オロ<3983>は、クラウド型ERP※の開発・販売とデジタルマーケティング支援の2事業を行うITベンチャーである。同社の代名詞ともなっているのがクラウドサービスにより提供されるERP※パッケージ「ZAC Enterprise」。主に大企業で普及するERPを、中堅・中小企業向けにクラウドベースで実現した画期的な商品・サービスである。デジタルマーケティング支援では、イオン<8267>グループを始めとする大企業向けに、WebサイトやSNSの構築、システム開発からWeb広告運用までをワンストップで提供する。2017年3月に東証マザーズに上場、2018年3月には早くも東証1部に昇格し、成長を加速させている。開発及び営業の拠点としては、国内5ヶ所、海外7ヶ所、従業員数337人(連結、2017年12月末)の、世界を見据える専門家集団である。
※ERPとはEnterprise Resource Planning(統合基幹業務システム)の略称で、企業の資産である人・モノ・カネ・情報を一元管理し、経営の効率化を図るためのツールである。
1. 事業概要
ビジネスソリューション事業の主力商品はクラウド型のERPパッケージ「ZAC Enterprise」。企業内における販売・購買・勤怠などの各種業務処理の効率化を支援する統合基幹業務システムであり、多数の業種において必要とされた機能や商習慣に対応するための機能(パラメータ)が日々追加・共有され、システム自身の持続的成長をする点に特長がある。既存顧客からの収入比率が59%(2017年12月期)と高く、売上高は安定して積み上がる傾向にあり、導入時のカスタマイズが少ないため収益性が高い。過去3年間、当事業の売上高は順調に成長しており、営業利益率(2017年12月期)は36.2%に達する。
コミュニケーションデザイン事業は、主に大企業を対象に組織・企業のコミュニケーション戦略の立案、実行を支援する。市場調査・分析、戦略策定・KPI策定などの上流設計からWebサイトやSNSの構築・運用、Webシステムの構築・運用などの実装、アクセス解析やWeb広告の運用などまでワンストップフルサービスを行うことができる。また、国内のニアショア拠点(宮崎、札幌)、海外のオフショア拠点(中国・大連)と連携してコストマネジメントを強化し、収益性の高い内製体制を構築している点も大企業からの信頼を獲得するポイントとなっている。既存顧客からの運用及びスポット業務が売上構成比で82%を占め安定感がある。過去3年間のコミュニケーションデザイン事業の業績は、売上高は堅調に推移しているものの、営業利益率は振れ幅が大きい。
2. 業績動向
2017年12月期通期の連結業績は、売上高が前期比15.8%増の3,910百万円、営業利益が同25.9%増の858百万円、経常利益が同19.1%増の840百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同24.6%増の574百万円と増収増益の好決算となった。売上高は、ビジネスソリューション事業、コミュニケーションデザイン事業ともに順調に推移。ビジネスソリューション事業においては、新規上場効果も寄与し新規顧客獲得が好調だった。稼働ライセンス数も12万を突破し伸び続けている。コミュニケーションデザイン事業においては、第4四半期に既存顧客との取引拡大により想定を超えて伸長した。売上原価及び販管費は増加したが、増収効果が上回り、比率としては減少した。結果として各利益ともに過去最高を更新した。
2018年12月期通期の連結業績は、売上高が前期比16.7%増の4,564百万円、営業利益が同6.9%増の918百万円、経常利益が同9.0%増の915百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同9.9%増の631百万円と4期連続の増収増益を予想する。売上高に関しては、上場効果により引き合いの質や量は確実に向上しており好調の原動力となっている。ビジネスソリューション事業では働き方改革が進むなかで、間接業務の削減に寄与する主力の「ZAC Enterprise」にも追い風が吹く。コミュニケーションデザイン事業では、前期第4四半期の自動車会社向け大型案件受注の継続部分も織り込まれた。利益に関しては、各利益ともに1ケタ台の増益を予想する。成長のための事業投資を継続する方針であり、人件費を主体とする費用が増加する見込みだ。全般に妥当性の高い計画と判断する。
3. 成長戦略・トピック
同社は2017年3月に東証マザーズに上場し一定のメリットを享受してきた。同時に、更なる社会的信用・知名度の向上や人材確保などにより経営基盤を強化することを目的に、可能な限り早期に東証1部への市場変更を目指すことを宣言し準備をしてきた。その結果、マザーズ上場からわずか1年足らずの2018年3月26日に東証1部への昇格が承認された。今後は、営業面で有利となるほか、人材確保において、M&A情報の入手などにおいてもメリットが生まれてくるだろう。
4. 株主還元策
同社は、企業価値を継続的に拡大し株主に利益還元を行うことを重要課題と位置付けている。これまでは株主への長期的な利益還元を実現するため、内部留保を充実させ、積極的な事業展開を行うことを優先してきたが、2017年12月期からは好調な業績を背景に配当を実施する方針に転換した。2017年12月期の配当は年15円、配当性向は20.3%。2018年12月期も配当年15円を予想する。
■Key Points
・顧客企業のデジタル化を内(基幹業務システム)と外(Webマーケティング等)から支援するITベンチャー
・2017年12月期はビジネスソリューション事業、コミュニケーションデザイン事業ともに好調で過去最高売上・利益を達成
・東証1部にスピード昇格、今後ビジネスソリューション事業の海外展開も視野
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)
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