第一稀元素、新中期経営計画「DK-One Next」を策定 次期社長のもと「100年企業」の基盤の確⽴を目指す
2022年3月期決算説明会
井上剛氏:みなさま、こんにちは。第一稀元素化学工業株式会社の井上でございます。本日は、当社の決算説明会ならびに中期経営計画発表会にご来場賜り、厚く御礼申し上げます。それでは、5月13日に発表いたしました2022年3月期の決算と、新中期経営計画「DK-One Next」についてご説明申し上げます。
説明の概要
本日の説明の概要です。2022年3月期の決算についてご報告し、2023年3月期の業績予想、そして、今期よりキックオフいたします新中期経営計画「DK-One Next」の内容を説明します。
2022年3月期 連結決算の概要
2022年3月期実績から連結決算の概要です。売上高は、コロナ禍からの経済回復が進む欧米市場が需要の回復を牽引するかたちとなり、主力の自動車排ガス浄化触媒材料をはじめとする車載関連素材、歯科材料、産業用構造部材などが堅調に推移しました。
その結果、販売数量は前期を18.2パーセント上回り、売上高は25.1パーセントの増収となりました。
営業利益は、生産効率化、販売価格の上昇、操業度の上昇などにより、コロナ禍以前の水準を上回りました。加えて、営業外収益として為替差益を計上したことにより、経常利益では増益幅がさらに拡大しました。
しかし、ベトナムの鉱物事業会社への投資に関する特別損失の計上により、親会社株主に帰属する当期純利益は増益幅が縮小しました。
原料市場価格の状況
主原料市場価格の状況です。ジルコニウム原料は、主な鉱石であるジルコンサンドの供給不足の影響を受けて高止まりしています。レアアース原料はセリウム原料が引き続き低調であるのに対し、ネオジム、プラセオジム原料は磁石需要の増加等により高値で推移しています。
販売実績<用途別推移>
用途別売上高の四半期推移です。触媒用途は、世界の自動車販売台数の回復を受け、前年下半期から引き続きコロナ禍以前の水準を上回り、前期比21.1パーセントの増収となりました。
電子材料酸素センサー用途は、半導体などの部品不足から、最終製品の生産調整の影響を受けたものの、コロナ禍でも需要が堅調だった医療機器、家電、通信機器に加え、自動車販売台数回復と電装化の進展で、圧電素子やMLCCなどの電子部品用途で売上高を伸ばしました。
二次電池材料は、電動車市場の成長に伴う需要増に加え、新規採用が計画どおりに進捗し、車載電池の多様化の影響を受け、減収となった前期を大幅に上回りました。
ファインセラミックス用途は、先進諸国で経済活動が再開されたため、歯科材料や産業用構造部材の需要回復が顕著になり、増収傾向が続いています。耐火物・ブレーキ材についても、自動車販売台数の回復と原料価格の高騰に伴う販売単価の上昇により、コロナ禍以前の売上高を上回りました。
販売実績<地域別推移・四半期ベース>
新型コロナウイルス感染症拡大が当社グループの業績に与えた影響は、すべての地域で解消しつつあり、売上高は順調に回復しています。アジア・北米地域では、販売子会社を通した在庫販売が概ね軌道に乗り、コロナ禍から続くサプライチェーンの混乱による需要変動が緩和され、経済回復に伴う需要を確実に取り込むことができました。
営業利益増減の要因
営業利益の増減要因を前期と比較したグラフです。生産効率化、販売価格の上昇、操業度の上昇、販売数量の増加、為替影響、関係会社損益などによる増益要因が、原料市場価格の上昇、販管費の増加、減価償却費の増加による減益要因を上回り、総合計では前期より17億5,300万円の増益となりました。
営業外損益と特別損益
営業外収益として、当社の外貨建資産やベトナム子会社の外貨建債務の時価評価による為替差益など、25億4,900万円を計上しました。特別損失として、ベトナムの鉱山投資において、株式譲渡契約に基づく長期前払金の貸倒引当金、鉱物の売買契約に基づく前渡金の評価損など、24億6,500万円を計上しました。
貸借対照表
貸借対照表です。サプライチェーンの混乱に備えた原料在庫の積み増しと、原料在庫価格の上昇により、棚卸資産が増加しました。また、江津事業所に検査棟を新設し、大阪事業所の再開発と、ベトナム子会社VRECの工場拡張工事が進捗したことにより、固定資産が増加しました。資産合計では、前期末と比較して17億8,600万円増となりました。
負債については、棚卸資産の増加に充当する短期借入金の増加などにより、7億5,400万円増、純資産は利益剰余金の増加などにより、10億3,200万円増加しました。これらの結果、自己資本比率は53.7パーセントとなりました。
キャッシュフロー
キャッシュフローです。営業活動によるキャッシュフローは、税引前当期純利益、減価償却費、棚卸資産の増加などにより、32億3,100万円のプラスとなりました。
投資活動によるキャッシュフローは、固定資産の取得、関連株式の追加取得などにより、42億1,900万円のマイナス、財務活動によるキャッシュフローは、短期借入金の増加、長期借入金の減少などにより、800万円のマイナスとなりました。
2023年3月期 業績予想
2023年3月期の業績予想です。前提として、為替は1ドル114円を想定しています。通期の連結業績は、長引くサプライチェーンの混乱による最終製品の生産調整の影響を受け、販売数量は前期比で1.7パーセント増加に留まるものの、原料価格の上昇に伴う販売単価の上昇等により、売上高は17.5パーセントの増収となる見通しです。
営業利益は、販売数量の増加と付加価値の向上により増益となる見通しです。経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益も、営業利益の増益幅を維持すると予想しています。
これらの状況を踏まえ、2023年3月期の連結業績予想は、売上高345億円、営業利益48億円、経常利益48億円、親会社株主に帰属する当期純利益は39億円となる見通しです。
用途別売上計画
用途別売上計画です。自動車触媒、酸素センサー、ブレーキなどの車載用途では、半導体に代表される部品不足や物流の混乱など、世界的なサプライチェーンの問題が続いていることを考慮し、販売数量の増加は限定的と見込んでいますが、原料価格の上昇に伴う販売価格の上昇により、増収を予想しています。
一方、電子材料用途は市場成長が進む二次電池用途、ファインセラミックス用途は燃料電池用途や構造部材で、それぞれ販売数量の増加による増収を見込んでいます。
営業利益増減の要因(予測)
2023年3月期の営業利益予想の増減要因を、前期と比較したグラフです。販売価格の上昇、在庫販売効果などの増益要因が、原料価格の上昇、販管費の増加、減価償却費の増加などの減益要因を上回り、2023年3月期の営業利益は48億円を見込んでいます。
業績及び配当推移(実績と計画)
こちらの資料は、旧中期経営計画「DK-One Project」をキックオフした、2014年3月期から2023年3月期までの業績および配当の推移です。
当社の利益配分についての考え方は、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続していくことを基本方針としています。この方針に基づき、近年ではコロナ禍に見舞われた2021年3月期を除き、増配を継続しています。
2023年3月期の配当については新中期経営計画で定めた株主還元方針を基本とし、業績予想の内容を踏まえて、中間配当16円、年間配当32円を想定しています。
旧中期経営計画の進捗について
旧中期経営計画「DK-One Project」の進捗状況をご報告します。2023年3月期を最終年とする旧計画を、今回の業績予想に基づいて評価すると、すべての項目で新型コロナウイルス感染症の影響を考慮した修正目標を達成する見込みです。
以上で、2022年3月期の決算説明ならびに2023年3月期業績予想についての説明を終了させていただきます。
新中期経営計画の開始
続いて、2023年3月期から2032年3月期を対象期間とする新中期経営計画「DK-One Next」についてご説明します。当社グループは、創業以来「世に価値あるものを供給し続ける」を軸とした経営理念に基づき、ジルコニウム化合物の開発・供給を通じて、社会課題の解決に取り組んできました。
足元の自動車販売台数予測は、新型コロナウイルス感染症拡大前の予測に比べ、大きく減少しています。また、自動車業界では、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを活発化させており、それに伴い自動車電動化へのシフトが加速するなど、当社グループを取り巻く事業環境は大きく変化しています。
当社グループは、このような状況のもと、主力の自動車排ガス浄化触媒材料で成長の原資を確保しつつ、次世代の事業の柱となる分野へ早期に経営資源を振り向けるため、旧中期経営計画「DK-One Project」を1年前倒しして終了し、新しい中期経営計画「DK-One Next」を今期からスタートさせることとしました。
経営理念・ビジョン・中期経営方針
新しく中期経営計画を策定するにあたり、経営理念のコンセプトである「価値あるもの」「価値ある⼈⽣」「価値ある職場」を再認識し、将来のビジョンと中期経営方針を定めました。
「価値あるもの」とは、社会課題の解決に貢献する独創的で付加価値の⾼い製品のことです。次に、「価値ある人生」とは、⾃⾝の夢や理想の実現に向かって成⻑する公私ともに充実した⽣き⽅のことです。そして、「価値ある職場」とは、ジルコニウムのトップメーカーの⼀員であることに誇りを持ち、「キゲンソらしさ」を体現する仲間がいる職場のことです。
我々は「稀な元素とともに、『100年企業』へ」をビジョンとして掲げており、この「100年企業」には2056年に創業100期を迎える企業、そして永続的に成長を続ける企業という2つの意味を込めています。そのため中期経営方針は、「新たな事業を創出し続け、今後10年に起こる大きな環境変化を乗り越える」と定めており、100年企業への足掛かりを築きます。
新中期経営計画「DK-One Next」のコンセプト
「DK-One Next」のコンセプトです。「DK-One Next」では、10ヶ年の対象期間を前期、中期、後期に分け「事業領域と収益の拡⼤」と「100年企業の基盤の確⽴」に取り組みます。
「事業領域と収益の拡⼤」では、半導体・エレクトロニクス、エネルギー、ヘルスケアを戦略分野と位置づけ、前期の4ヶ年では、これらの分野へ製品を展開しているファインセラミックス・⼆次電池・⽔素関連向けの売上を確実に増⼤させます。
「100年企業の基盤の確⽴」では、「新規事業の創出」「収益構造の改⾰」「⾰新的なものづくりの実現」「成果を出し続ける組織づくりの実践」「キゲンソらしさのさらなる醸成」「サステナビリティへの取り組み」の「6つの柱」で環境変化に適応し、体質の強化を図っていきます。
取り組むべき「6つの柱」と方向性
スライドでは取り組むべき「6つの柱」を掘り下げています。「新規事業の創出」では、戦略分野を中心にジルコニウム化合物の開発と市場開拓を進め、特定産業に依存しない収益基盤を構築します。「収益構造の改⾰」では、2026年3月期までにROIC6.0パーセント以上の達成を目標として、意識と行動の変容を促していきます。
「⾰新的なものづくりの実現」では、製品開発のプロセスを変革することで、よりスピーディな製品の市場投入と付加価値の向上を目指します。また、DXなどを活用することで省人化や自動化を実現し、生産性を高めるとともに、多様な働き方ができる職場を目指していきます。
「成果を出し続ける組織づくりの実践」では、持続的な成長を支える組織構造と制度の変革を進めます。初年度となる2023年3月期に、国部次期社長を責任者とする新規事業創出チームを発足させ、従来の方法にとらわれず、スピーディに収益化までを実現していきます。また、サステナビリティ推進室を設置し、当社グループの持続的な成長と持続可能な地球環境・社会の実現を両立していきます。
「誰も手をつけていないからこそ、我々がやる」は当社の創業者の言葉です。「キゲンソらしさのさらなる醸成」では、このチャレンジ精神を受け継ぎグループ全体に浸透していきたいです。この「キゲンソらしさ」とは、チャレンジするメンバーを周囲が全⼒で⽀援するような、多様な働き⽅や価値観を尊重するという当社グループの伝統的な風土です。
「サステナビリティへの取り組み」では、社会課題に適応した製品・サービスを提供することはもとより、温室効果ガスの削減、資源の有効活用、人材の国際化と多様化の推進など、地球環境・社会と真摯に向き合っていきます。
事業ポートフォリオの変遷
スライドに当社グループの事業ポートフォリオの推移を示しています。戦略分野である半導体・エレクトロニクス、エネルギー、ヘルスケア分野の事業を拡大し、「DK-One Next」の最終年である2032年3月期には、現在の主力分野である自動車排ガス浄化触媒用途に匹敵する事業規模にまで育てていきます。
自動車排ガス浄化触媒の市場環境と販売見通し
スライドに、世界の自動車市場と当社グループの販売数量の見通しを示しています。当社の試算では、環境規制の強化に伴い、近年、自動車1台あたりに使用される貴金属の量が増加しています。
また、昨今の社会情勢を背景に貴金属の価格が高騰しており、効率的に貴金属の機能を引き出す、高機能な担体及び助触媒への需要が高まる見通しです。さらには、2023年から2027年ごろにかけて、各国の地域における環境規制の強化に伴い、自動車1台あたりに装着される触媒コンバータの容積および数が増加する見通しです。
これらの市場拡大による需要の増加に加え、当社グループの素材の用途がもっとも多岐にわたるハイブリッド車の比率が高まることが予想されています。成長を続ける自動車排ガス浄化触媒用途で、成長の原資となる収益を確保していきます。
戦略分野の市場環境と取り組み
戦略分野では、これまで主力分野で培った技術とネットワークを最大限に活用するとともに、経営資源を重点的に投入します。
カーボンニュートラルに向けた取り組みの本格化に対し、燃料電池、水電解、水素生成などの水素関連ビジネスにフルラインナップで臨みます。電池搭載車の増加に対しては、事業環境の変化をビジネスチャンスと捉え、二次電池材料をはじめとする電動車向け素材への事業を拡大します。
DX・スマート化の進行および5G・IoTの普及に対しては、急速に進む自動車の電装化に伴う需要を取り込むことで、電子部品用途の売上高を確実に伸ばしつつ、半導体分野への展開を進めていきます。
先進国・地域における高齢化に対しては、ジルコニウム化合物の高い耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性と生体適合性を活かし、歯科材料を足掛かりとしてヘルスケア分野への展開を進めます。
主な経営数値・方針(2026年3月期)
「DK-One Next」の前期4ヶ年で目指す経営数値と方針をご説明します。前期の最終年となる2026年3月期の連結業績目標は、売上高400億円、営業利益40億円、EBITDA90億円、ROIC6.0パーセント以上です。目標設定の前提条件として、2021年9月時点の原料市場価格と為替を用いています。
キャッシュフローの計画は、4ヶ年累計の投資キャッシュフローと配当金の合計を、営業キャッシュフロー以内とします。株主還元方針は、業績と戦略分野への投資推進などを総合的に勘案しながら、積極的に利益を還元することを基本とし、配当性向30パーセントを目指します。
主な投資(2023年3月期~2026年3月期)
前期で計画している投資の内訳です。4ヶ年で累計215億円の投資を計画しています。その内訳としては、まず、戦略分野への増産対応やイノベーションの推進を目的とし、「新規事業の創出」に100億円の投資を予定しています。
次に、持続可能な原料調達およびカーボンニュートラルへの対応を目的とし、「サステナビリティへの取り組み」に50億円の投資を予定しています。そして、生産性向上と業務効率化を目的とし、「革新的なものづくりの実現」と「収益構造の改革」に25億円の投資を予定しています。これらの投資計画には、旧中期経営計画より引き継いだ実行中の投資を含んでいます。
営業利益増減の要因(中期計画)
「DK-One Next」の前期4ヶ年における営業利益の増減要因を、2021年9月時点の原料市場価格と為替を用いて分析しています。計画と実績の差異は主に原料市場価格の高騰と為替の変動に起因するものです。
「DK-One Next」では、2023年3月期の営業利益予想が2026年3月期の目標値を一時的に上回る計画でしたが、中長期的には、原料市場価格ならびに為替が2021年9月時点の水準へ落ち着くと仮定した計画になっています。売上高を伸ばすことで、成長の原資となる収益を確保する一方で、減価償却費、研究開発費、販管費の増加を見込んでいます。
当社グループは次の10年においても、ジルコニウムの可能性を幅広く追求することにより、素材の供給を通して、地球環境とすべての人々の健康、そして次世代のエネルギー社会の実現に全力で貢献をしていきます。今後とも変わらぬご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
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