1. 2022年12月期の業績概要
ユミルリンク<4372>の2022年12月期の業績は売上高が前期比13.1%増の2,181百万円(うちストック売上が2,132百万円、スポット売上が48百万円)、営業利益が同25.7%増の520百万円、経常利益が同30.6%増の520百万円、当期純利益が同25.3%増の359百万円となり、前期比で大幅な増収増益を達成した。売上高に関しては、8期連続の増収、営業利益に関しては4期連続の増益を達成した。継続して業績を拡大してきていることが見て取れる。
デジタルマーケティングの普及、ポストコロナ、DXの推進と、外部環境が好調に推移するなかで、主力の「Cuenote® FC」、「Cuenote® SMS」が揃って好調だった。「Cuenote® FC」に関しては、ポストコロナやDXを背景に顧客が所有するメールアドレスが拡大し、配信規模が増大するなかで(年間のメッセージ数は750億通を突破)、高価格帯プランが好調だった。加えて、2022年12月期下期から営業人員の役割分担を明確化した。このことが、単価の高いエンタープライズ領域の受注伸長につながったほか、廉価版プランの伸長にも寄与した。また、大規模災害を想定し複数拠点に設置したシステムを利用することができるディザスタリカバリプランに関しても、ネット銀行、大手ISPへ導入するなど、新規顧客を順調に増やした。これらにより、契約当たりの平均利用額は前期比5.0%増の91千円、2022年12月期末時点のMRRは前年同期比9.3%増の154百万円、ストック売上は同9.9%増の1,771百万円に拡大した。
「Cuenote® SMS」に関しては、市場が普及期にあるなかで、SMSの有用性が市場に認識され、ニーズが好調に推移した。運輸業、ECサイト運営顧客が配信数を底上げした。加えて、2022年5月に新たにリリースした「Cuenote® Auth」も配信数の増加に寄与した。その他、第2四半期に特定顧客の大規模配信があったことも、配信数を押し上げた。これらにより、2022年12月期の契約当たりの平均利用額は、前期比10.5%増の137千円、2022年12月期末時点のMRRは前期比6.6%減の27百万円、ストック売上は同41.4%増の306百万円となった。MRRに関しては、前期の大口顧客のスポット販促利用の反動から微減となったものの、依然として拡大傾向にあると言えるだろう。
期初の業績予想と比較すると、売上高はプラス0.3%、営業利益はプラス10.6%、経常利益はプラス10.6%、当期純利益はプラス11.8%とそろって予想を上回って着地した。特に利益の伸長に関しては、同社のコスト構造も寄与している。内製化により費用の過半は人件費、データセンター費用、家賃などであり、比較的見通しが立てやすくコントロールしやすい固定費である。今後もコストを適切にコントロールしていくことにより、安定して利益を積み上げていくものと弊社では見ている。
解約率は、メールサービスが前期比マイナス0.01ポイントの0.37%、SMSサービスが同プラス0.91ポイントの1.06%だった。SMSに関しては、前期に比べて解約率が上昇したとはいえ、収益影響の限定的な解約であり、依然として非常に低い水準を保つことができていると言えるだろう。むしろ同社サービスに対する市場の反応は良好であり、実際、2021年12月期末時点と比較して、上場企業で「Cuenote®」シリーズを導入している企業数はプラス71社の261社まで拡大している。TOPIXニューインデックス別に導入率を見ても、Core30では前期比プラス3.3ポイント、Large70では同5.7ポイント、Mid400では同3.0ポイント、Small1では同1.0ポイント、Small2では同0.9ポイント導入率が増加した。特に、比較的浸透率の低かったMid400とSmall1も確実に顧客層を広げた。このことから、新規顧客の開拓と同社戦略が確実に実行されていることが窺える。
2022年12月期のトッピクスとしては、サイバーエージェントのSMS配信サービス導入事例が公開された。同社が運営するプラットフォーム上のSMS認証をリプレースする際の同社の「Cuenote® SMS」の導入を決定した。安定稼働が求められるなかで、安心のサポート体制、システムの安定稼働を支える技術力などが評価された格好だ。SMS市場が普及期にあるなかで同社は、「Cuenote® SMS」の新規顧客獲得に注力していく方針だ。サイバーエージェントのような大企業が同社の技術力などを評価し、導入決定に至ったことは、今後の顧客獲得にプラスに働くと弊社は見ている。
2. 過去の業績推移
(1) 売上高と営業利益
2012年12月期には739百万円だった売上高と59百万円だった営業利益は、2022年12月期にはそれぞれ2,181百万円、520百万円まで拡大している。文字通り右肩上がりに成長してきたと言えるだろう(同期間の売上高と営業利益のCAGRはそれぞれ11.4%と24.4%)。デジタルマーケティング市場が拡大するなか、大規模・高速配信を可能にする技術力や充実のサポート体制などを武器に業績を順調に拡大してきたことが窺える。
特筆すべきは営業利益率の高さだ。2012年12月期には8%だった同指標は、売上が拡大するにしたがって2022年12月期には23.9%に急伸している。同社のようなSaaS型ビジネスモデルは変動費が少ない分、売上が拡大するにつれて利益率が上昇する傾向にある。今後も業績が拡大するなかで、営業利益率をはじめ各指標の利益率が高まっていく可能性は十分にあると弊社は見ている。
(2) キャッシュ・フローの推移
2017年12月期から2022年12月期までの営業キャッシュ・フロー、投資キャッシュ・フロー、財務キャッシュ・フローの推移を見ると、営業キャッシュ・フローは一貫してプラス、投資キャッシュ・フローは2021年12月期を除きマイナス、財務キャッシュ・フローは2020年12月期まで0円で推移しており、財務の健全性を意識しながら投資を継続してきたことが窺える。また、営業キャッシュ・フローから投資キャッシュ・フローを差し引いたフリーキャッシュ・フローが常にプラス圏で推移していることからも、財務の健全性が読み取れる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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