ユミルリンク<4372>は「価値の高い情報サービスの創造と提供を通して社会に貢献し、常に期待される企業を目指す」という企業理念の下、1999年に創業した会社である。同社の事業領域は、スマートフォンの登場によって近年成長が著しいデジタルマーケティング市場。そのなかでも特に同社はメールマーケティング(メールを使って行うマーケティング活動)とSMSマーケティング(SMS:ショートメッセージサービスを利用して行うマーケティング活動)の領域において、大規模・高速配信などの強みを持つ「Cuenote(R) FC」、国内キャリア直収型を強みとする「Cuenote(R) SMS」などのメッセージングソリューションを展開している。顧客は自治体、EC企業、電気・ガスなどのインフラ企業、新聞・出版業、観光業、金融業、流通・小売業など幅広く、多くの企業のデジタルマーケティング及びDXを支援している。Cuenote(R)シリーズの契約数は1,900件を超え、東京証券取引所プライム市場・スタンダード市場上場企業をはじめとする大手企業に採用されている状況だ。
同社の業績は、非常に好調に推移してきたと言えるだろう。2008年12月期~2021年12月期の売上高と当期純利益の年平均成長率(CAGR)はそれぞれ40%、80%と非常に高い伸びを示している(2019年12月期以降のCAGRもそれぞれ15%、34%と急伸)。デジタルマーケティング市場が拡大するなかで、市場の成長率を上回り順調に業績を拡大してきたことが窺える。
同社の従業員数は112名で資本金は273百万円(2021年12月末時点)。東京本社に加えて、大阪支店、北海道オフィス、福岡オフィス、沖縄オフィスを構え、日本全国で積極的にビジネスを展開している。主力の「Cuenote(R) FC」「Cuenote(R) SMS」以外にもメールリレーサーバーを提供する「Cuenote(R) SR-S」、Webアンケート・フォームを簡単に作成することができる「Cuenote(R) Survey」、災害時にメールやSMSなどで従業員の安否を確認する「Cuenote(R) 安否確認サービス」を提供する。
1. 2021年12月期の業績概要
2021年12月期の業績は前期比で大幅な増収増益を達成し、そろって過去最高を更新した。売上高が前期比18.4%増の1,929百万円(うちストック売上が1,881百万円、スポット売上が48百万円)に伸びるなか、営業利益と当期純利益はそれぞれ同28.3%増の414百万円、同28.1%増の286百万円に急伸。経常利益も前期比22.1%増の398百万円に膨らんでいる。
好業績の要因は、主力のメール配信システム「Cuenote(R) FC」とSMS配信サービスの「Cuenote(R) SMS」の業績が拡大したことだ。「Cuenote(R) FC」に関しては、金融、通信、運輸業界などのエンタープライズユーザー(大企業顧客)や省庁などへの新規導入が進んだこと、自然・人為的災害への対応を目的とした「ディザスターリカバリープラン」が好調だったこと、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響によるメール配信数増加に伴うプランアップでの顧客当たりの契約金額の増加、月間解約率を平均0.38%と低く抑えることができたことなどが寄与した。「Cuenote(R) SMS」については、電力、金融、流通、小売などの業界への新規導入が進んだこと、新規顧客の獲得によるメッセージ配信数の急伸、SMS市場が普及期に入るなかで既存顧客のプロモーション利用が膨らんだこと、月間解約率を平均0.15%と低く抑えることができたことなどの要因が業績を押し上げた格好だ※。
※SaaSビジネスの多くは顧客から月額利用料を徴収するサブスクリプションモデルをとる。送信数などにより料金プランが数パターンあり、Eコマースやデジタルマーケティングが普及するなかで、高価格帯の料金プランに移行する傾向にある。
また、SaaSビジネスで重視される各指標も好調に推移し、前期を上回った。2021年12月期末時点における「Cuenote(R) FC」「Cuenote(R) SMS」、その他サービスのMRR(月次経常収益:毎月定期的に売り上がる収益のこと)がそれぞれ、前期比14.7%増の141百万円、同193.7%増の29百万円、同2.3%増の4百万円に伸びたほか、全シリーズ月次解約率(チャーンレート)は0.38%、NRR(売上維持率)は110.6%と好調だった。
さらに、利益率の高さにも注目したい。売上高総利益率、営業利益率、当期純利益率はそれぞれ前期比マイナス3.0ポイントの67.7%、同プラス1.7ポイントの21.5%、同プラス1.1ポイントの14.9%と売上高総利益率のみ前期を下回ったものの、その他はそろって高い利益率を達成している。SaaSビジネスは変動費の占める割合が少ない分、売上が拡大すると原価率が低下する傾向にある。今後も業績が拡大するなかで、各利益率は上昇していくと弊社は見ている。
2. 2022年12月期の業績予想
2022年12月期の業績は、売上高で前期比12.8%増の2,175百万円、営業利益で同13.4%増の470百万円(うちストック売上高が同13.0%増の2,126百万円、スポット売上高が同1.5%増の48百万円)、経常利益で同17.9%増の470百万円、当期純利益で同12.2%増の321百万円と4期連続で過去最高業績を更新することを見込んでいる。
インターネット、SNS、スマートフォンなどの普及によりデジタルマーケティング市場のさらなる拡大や2021年12月期に同社売上の85.7%を占めたメール送信サービス市場の2020~2025年度のCAGRが7.7%と高い成長(同期間のSMS送信サービス市場のCAGRも12.3%と急伸が見込まれている)であること、デジタルマーケティング拡大に伴い顧客が保有するメールアドレス数が増え、大規模・高速配信に対する需要拡大が見込まれ、金融などのミッションクリティカルな顧客層によるSaaSサービスの導入が増え、サービスの安定性、信頼性、サポート体制が重視されるなかで質の高い同社サービスの優位性が高まることなどを踏まえると、業績予想の達成は堅いと弊社は考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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