―動き出した学校の新しいカタチ、デジタル化加速で課題解決へ―
文部科学省が2019年12月に打ち出した「GIGAスクール構想」に基づき、20~21年度に「児童・生徒1人1台の学習用端末」と「校内通信ネットワーク(校内LAN)」が集中的に整備された。ただ、教育現場での情報通信技術(ICT)の利活用が進むにつれ、「通信速度の推奨値を満たしている学校が少ない」などさまざまな課題が浮上している。また、端末の導入から数年が経ったことで故障が増加し、バッテリーの耐用年数が迫っていることから更新や予備機の配備も求められている。そこで新たなキーワードとして関心が高まっているのが「NEXT GIGA」で、関連銘柄に目を配っておきたい。
●更に進化する学校のICT環境
NEXT GIGAとは、GIGAスクール構想の第2期(24~28年度)のことを指し、今年1月に文科省から「GIGAスクール(第2期)」に関する最低スペック基準や補助要件などが各都道府県の教育委員会宛てに通知されている。
同省はNEXT GIGAを念頭に置いた端末の更新に向け、23年度の補正予算に「GIGAスクール構想の推進~1人1台端末の着実な更新~」として2661億円を計上。今後5年程度をかけた端末の計画的な更新を進めるための予算とともに、端末の故障に備えた予備機の整備予算が含まれている。また、教育現場でデジタルトランスフォーメーション(DX)を組織的に支援する「GIGAスクール運営支援センター整備事業」に35億円、最適な通信ネットワーク環境を実現する「ネットワークアセスメント実施促進事業」に23億円を割り当てている。
加えて、24年度予算ではGIGAスクール構想の着実な推進と学校DXの加速化に39億円が計上されており、内訳はGIGAスクール運営支援センター整備事業(5億円)、GIGAスクールにおける学びの充実(3億円)、次世代の学校・教育現場を見据えた先端技術・教育データの利活用推進(1億円)、次世代の校務デジタル化推進実証事業(3億円)、学習者用デジタル教科書の導入(17億円)、教育DXを支える基盤的ツールの整備・活用(9億円)、教育データサイエンス推進事業(1億円)となっている。
社会全体のデジタル化が想定以上の速度で進むなか、複雑で多様な課題を解決できる人材を育成するためには教育DXの推進が必要不可欠で、NEXT GIGAを支える企業のビジネス機会が広がりそうだ。
●GIGA第2期を支える銘柄群
直近ではKDDI <9433> [東証P]が「GIGAスクール構想(第2期)」の実現を支援する「KDDI GIGA基本・応用パッケージ」の申し込み受け付けを開始すると発表。このパッケージは3つのOS(Windows、ChromeOS、iPadOS)と各種メーカーの端末(パソコンやタブレットなど)に対応し、自治体や学校の要望に応じた利用者のID管理から英語・キャリア学習まで幅広いサービスを一気通貫で提供する。
電算システムホールディングス <4072> [東証P]とNEC <6701> [東証P]は、教育DX分野及びGIGA第2期に関して連携を強化し、協業を開始することで合意している。電算システムが開発したGoogle Classroom用のWebアプリケーション「Ra:Class(ラクラス)」と、NECの学校向けデータ利活用サービス「学びの様子見える化サービス」を統合することでサービスを強化、より高次な資質・能力の育成と1人1台端末の活用について検討を行うことで、教育DX分野での総合的なサービスの提供を目指す構えだ。
デジタルアーツ <2326> [東証P]はGIGA第2期を見据え、4月からWebセキュリティー製品「i-FILTER」の学校向け機能を強化して提供を開始。文科省の学習用端末の最低スペック基準に対応するため、端末の利用状況をより分かりやすく可視化するなどのアップデートを図ったことで持ち帰り学習などの詳細な利用状況が一目で確認できるようになり、管理者の負担が大幅に軽減できるという。
このほかでは、子会社が使用済みGIGAスクール端末の回収サービスを行っているリネットジャパングループ <3556> [東証G]、協働学習支援ツールや運用支援ツールを提供するチエル <3933> [東証S]、グループ会社がネット接続の利便性を高める無線LANアクセスポイントなどを展開する古野電気 <6814> [東証P]、教育機関を対象にネットワーク環境の分析・調査を実施する「ネットワークアセスメントサービス」を提供するアライドテレシスホールディングス <6835> [東証S]などが関連銘柄として挙げられる。
●教育総合展に出展する企業にも注目
また、5月8~10日に東京ビッグサイトで開催される「EDIX(教育総合展)」に出展する企業にも注目したい。この展示会は教育用最新ICT製品や教材、教育施設のリニューアル、学校向け設備・備品、教育サービス、企業向け教育ソリューションなどが一堂に会するもので、国内最大級とされる。
テクミラホールディングス <3627> [東証S]子会社のネオスは、「人工知能(AI)による校務DX化や個別学習支援における活用方法」「マネタイズできるデジタルドリルプラットフォームの紹介」「人気キャラクターやゲーム要素を盛り込んだ子どもが楽しく学べる学習アプリ」「GIGAスクールに対応した教科書・副教材など書籍連動のデジタル教材の創造」の4つのテーマで展示する予定だという。
大和コンピューター <3816> [東証S]は、塾・予備校・専門学校・各種スクールなどの運営管理の課題を解決し、より良い教育環境を提供するクラウドサービス「Platinum School(プラチナスクール)」と、プラチナスクールと連携可能なオンラインレッスンシステム「Lesson-Link(レッスンリンク)」を紹介する見通し。システム ディ <3804> [東証S]のブースでは小学校から大学まで利用できる学校業務・校務支援パッケージソフトや保護者向けWebサービスなどが展示される見込みだ。
これ以外では、NECネッツエスアイ <1973> [東証P]、ヤプリ <4168> [東証G]、日本システム技術 <4323> [東証P]、HENNGE <4475> [東証G]、スプリックス <7030> [東証S]、ネットワンシステムズ <7518> [東証P]などが出展を計画している。
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