ソフト99コーポレーション<4464>は1954年(昭和29年)創業の自動車用、家庭用ケミカル用品の製造販売会社である。事業セグメントとしてはファインケミカル事業、ポーラスマテリアル事業、サービス事業、不動産関連事業の4つのセグメントで区分している。自動車分野を中心にM&Aも活用しながら業容を拡大しており、直近では2018年3月期に電子機器・ソフトウェアを開発するハネロンを子会社化し、グループの連結子会社数は9社となっている。
直近5期間の事業セグメント別構成比を見ると売上高、セグメント利益ともに大きな変動はなく、売上高ではファインケミカル事業が5割弱、ポーラスマテリアル事業とサービス事業がそれぞれ2割強の比率で推移している。また、セグメント利益の構成比で見ると、ファインケミカル事業が5割強、ポーラスマテリアル事業が約3割となっており、両事業が収益柱になっていることがわかる。また、サービス事業や不動産関連事業についても安定した収益が続いており、総じてバランスの取れた事業ポートフォリオになっている。連結売上に占める自動車分野の売上構成比は約6割となっており、ここ数年は同水準で推移している。
1. ファインケミカル事業
ファインケミカル事業は大きく分けて、コンシューマ向けに販売されるカー用品(ボディケア、ガラスケア、リペアグッズ等)、自動車ディーラーや自動車美装業者、あるいはその他業界向けに販売される業務用製品(コーティング剤等)、家庭用品(メガネケア製品、クリーナー等)、海外事業(主にカー用品)、そして2016年3月期から新たに加わったTPMS事業の5つに区分される。2018年3月期の売上構成比を見ると、コンシューマ向けカー用品が全体の68%を占め、次いで業務用製品が13%、海外事業が12%、家庭用品等が5%、TPMSが1%となっている。
コンシューマ向けカー用品の市場シェアを見ると、カーワックスを中心としたボディケア分野では約4割とトップとなっている。競合大手としては(株)ウィルソンやシュアラスター(株)などがあり、同社を含めて4~5社の争いとなっている。また、ガラスケア分野では約7割のシェアを握っている。雨天でも視界を確保するガラスコーティング剤「ガラコ」シリーズが高い支持を集めている。競合は(株)錦之堂やシーシーアイ(株)などがある。また、リペアグッズ(補修材)では約6割のシェアを持ち、市場は同社と武蔵ホルト(株)の2社で寡占市場となっている。
業務用製品では、自動車美装業者向けにコーティング剤などを販売しているほか、自動車メーカーやディーラー向けのOEM製品も製造している。また、ここ数年では飲料用自動販売機や船舶、鉄道車両など、自動車業界以外の市場開拓も進めており、同事業の1割弱の比率を自動車分野以外で占めるようになってきている。なお、業務用コーティング剤の競合としては、自動車メーカー・ディーラー向けでは中央自動車工業<8117>のシェアが高く、また、既販車へのコーティングサービスをガソリンスタンドや直営店を通じて提供しているKeePer技研<6036>などがある。
海外事業ではロシアや中国、東南アジア向けが売上の中心で、現地代理店経由でコンシューマ向けカー用品や業務用製品の販売を展開している。また、近年では中国、台湾を中心に業務用製品の販売を通じた自動車美装サービスの展開を現地パートナー企業と協業で進めている。
2016年3月期より新たに加わったTPMS事業では、TPMSの開発販売を国内の運送事業者向けに行っている。TPMSとは、タイヤ内の空気圧や温度をセンサーで常時監視し、異常が発生した場合に運転者に通知するシステムのこと。仕組みとしてはエアバルブと一体化したセンサー付き発信器をタイヤホイールに組み付け、運転席に設置される受信機に無線によって信号を送信、モニターに数値データ等の情報を表示する。トラック運送事業者などは、車体の不具合に起因する交通事故を未然に防止するため、運行前点検の厳格化が指導されている。タイヤ点検もその一環として必ず実施しているが、TPMSを搭載すれば点検作業が省略化できるほか、走行中の「安心・安全」にもつながることになり、ここ1〜2年で主に長距離トラックの運送業者向けに普及が進み始めている。
ファインケミカル事業の営業利益率は、直近で9~12%と安定して推移している。コンシューマ市場で高いシェアを獲得できていること、利益率の高い業務用製品の販売が安定していることが要因とみられる。海外事業の収益性に関しては仕入販売が含まれていることもあり低水準だが、現地専売品など付加価値の高い製品を投入していくことによって改善を図っている。
2. ポーラスマテリアル事業
子会社のアイオン(株)で展開するポーラスマテリアル事業は、1999年にカネボウ(株)から譲り受けた事業で、ポリビニルアルコール(PVA)素材をベースとしたスポンジ(機能性多孔質吸収体)のパイオニア企業として知られている。高い吸水性能を生かして、用途ごとに産業資材向け、生活資材向けの開発、製造を行っている。産業資材では半導体やハードディスクの製造ライン用(洗浄・吸水工程)が、コンシューマ向け生活資材では洗車用タオルやスポーツ用タオルなどがある。2018年3月期の売上構成比で見ると、産業資材が72%、生活資材が28%の比率となっている。また、海外売上比率が48%と高いことも特長で、特に半導体分野では米国や韓国の大手半導体メーカーを顧客に持ち、最先端プロセスの製造ラインでは5割弱のシェアを握っている。一方で、半導体業界の需要に左右されない事業体を構築すべく、近年では新用途の開拓にも注力しており、インフルエンザ検査用キット等の医療用途やプリンタ向けでの採用が進み始めている。
営業利益率は10%台前半の水準で安定して推移している。コンシューマ向け生活資材の利益水準が比較的安定していることと、産業資材では半導体業界・ハードディスク業界向けともに競合が少なく、寡占的な市場環境にあるためだ。なお、海外向けに関しては円建て取引のため、為替変動の直接的な影響は受けない格好となっている。
3. サービス事業
サービス事業は、子会社で展開する自動車整備・鈑金事業のほか、自動車教習所の運営事業、生活用品企画販売事業で構成されている。2018年3月期の売上構成比で見ると、自動車整備・鈑金が48%、教習所運営が17%、生活用品企画販売が34%となっている。
自動車整備・鈑金事業では、(株)ソフト99オートサービスで鈑金塗装や各種コーティング施工サービスを展開している。損保会社やカーディーラー経由で入庫される事故車両などの修理や車検整備を主に行っているが、ここ数年は安全運転支援システムが普及し始めたことによる事故車両の減少や損害保険料が改定されたこともあって、需要が減少傾向となっている。このため、最近ではメイクアップ用のカーラッピングサービスや塗装面を飛び石や虫などによるキズや汚れから守るプロテクションフィルムの施工サービスなどにも注力している。サービス拠点は関西4ヶ所、首都圏で1ヶ所の体制となっており、主に関西が売上の中心となっているが、2013年9月に東京・江東区に新工場を稼働させており、首都圏の営業強化を進めている。
自動車教習所事業は、アスモ(株)が兵庫県尼崎市で1校を運営しており、今後も現状規模を維持していく方針となっている。生活用品企画販売事業については、(株)くらし企画で生活協同組合向けを中心に家庭用品・雑貨の企画販売を手掛けている。また、幅広い調達先を活かしたインターネット販売にも注力しており、今後はグループのネット販売のノウハウを集約し、インターネット販売事業も拡大していく方針となっている。
4. 不動産関連事業
不動産関連事業は不動産賃貸事業と温浴事業、介護予防支援事業が含まれる。2018年3月期の売上構成比で見ると、「極楽湯」(3店舗)を運営する温浴事業が71%、不動産賃貸事業が26%、介護予防支援事業が4%となっている。不動産賃貸事業に関しては本社ビルと東京・秋葉原にある自社ビルなどの賃貸を行っている。介護予防支援事業については、「極楽湯」(尼崎店)の同社敷地内で温浴事業の付加サービスとして、2014年11月より子会社のアライズ(株)で事業を開始している。不動産関連事業に関しては現段階で、いずれも事業規模を拡大していく予定はない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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