前日22日の米国株式相場はまちまち。ダウ平均は200.94ドル安の30015.51ドル、ナスダックは65.40ポイント高の12807.92ポイントで取引を終了した。追加経済対策の法案成立が確実になったことは好感されたが、さえない経済統計を受け景気回復に懸念が広がり寄り付き後、下落した。新型コロナ変異種への警戒感もくすぶり引けにかけては下げ幅を拡大。ハイテク株は堅調で、ナスダック総合指数は史上最高値を更新した。米国株式相場を受けた東京株式市場は、日経平均が昨日までの3日続落で370円下げた後ということもあり値ごろ感からの買いが先行した。しかし、その後は新型コロナ警戒や原油価格下落が嫌気され、また、ダウ平均先物が軟調なことも株価重しとなり、日経平均は一時下げに転じる場面があった。
個別では、21年5月期上半期(中間期)営業利益が前年同期比10.0%増となった日本オラクル<4716>が10%を超す大幅高となったほか、EV充電器を手掛けることからアップルのEV生産報道が手掛かり材料となったモリテック<5986>、21年5月期上半期(中間期)利益見込みを上方修正したハニーズHD<2792>、シンガポール社の建造船向け輸出エンジンを受注したと発表したジャパンエン<6016>、20年10-12月期営業利益が前年同期比9%増となりそうだと報じられたNRI<4307>が上げた。一方、21年3月期業績予想を下方修正したNTTDIM<3850>、20年12月期業績予想を下方修正した日本エスコン<8892>、業績が踊り場局面として国内証券が投資判断を格下げしたオプトラン<6235>が下げた。
セクターでは、医薬品、サービス業、電気・ガス業、水産・農林業、小売業などが値上がり率上位。一方、海運業、非鉄金属、繊維製品、ゴム製品、鉄鋼などが値下がり率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の46%、対して値下がり銘柄は49%となっている。
一昨日21日の当欄ではトランプ米大統領のレガシーづくりに絡めて、ここ最近の米国の内政・外交政策を考え、「トランプ大統領が自身の大統領任期中に対中強硬姿勢を強める理由はいくらでもある。さらにバイデン政権でもその政策は継承せざるを得なくなりつつある」と結んだ。このことをもう少し考えてみる。
米中関係とリンクするかは分からないが、来年は日本周辺が少し騒がしくなりそうな気配だ。12月9日付の当欄では、「自由で開かれたインド太平洋」について考え、その中で、英国が空母打撃群を東アジアに長期展開し、フランスも遠からず空母部隊などを派遣する計画だと書いた。さらにこの後の13日、ドイツのクランプカレンバウアー国防相が独連邦軍の艦船をインド太平洋に派遣する方針を表明したと報じられた。
ドイツは第二次世界大戦の敗戦国で、日本と同様、軍事的な行動には非常に慎重な国だ。産経新聞は「軍艦派遣は極めて異例の決定」としている。
一方、日本。13日にブラジルと各種防衛協力の前提となる「防衛協力・交流覚書」締結が報じられた。18日には、自衛隊の新たな装備として長射程の巡航ミサイルの開発を閣議決定。さらに、次期戦闘機は日本企業主導で開発すると防衛省が表明。来年度予算案の防衛費は過去最大となる見通しなど、防衛関連のニュースが相次いでいる。欧州主要国からの艦隊・艦船派遣や、「地球の裏側」のブラジルとの防衛協力、長距離ミサイル配備など、少し前には想像もできなかったことが次々と起きている。
こうした動きを映し、株式市場も少し動きが見られる。「防衛関連銘柄」と位置づけられる、細谷火工<4274>や豊和工業<6203>、石川製作所<6208>など、ここにきて今までとは違う株価推移となっている。12月9日付の当欄で「自由で開かれたインド太平洋」を取り上げた際に「事によっては近い将来の株価に影響するかもしれない話題」としたが、動きは想像以上に速い。
さて、後場の東京市場で日経平均はもみ合いとなりそうだ。前場は買いが先行したものの、その後、ダウ平均先物が軟調で東京市場の重しとなっており、今晩の米国市場の動向を見極めたいとする向きも多い。また、前場の日経平均は25日移動平均線をはさんで推移し、今後、25日線が下値支持線となるか、あるいは上値抵抗線となるかに市場の関心が向いており、ポジションを傾けにくく、やや動きがとりづらい状況になりそうだ。
(小山 眞一)
<AK>
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