サーバーワークス、東証一部へ市場変更承認 コロナ禍でも新しい事業機会創出でさらなる成長を狙う
2021年2月期第3四半期決算説明会
大石良氏:みなさまこんにちは。サーバーワークスの大石でございます。当社の決算説明会にご参加いただき、ありがとうございます。
まず初めに、私からみなさまへご報告させてください。株式会社サーバーワークスは2021年1月15日を持ちまして、東証マザーズから東京証券取引所市場第一部へ市場変更となりました。
これも一重にお客さま、機関投資家と個人投資家のみなさまのおかげであり、深く感謝しています。今後もみなさまの期待に応えていけるよう、経営陣、社員一同力を合わせて事業に取り組んでいきますので、引き続きご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
新型コロナウイルス感染症の影響について(継続)
それでは、資料を用いてご説明します。今回も決算説明会自体をリモート配信としていますが、まず、新型コロナウイルス感染症の影響と対策についてご紹介させてください。
私どもは昨年の2月からフルでテレワーク環境をとっており、全社員に毎月2万円の在宅勤務手当を継続して支給しています。これにより、新型コロナウイルス感染症が拡大し、緊急事態宣言が出る状況でも生産性に影響が出ないよう配慮しています。
社員に対し定期的に調査も行っていますが、完全なテレワークの環境でも、80パーセント以上の社員が「生産性に影響がなかった」もしくは「向上した」と答えています。したがって、会社のオペレーションという意味では問題なく稼働しているとご理解いただければと思います。
次に事業継続・業績への影響についてです。先ほどお伝えしたとおり、テレワークを整備したことによる事業自体への影響は軽微です。前回、第2四半期でクラウドインテグレーション部門への影響が多少出たとご説明しましたが、現在はかなり改善しています。こちらについては後ほどご説明します。
2021年2月期 3Q トピックス①
次に、第3四半期のトピックスについてご説明します。まず1つ目は、AWSにおけるMSPプログラムの最新4.1の更新についてです。AWSでは業務的な認定制度がありますが、この中でも非常に重要なMSPプログラムを更新しました。
2つ目をご覧ください。Gartnerは、ITの世界ではもっとも権威のある調査会社と認識されていますが、Asia/Pacificの中のPublic Cloud、Professional Servicesを提供する会社として、こちらのレポートに掲載されたというニュースです。
とくにアメリカなどではGartnerのレポートが非常に重要視されており、このレポートに載らないと調達候補に入らないと認識されています。このようなレポートに載ったことで、我々もグローバルな会社から調達される候補の1社になり得たというニュースです。
2021年2月期 3Q トピックス②
先ほどお伝えしたとおり、東京証券取引所市場第一部へ市場変更となりました。
また、デロイト トーマツ グループが発表したTMT(テクノロジー・メディア・テレコミュニケーション)業界の「2020年 日本テクノロジーFast 50」という、売上高の成長率が高い会社の中において23位にランクインさせていただくことができました。
このような環境下でも、私どもは堅調に成長を続けていることがご理解いただけるのではないかと思います。
2021年2月期 業績予想(10月修正分)
あらためて決算の細かい内容についてご説明します。今期の売上高は80億300万円、経常利益3億7,700万円をターゲットにして進めていました。
2021年2月期 3Q 実績
現状の第3四半期の実績はこちらです。売上高は56億8,600万円、経常利益は2億6,600万円で着地しています。
売上高の進捗
次は進捗率のグラフです。ご覧のように、トップラインでは71パーセントまできています。予想は80億300万円ですが、進捗率71パーセントですので、現在のところは堅調です。
私どもはストック比率が非常に高い会社となっています。ストック比率が高い場合、四半期が進めば進むほど売上高が少しずつ伸びていく傾向にあります。その点においても、現状71パーセントは想定どおりであり、そこまで悪くない数字であると理解しています。
利益額・利益率の推移
次に、利益額と利益率の推移です。こちらはコロナショックの影響もあり、第1四半期、第2四半期は多少凹んだところがあったのですが、ご覧のとおり順調に回復している状況です。これは、先ほどお伝えしたとおり、「クラウドインテグレーション」のプロジェクトが堅調に推移し始めていることが非常に大きいと理解しています。
2021年2月期 3Q 製品・サービス区分別売上高
私どもの事業としては、AWS事業という単一のセグメントなのですが、その中ではいくつかに分かれています。保守サービスは、「クラウドインテグレーション」「リセール」「MSP」の3つに分かれているのですが、それぞれの比率はご覧のようになっています。
「クラウドインテグレーション」は、復調したとは言ってもまだ前年同期比62.2パーセントです。当然、100パーセント戻っている状況ではないのですが、それでもこの時点でここまで戻ってきているということで、今後もかなり明るい見通しが立てられるのではないかと理解しています。
また、「リセール」と「MSP」は想定どおり伸びている状況です。
製品・サービス区分別の四半期ごと売上高
その数字を四半期ごとのチャートにしたのが、ご覧のチャートです。第1四半期、第2四半期は少し厳しい局面もあったのですが、第3四半期に向けてかなり復調してきていることがご理解いただけるのではないかと思います。
参考)リセール:為替レートの推移
このように、全体にわたってきちんと少しずつ復調しているのですが、「リセール」の金額感で言うと、実は為替の影響を顕著に受けています。第1四半期に108円くらいで推移していたところが、第3四半期は103円くらいまでと、5パーセント近く下落している状況です。
私どもの「リセール」のビジネスモデルでは、お客さまがAWSをお使いになった時の利用料はAWS側ではドルで計算しますが、我々からお客さまへは円建てで請求するかたちになっています。私たち自身は、毎月その時点の為替レートでお客さまにご請求しますので、為替のリスクは非常に限定的なのですが、トップラインは為替の影響を受けます。
したがって、為替が円高に振れても我々としては利益額自体はそこまで変わっていないのですが、為替の5パーセントの影響がトップラインの売上に影響しています。
リセール:リザーブドインスタンス・Saving Plans
為替の影響を考慮しない、お客さまが純粋にAWSをどのようにお使いいただいているかというチャートが、こちらのページです。薄い黄色の部分は、お客さまが実際にAWSをお使いになった分量です。上の濃い黄色の部分は、後ほどご説明しますが、「リザーブドインスタンス」「Saving Plans」という、お客さまが利用権を予約した部分になっています。
薄い黄色の部分が順調に伸びているということは、コロナショックの中にあっても、お客さまはクラウドの利用を減らすのではなく、むしろ増やしているということがご理解いただけると思います。
また、濃い黄色の部分が昨年の第4四半期から少し減っているのはどのような状況かと言うと、「リザーブドインスタンス」「Saving Plans」はほとんどの方が1年分ご購入されるのですが、1年分まとめてご購入いただくと、向こう1年間のAWSの利用料金が若干割引されるという性質があるためです。
したがって、景気がよい時はまとめて購入されるケースが多いのですが、今のコロナ禍のような状況では、お客さまもまとまった投資を行いにくいため、第2四半期、第3四半期は「リザーブドインスタンス」「Saving Plans」が少し減っています。
ただし、先ほどもお伝えしたとおり1年分をご購入される方が多いため、第4四半期についても、今までご覧いただいたとおりの傾向に戻ってくるのではないかと考えています。
リセール:AWSアカウント数・ARPUの推移
もう1つ、今の「リセール」のビジネスのアカウント数と、お客さまの単価であるARPUの推移についてです。ご覧いただいたとおり、コロナショックの中においても、AWSのアカウント数は順調に増えています。
クラウドインテグレーション:各指標の推移
次に、先ほどもお伝えさせていただきました、「クラウドインテグレーション」についてです。お客さまが実際にAWSを始める、プロジェクト開始の起点になるものです。第2四半期は緊急事態宣言もあり、お客さまが投資活動を控えられたことが下振れた要因になったとお伝えしました。
一方で、お客さまがお持ちのIT資産、特にコンピューターサーバーは、基本的には賞味期限があるものです。ずっと放っておいてよいものではないわけです。物ですから、いつか壊れます。
したがって、この第2四半期に新しいものに切り替えたり、クラウドに持っていくプロジェクトをキャンセルしたとしても、永遠にキャンセルし続けることはできないわけです。どこかのタイミングで、クラウドに行くかオンプレミスのサーバーでリニューアルするかを選択しなければいけない状況が必ず来ます。
このような状況ですから、当然オンプレミスでもう1回リニューアルする方は減少傾向にあり、クラウドでリニューアルする方が増加する傾向にあります。このような波もあり、第3四半期はきちんと復活し始めている状況です。
前回の第2四半期の説明会の時にもお話ししましたが、クラウドのプロジェクトをスタートされる方は一時的に減少傾向にありました。しかし、長い目で見れば必ず増加するとお伝えしました。それが早くも第3四半期には目に見える数字になって表れてきたと理解しています。
ストックビジネスの比率推移
先ほど、ストックビジネスは比率として非常に高いとお話ししましたが、実際に現在のストックビジネスの比率は94パーセントという状況になっています。第2四半期に96パーセントまで行ったところが少し減っているように見えるのですが、逆に第2四半期は少しフローの収益比率が下がりすぎてしまったため、私どもとしては90パーセント台前半が最適な比率ではないかと考えています。
ライフタイムバリュー
ストックビジネスが今も堅調に成長していることをお示ししたのが、こちらのライフタイムバリューのチャートです。このチャートは、一番下の黒い層が2011年以前に私どもとご契約してくださった方、その次が2012年にご契約してくださった方……というように、それぞれの年にどのくらい私どもにお支払いいただいたかを表しています。
ご覧のとおり、少しずつですが、どの年度にご契約くださったお客さまも私どもへの払いを増やしてくださっています。クラウドもそうですし、私どものプロフェッショナルサービスや保守サービスもそうですが、少しずつ利用量を増やしていき、今までコンピューターを自分たちで持っていた環境から、クラウドの環境に少しずつ移行を進めてくださっていることが、このチャートからおわかりいただけるのではないかと思います。
人員数推移
次に人員数の推移です。第1四半期の時には「今期は採用活動を前倒しで行ったので、利益の圧迫要因になりました」とお伝えしましたが、第2四半期、第3四半期は比較的なだらかに採用を進めていますので、現状としては適正な規模で運営できていると考えています。一方で、先ほどお伝えしたとおり、すでに復調の兆しが見えていますので、今後は必要に応じて補充していきたいと考えています。
投資家のみなさまから、「このような環境下でエンジニア採用はうまくいっているのか?」というお問い合わせをよくいただきます。それに対して、私どもは「我々は非常に採用が行いやすいです」とお答えしています。
その理由は、エンジニアにとってサーバーワークスという会社が非常にわかりやすい会社だからです。AWSに特化しているため、私どもの会社に入ればAWSに関わる仕事ができることが100パーセント確定しています。かつ、このAWSというテクノロジーは、向こう10年はエンジニアにとって食いっぱぐれのない技術だと認識されています。
したがって、エンジニアにとっては、AWSの技術が身に付き、将来食いっぱぐれることがないという点で非常に選びやすい会社であると認識しています。そのため、採用については、私どもがアクセルを噴かせばきちんと必要数を補充できるのではないかと考えています。
2021年2月期 3Q 営業利益の増減要因分析
次のページからは、少し細かい内容ですが、営業利益の増減要因の分析をしています。当社のホームページからもこちらの資料をダウンロードできますので、分析にご利用いただければと思います。
2021年2月期 3Q 財務状況・貸借対照表(要約)
こちらはB/Sの要約です。この第2四半期に資金調達が無事完了し、おかげさまで手元の資金には余裕があります。
流動比率
こちらのチャートで示したとおり、流動比率についても余裕があり、健全な事業運営には差し障りのない状況が続けられていることをご理解いただければと思います。
成長戦略:大規模マイグレーション(移行)プロジェクトの獲得
最後に、成長戦略についてお話しします。このような状況の中、これからサーバーワークスとしてどのように成長していくのかというお話です。1つ目は、大型のマイグレーションプロジェクトの獲得です。このような状況で、いろいろな業種・業態のお客さまが事業上のダメージを非常に大きく受けています。
私どもの一番の敵というわけではないのですが、コロナショック前においてお客さまがクラウドを選ばない理由は、実は事業への楽観論でした。お客さまの事業が好調な時は、「IT資産は今までどおりでよいではないか」「なぜわざわざリスクを取ってクラウドにいく必要があるのか」と判断されるケースが非常に多かったわけです。
ところが今はこのような状況で先の見通しが立ちません。いつ何時どのような状況が訪れるかわからないとなると、「変化に強く、ダイナミック、ドラスティックなコスト削減ができるITインフラに切り替えていかなければいけない」という思いが、お客さまの中で醸成されるようになります。
「今まではコンピュータを自分たちで買い、自社に置いたりデータセンターに置いたりしていればよかった。しかし、それではコストも非常に高止まりするし、どのような変化が起こるかわからない状況に柔軟に対応できない」ということで、私どもはこのような機会をうまく掴み取り、クラウドで解決していきます。
このようにして、私どもは今後も大規模なプロジェクトを獲得していきたいと考えています。これが1つ目です。
成長戦略:New Normalな働き方の実現支援
2つ目はNew Normalな働き方の実現支援ということで、いくつかアイデアがあります。まず1つ目がテレワーク環境の整備です。すでに第2四半期くらいからスタートしているのですが、実例をご紹介します。
1つ目はNTTスマイルエナジーさまです。こちらは、NTT西日本さまとオムロンさまの合弁であり、新電力会社です。すでにAWSへのシフトは進めていらっしゃったのですが、コロナショックにより、急遽全社員がリモートワークに移行しなければならなくなりました。しかも新電力ですから、一般のお客さまからのお問い合わせもあるため、コールセンターの環境も整えなければなりません。これらを我々がAWSで解決させていただいた事例です。
スライド右側の横河電機さまも、すでにAWSはお使いでいらっしゃったのですが、昨年の緊急事態宣言の時に、製造部門や設計に携わっていてセンシティブな情報を持った方もテレワーク、リモートワークを行わなければいけないことになりました。
しかし、プラントなど、さまざまな機械の設計データを安易に流出させてしまうことがあってはなりません。そこで、アプリケーションやデータの実態はクラウドにあっても、画面の情報だけを在宅勤務中のパソコンに転送できる仮想デスクトップによって、在宅で勤務できるが、データの実体は家のパソコンに残らないという環境を、Amazonのクラウドにより、我々の力を使って実現しました。
実際に1,400人近くの方が1ヶ月でこの環境を準備することができました。このような、クラウドを使ってテレワーク、リモートワークを進めるプロジェクトが、これから先により大きな広がりを見せていくのではないかと考えています。
成長戦略:クラウドを活用した新しいサービスの提供
また、クラウドを用いた新しいサービスの分野にもチャレンジしていきたいと考えています。スライド左側のパルシステム生活協同組合連合会さまをご覧ください。前回の緊急事態宣言の時に会員数も注文数も激増したと聞いています。ところが、電話で注文が増えてもコールセンターが密になってしまいますので、前回の緊急事態宣言の時はオペレーターの数を増やすことができませんでした。
このような状況に対して我々がどのように回答したかと言うと、「電話の仕組みもAmazonのクラウド上で準備しましょう」とお答えしました。これは「Amazon Connect」というサービスなのですが、これを使ってIVRと呼ばれる音声の自動応答の仕組みを提供し、注文が増えてもオペレーターをたくさん準備することなく自動応答できるようにしました。この仕組みは、パルシステムの中では「救世主」と呼ばれていると聞いています。
最後に、スライド右側の金融機関向けクラウド導入コンサルティングサービスについてです。「いくつかのメガバンクで実際にクラウドの導入を支援した」という人材を採用し、金融事業向けのスペシャルチームを組成しました。
このようなコロナショックの中、実は金融機関のみなさまはそこまで事業上のダメージを受けていらっしゃらないのです。一方で、国策として地銀の再編やFintechサービスの隆盛もあり、「金融機関のサービスも変えていかなければいけない」という気運は高まっています。これを変えていくにあたり、「やはりクラウドを使わなければいけない」ということは、業界のみなさまのコンセンサスになりつつあります。
このような状況において、我々は金融機関のみなさまにもクラウドサービスをご提供するためにスペシャルチームを組み、導入コンサルティングサービスを始めています。このように、クラウドのパワーをうまく活かし、新型コロナウイルス感染症が拡大する中でも新しい事業機会を創出していきたいと考えています。私からの説明は以上です。
最後にご挨拶をさせていただきます。私どもはAWSを中心とした事業を進めている中で、Amazonとも親密にさせていただいていますが、彼らから学ぶことも非常に多くあります。
彼らの経営哲学の1つに、「Still Day One(まだ初日だ)」という考えがあります。Amazonの創業者のジェフ・ベゾスは、「Amazonは大きくなったけれど、まだ創業初日の気持ちを忘れずに事業に取り組もう」と社員に伝えているそうですが、私どももこの教えに賛同しています。東証一部に上場したとはいえ、まだまだこの事業もこのマーケットも始まったばかりだと考えています。
私どもも「Still Day One」の精神でこれからも成長を続けていきたいと考えていますので、投資家・株主のみなさまのご支援をこれからも賜われればと考えています。本日はどうもありがとうございました。
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