモデルとなる。
1. 主要開発パイプラインの進捗状況
主要開発パイプラインの進捗状況について見ると、国内における重症虚血肢向けHGF遺伝子治療薬については2018年1月に製造販売承認申請を行っており、現在は順調に審査が進んでいるもよう。「条件及び期限付承認」を想定しており、承認が得られれば国内初の遺伝子治療薬として、提携先である田辺三菱製薬<4508>からマイルストーン収入が得られる見込み。一般的な審査期間で見ると2019年前半までには承認の可否が判明すると見られる。一方、米国では第3相臨床試験に向けての新たな臨床計画を引き続き策定中。治験デザインはおおむね国内で実施したものを基本に考えており、比較的小規模での治験を想定している。また、米国で開発を進めている椎間板性腰痛症治療薬については、2018年2月より第1b相臨床試験を開始しているほか、オーストラリアで開発を進めている高血圧DNAワクチンについても同年4月より第1/2相臨床試験を開始している。いずれも2020年以降の終了を見込んでおり、安全性と有効性が確認されればライセンスアウト交渉を開始する予定にしている。その他、米Vicalと共同開発を進めている慢性B型肝炎治療用ワクチンについては、現在実施している動物実験の結果を見て、今後の方針を決めていくことになる。
2. 直近のトピックス
同社は、2018年7月にカナダのバイオ創薬ベンチャーであるVasomune Therapeutics Inc (以下、Vasomune)と共同開発契約を締結したことを発表した。Vasomuneが開発したペプチド化合物を用いて、急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患を対象とした医薬品を共同開発する。開発費用と将来の収益について折半する契約となっており、同社はVasomuneに対して契約一時金及び開発進捗に応じたマイルストーンを支払うことになる。まずは、急性呼吸窮迫症候群(以下、ARDS)を想定した非臨床開発を行い、2年後を目途に臨床試験を開始、POC※1を取得した段階で、製薬企業に開発・販売権を導出する予定にしている。ARDSに対する根本的な治療薬はまだなく、開発に成功すれば潜在的な事業機会は世界で25億ドル以上あると見られており、今後の動向が注目される。また、同年7月にマイクロバイオーム※2事業の可能性を探索することを目的に、同分野のパイオニアであるイスラエルのMyBiotics Pharma Ltd. (以下、マイバイオティクス)と資本提携を締結したことを発表した。
※1 POC(Proof of Concept)臨床研究で予測された開発段階にある新薬の有効性を動物あるいはヒトで実証すること。
※2 腸内細菌に代表される微生物叢(そう)を指す。近年、マイクロバイオームを使って医薬品やサプリメントを開発する企業が増えており、マイバイオティクスも既に胃腸疾患や婦人科系疾患について大手製薬企業とライセンス契約を締結して開発を進めている。
3. 2018年12月期の業績見通し
8月27日付で2018年12月期の業績修正を発表した。事業収益は期初計画の365百万円から600百万円、営業損失は同2,500百万円から3,100百万円としている。事業収益については、同社が保有していた非臨床試験データに関して海外製薬企業へ譲渡が予定され、その譲渡額分となる。一方、営業損失が拡大するのはVasomuneへの契約一時金支払い、及びHGF遺伝子治療薬の国内承認申請に係る費用の発生等が要因となっている。なお、2018年12月期第2四半期末における現金及び預金残高は新株予約権の行使が順調に進んだことから、前期末比1,324百万円増加の2,472百万円となっている。さらに、7月から8月21日までに行われた新株予約権の行使によって2,078百万円を調達しており、直近の現金及び預金は30億円以上の水準になっていると推定され、今後1年程度の事業活動資金は確保できたと見られる。とはいえ、当面は開発ステージが続くことから、研究開発資金の調達を目的としたエクイティファイナンスは今後も実施される可能性がある点には留意していく必要がある。
■Key Points
・大阪大学発のバイオベンチャー、遺伝子医薬に特化した開発を進める
・HGF遺伝子治療薬は国内で承認申請を行い、椎間板性腰痛症及び高血圧症治療薬の臨床試験を海外で開始
・新たなシーズを求めて、海外のバイオベンチャーと共同開発契約及び資本提携を締結
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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