カナミックネットワーク、子育て支援と高齢者支援の両輪で、地方創生と若者が働きやすいまちづくりを目指す
1-1.カナミックグループ概要
山本拓真氏(以下、山本):本日は、カナミックネットワークの事業の紹介から業績などをご説明いたします。よろしくお願いいたします。
まず、会社概要です。現在、カナミックグループは3社で構成されています。一番トップの親会社となるカナミックネットワークは2000年に創業した会社で、東京証券取引所プライム市場に上場しています。
主な事業領域は、医療・介護・子育て分野におけるクラウドとプラットフォームサービスの提供です。ITの会社だとご認識いただければと思います。
子会社として、中国の大連市にソフトウェア開発を手がける会社と、24時間営業の「URBAN FIT24」を運営するアーバンフィットの2社があります。従業員数は、グループ全体で181名です。
1-2.社長紹介
山本:自己紹介です。私は1978年生まれの京都府出身で、現在45歳です。2000年の就職氷河期の頃に富士通に入社し、インターネット事業部で自社プロダクトの開発や受託開発などを経験しました。
その後、2005年にカナミックネットワークに入社し、2011年から東京大学高齢社会総合研究機構や国立がんセンターの研究員として、国のプロジェクト等に携わることを経験しました。
2014年からカナミックネットワークの社長に就任し、2016年に東証マザーズ、2018年に東証一部に上場しました。昨年に東証プライム市場に移行し、現在は厚生労働省や総務省のさまざまなガイドライン作りの委員会の委員なども行っています。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):ざっくりとした変遷をおうかがいしましたが、創業のきっかけを教えてください。
山本:スライドに記載のとおり、私はカナミックネットワークの創業時は富士通にいました。私の父親が創業者で現会長ですが、もともとは広告業界のディレクターやカメラマンで、タレントを撮ったり、みなさまも見ているCMを作ったりしていました。
介護保険のテレビCMを作ったのは会長です。「来年から介護保険制度が始まります」という全国向けのテレビCMや、自治体に介護保険制度の説明をするものを作るお仕事をしていました。
介護という新しい市場ができて、新しい職種が生まれましたが、超高齢社会では、この新しい市場の中でインターネットのプラットフォームを作れば、そこがメディアになるのではないかと目をつけて創業したのが、カナミックネットワークです。
家業ですので、私も創業時からずっとお手伝いしながら見ていました。2005年に合流してからはシステムをどんどん大きくしていくところに携わり、跡を継いで上場したという流れです。
1-3.Purpose & Values
山本:当社の「Purpose & Values」です。どのような価値を社会に生み出すかという観点では、我々は「人生を抱きしめるクラウド」というキャッチコピーを掲げています。まさに、生まれてから亡くなるまでの人の幸せを支えるようなクラウドサービスを提供したいと考えています。
日本および世界が迎える超高齢社会をクラウドプラットフォームでDXすることで、人類がウェルビーイングで持続可能な明るい未来を築くことに貢献するのがカナミックネットワークだと覚えていただければと思います。
ちなみに「カナミックネットワーク」という名前は、「介護(カイゴ)」「活性化(ダイナミック)」「ICT(ネットワーク)」を組み合わせた造語です。介護業界をいきいきと活性化させるようなICTネットワークを提供するという意味です。
1-4.グループ構成と事業シナジー
山本:先ほどお伝えしたとおり、カナミックグループは3社で構成されています。それぞれが事業シナジーを出しながら、リアル店舗サービスやITサービス、システム開発力などを掛け合わせているところが特徴です。
カナミックグループのお客さまは医療・介護法人や、ジムであれば健康寿命延伸を実現していく市民の方々になりますので、基本的には全体的にヘルスケア銘柄だと覚えていただくとわかりやすいかと思います。
1-5.カナミックビジョン2030
山本:中期経営計画として「カナミックビジョン2030」を出しています。「Phase1」は、クラウドでユーザーをたくさん増やしていくところです。医療・介護・子育て分野におけるさまざまなユーザーを獲得し、我々のプラットフォームを利用する方を増やしていきます。
「Phase2」では、プラットフォームにさまざまなサービス群を追加していきます。現在、BtoB、BtoBtoCとして、インターネット広告や決済、AI、IoT、人材のマッチングなど、さまざまなサービスをつなげていくことを進めている最中です。
単なるSaaSサービスというよりは、さらに付加価値がのったプラットフォームサービスに進化させようとしています。
さらに、現在は「Phase3」のブランディング期でもあります。我々は社会の裏側で医療・介護を支える位置でしたが、もう一歩進んで、toCサービスも含めて進めていくことをアーバンフィットとともに取り組んでいます。2025年からは「Phase4」の海外展開を行っていきたいと考えています。
2-1.私たちの目指すところ
山本:ビジネスモデル等をご説明します。我々は地域やまちづくりに一番に取り組んでいきたいと考えています。医療・介護・子育てにおける「多世代包括ケア」と呼んでいますが、高齢者支援と子育て支援の両輪を支えていかないといけないと思っています。
昔は子どもがいる世代のさらに上に親世代がいて、その上におじいちゃん・おばあちゃんがおり、4世代で支えていました。しかし、晩婚化と高齢出産が増え、子育て中に介護を支えないといけない社会になってきています。これを「ダブルケア」と言います。つまり、今までの価値観だけで進んでいては、結局、若者が働けない社会になってしまいます。
子育てや介護のために仕事を辞めなければいけない方がたくさんいらっしゃいますので、そのような社会にならないように、地方創生をしつつ若者が働きやすいまちづくりをしていくために、子育て支援と高齢者支援の両輪を支えるのがカナミックネットワークのお仕事です。
それを支える業務システムを、インターネット経由でSaaSサービスとして提供しています。そこに先ほどお話しした広告やフィンテック、AI、IoT、マッチングのシェアリングエコノミーなどのサービスを組み合わせていくのが、我々の事業モデルです。
2-2.医療介護クラウドサービス
山本:スライドの図がわかりやすいかと思いますが、カナミックネットワークのシステムは他社と何が違うのかと言いますと、特許を持っている仕組みがあります。
我々のシステムは、2階層に分かれた仕組みになっています。1階層に関しては、まさに現場で使っていただく介護業務システムです。これは地域に点在する法人ごと、事業所ごとにソリューションしていくようなSaaSのサービスです。
ここに2階層の情報共有システムが付いています。平たく言いますと、医療・介護従事者が法人の幅を超えて、実際に患者さまの情報を共有できるようなプラットフォームを提供しています。そのような中で、専門的な情報群を共有するサービスになっています。
2階層と1階層が融合しているところが特徴的で、特許を持っているところです。2階層は地域全体に面で導入しますので、自治体、地域包括支援センター、医師会などに導入しています。そうすると、地域のみなさまが(連携機能を)無料で使えます。
まず、地域全体に面で導入した後に、地域の医療・介護法人は無料で2階層だけを使える状態になります。さらに、介護業務システムを使うとすべてがシームレスにつながっていきます。地域ソリューション、ドミナントソリューションを行っているのが、当社のシステムの大きな特徴です。
坂本:クラウドプラットフォームでサービスを提供しているということですが、クライアントから要望などがあれば、カスタマイズして提供することも可能なのでしょうか? それとも、決まったものをそのまま提供するかたちでしょうか?
山本:基本はパッケージですが、我々のユーザーは介護業界の中堅・大手、大きな自治体、医師会などたくさん入っていますので、実はかなりカスタマイズできるように組み上げています。ですので、1階層や2階層にカスタマイズを加えている方がそれぞれたくさんいらっしゃいます。
坂本:臨機応変に対応できるのですね。
山本:おっしゃるとおりです。そこは開発力を有していますので、パッケージだけではなく、カスタマイズもできるというのも特徴ではあります。
2-3.医療介護クラウドサービス 1階層2階層ソリューション
山本:我々のソリューションがどのように広がっていくのかについてです。一般的なSaaSサービスとはやや違うかと思っています。
一般的なSaaSサービスは、広く広めるために広告宣伝費をかなり投入し、赤字になってでもトップラインを伸ばすというかたちで、PSR的な考え方で伸ばしていくところが多いと思います。
我々は、実はあまり広告宣伝費をかけていません。ここが大きな違いで、先ほどお話ししたとおり、「STEP.1」はいわゆる現状の社会でよくあるパターンです。つまり、法人ごとや事業所ごとの都合で、いろいろなソフトを使っています。
この点はどの業界でも同じだと思いますが、医療・介護だけは少し変わった業界なのです。どのようなことかと言いますと、患者さまや要介護者に対して医療サービスを提供する会社と、介護サービスを提供する会社と、障がい者サービスを提供する会社などがあり、まったく違う法人が同じお客さまにサービスします。
ここに関して法令上、「最低でも月1回の情報共有、できれば適時変化があった時に情報共有してください」となっています。それができないと、保険の請求(レセプト)が通らなくなってしまいます。
情報共有は、電話、郵送、FAXで行っています。これを聞くと、「医療・介護業界は遅れているな」と思う方がいらっしゃるかもしれませんが、個人情報であり、なおかつ競合他社と顧客情報を共有するというもので、実はどの産業でも行っていません。
例えばトヨタ自動車と日産自動車が顧客情報を共有したり、富士通と日立製作所とソニーが顧客情報を共有したり、そのようなソフトはニーズがないと思います。しかし、医療・介護業界では実は必要なものです。それをできるようにしたため、我々が特許を取れたことが差別化要因になっています。
ですので、先ほどお話ししたとおり、自治体や医師会に契約していただき、地域の方が無料で2階層だけを使えるようになるのが「STEP.2」です。つまり、電話・郵送・FAXではなく、クラウドで情報共有することで、かなり効率化されます。
しかし、いろいろなソフトを使っていることに加え、情報共有も行わないといけないのでは、二度手間になります。1階層のソフトも当社のものに変えると、一度に全員にすべてがつながり、ドミナントを確立できます。
ですので、営業戦略としては、面を取り、無料ユーザーを増やし、有料化していくことで、ユーザーをどんどん獲得しています。
坂本:競争優位性について、特許のお話もありました。競合として、2階層に分けて事業を展開している会社や、1階層だけ、2階層だけを展開している会社はどのくらいありますか?
山本:地域連携については、それほどたくさんの競合はいない状況です。1階層については介護ソフトを展開しているところが約100社あります。しかし先ほどお話ししたとおり、保険請求などに特化しているソフト群が多いため、地域連携できるソフトを提供している会社はありません。
両方に取り組んで融合しているのは当社のみで、2階層だけ展開しているところ、1階層だけ展開しているところがあると認識していただければと思います。
2-4.医療介護クラウドサービス:介護業務システム 1階層
山本:2階層で無料ユーザーを有料化していくところで考えますと、1階層のソフトがかなり有能でないといけないことがおわかりいただけるかと思います。
ここも当社の非常に強いところで、先ほど少しお話ししましたが、当社は業界の中堅・大手など事業所数がかなり多いところに導入していただいており、かなり多機能であるところが大きな差別化要因になっています。
一般的な介護ソフトには、介護に必要な法定帳票を作って保険請求、レセプトを行うのが基本的な機能として入っています。
ただし、営業活動でどれくらいの売上が取れるかの管理や、法定帳票を作って地域連携して効率化するところ、保険請求した後の人事・勤怠・給与計算のところ、売上として上げたものの債権管理、日々のリアルタイムな経営管理などが一気通貫につながっていないと、事業経営としては成り立たないところがあります。
現場ベースのものだけというよりは、介護事業全体を支えるようなクラウドパッケージになっているところが、非常に大きな差別化要因になっています。
坂本:これだけ広い範囲のシステムをいきなり作るのはけっこう難しいかと思います。介護から作られたイメージを持っていますが、最初はどこから作られたのかを教えてください。
山本:一番初めに作ったのは、スライド青枠の他社ソフトのできる範囲の法定帳票を作るところ、請求するところ、それに加えて地域連携ができるところです。基本的にはこの3つで構築し、勤怠・給与・債権管理・経営分析・営業支援と多機能化していきました。
今でもどんどん機能を増やしており、かなり細かく周辺機能を加えていくことで、介護の中堅・大手にもこのシステムを非常に利用していただきやすい環境になっています。
坂本:多機能ですので、特に競争力が高いと思います。非常に広い範囲をカバーしているということですが、まだ足りない分野はありますか? その開始予定などがありましたら教えてください。
山本:足りないというよりは、法改正が医療保険は2年に1回、介護保険は3年に1回あります。最小公倍数で考えると、6年に1回同時改定があることになります。
開発している側からすると、2年後には医療保険の法改正、その翌年には介護保険の法改正、またその翌年には医療保険、その2年後に同時改定と、ほぼ毎年作り続けないといけません。ですので、法律が変わるものに完全対応していくだけでも、かなり大変です。
実は、法改正ごとに介護ソフトを撤退するベンダーが非常に多く、介護業界は市場規模が3兆円から10兆円まで増えているのに、もともと250社あった介護ソフトベンダーが、今は80社ほどまで減ってきています。
来年に大きな法改正があるのですが、そこでかなり大きな介護ソフトベンダーが撤退するとのことです。ですので、足りないというよりは、高齢化社会が進んでいくことによってどんどん変わっていきますので、そこに対応していくために作り続けていくことができる専業メーカーが強いです。
市場が大きいため、参入が多いのではないかと思われがちで、「大資本が入ってきたらどうするのか?」というご質問をいただきます。しかし参入障壁がかなり高く、逆に大手が撤退しているような業界です。
坂本:新規参入は人材もかなり必要で、イチから営業しなければいけないというのがけっこう難しそうですね。
山本:そうですね、意外と参入障壁が高い業界だというところです。
2-5.医療介護クラウドサービス:情報共有システム
山本:2階層のソフトはスライドの図のようなかたちで、患者さまごと、要介護者ごとに部屋があり、医師や看護師、ケアマネージャー、ヘルパーなど、この患者さまをケアしているチームだけが情報を共有できるかたちになっています。
パーソナルヘルスレコードを共有できる仕組みになっており、医療介護情報やADL、バイタルの情報、薬の情報、介護記録などを共有して仕事ができるというものになっています。
システムがない時は、電話や郵送、FAXなどを使い、情報共有がリアルタイムでない状況で仕事をしており、非常に非効率だったところを、当社がすべてつないだということです。
増井麻里子氏(以下、増井):ご質問です。御社の強みは、1階層、2階層の連携など、カバーしている分野が広いところだと思いますが、それ以外の部分で他社と比較して御社の強みとなるところがあれば教えてください。
山本:連携するというところ以外では、多機能であるところです。もともと富士通にいたためわかるのですが、本来は部署が分かれるくらいそれぞれ専門的なところなのです。人事・給与会計のパッケージと会計のパッケージ、それも債権管理のパッケージと経営分析系のパッケージというのは、それぞれに専門分野があるくらい難しいところです。
実際のところ、これらが一気通貫でつながるというパッケージは、世の中に存在していないため、この部分は我々が非常に強いです。介護保険の法改正対応だけでも大変ですので、さらにその後ろにある業務まですべてつながっているソフトはありません。
当社のシステムを入れる前は、いろいろなソフトを組み合わせ、何個もつないでいる法人や事業所が多いのです。しかし、当社のシステムによって一気通貫でつながり、あとは給与と会計だけをポンと投げたら終わりになりますので、ここが一番大きな差別化要因だと思っています。実際に「このようなところがいい」と乗り換えていただくところが多いです。
導入の入り口は2階層の連携から始まるのですが、実際に切り替えるのは機能性のところだというのが、大きな強みだと思います。パッケージ自体が優秀であり、ずっと作り続けて機能をどんどんブラッシュアップしていくのが我々の大きな強みです。
2-6.子育て支援システム
山本:当社の大きな特徴でもある子育て支援システムについてです。先ほどお話しした「子育て支援と高齢者支援の両輪を支えるのが当社の仕事だ」という部分において、高齢者の医療介護情報を共有するのが医療介護クラウドであり、電子母子手帳であったり、地域の医療法人や自治体とのつながりやママ友ネットワークであったり、子育てにおけるつながりを作るのが子育て支援システムです。
ここにAIなども組み合わせることで「BabyTec Awards 2022」なども受賞しており、子育て支援システムもこれからどんどん伸びていくと思っています。
坂本:子育て支援システムは自治体中心の導入だと思いますが、現在どれくらいの自治体が導入しているのか教えてください。
山本:基本的には当社の高齢者支援を導入している自治体に、プラスで子育て支援を契約していただくというかたちです。開示はしていませんが、高齢者支援と子育て支援というダブルケアで支えていただいています。
2-7.プラットフォーム化による収益拡大
山本:我々の一番のバリューは医療介護従事者、医療介護法人にたくさん利用していただいていることであり、その決済やインターネット広告で広告費をいただくことなどです。AI、IoTをつないだり、人材マッチングをするなど、付加サービスで収益がどんどん拡大しており、今プラットフォームが伸びている状況です。
3-1.ストックビジネスの収益構造
山本:弊社の強みについてです。基本的にほとんどの売上がストックビジネスになっており、月額を積み重ねていくかたちなのですが、ユーザーを取るために大量の広告を投下しなくてもいいというところもポイントではあります。損益分岐点が低く、どんどん積み重ねていくことで利益率が上がっていくところが大きな特徴です。
坂本:導入に向けての営業体制は、例えば営業員がいて自治体に当たりに行くのでしょうか? それともインバウンドで待っているのでしょうか? また、1階層、2階層のどちらから切り込むほうが多いのかなどの点も含めて教えていただけたらと思います。
山本:自治体から受注して無料ユーザーを増やし、有料化していくというのが基本的な方法です。ただし、例えば1階層まで受注しているある事業者さまの介護施設が、2階層が入っていない別のエリアにできると、その介護施設に来られている先生との連携が始まることもあります。このように、実際はアメーバ状に広げながら営業をかけているかたちです。
ですので、営業は人間同士のつながりを広げていってシステムを受注する方法をとっています。先ほどお見せしたとおり、当社は各地に営業所がありますが、そのあたりのエリアには当社を利用している自治体が多く、そこでネットワークを広げながら販売しています。
3-2.東京大学と共同研究「柏モデル」(都市型モデル)
山本:都市型モデルと地方型モデルの両方のモデルで産学連携などをいろいろ行っており、1つは東京大学と一緒に行っている「柏モデル」です。私もここに研究員として入っていたのですが、地域包括ケアの走りになっているモデルで、カナミックが利用されていることで有名になっています。
3-3. 旭川医科大学との共同研究(地方型モデル)
山本:地方型モデルとして、旭川医科大学と一緒に「遠隔モデル」というかたちで遠隔医療、遠隔介護、遠隔リハビリのようなことにチャレンジしています。
このような産学連携が実を結んでいるというところもあります。
4-1.業績目標
山本:業績の概要について、中期経営計画で出しているとおり、この3年間は非常に高い伸びを作れる時期になっています。2024年9月には、M&Aなしでも売上高33億円、営業利益15億円、EBITDA18億円を目指していますので、高い利益率を誇りながらしっかりと成長していきます。
さらにそこへM&Aも組み合わせていきながら、ヘルスケア企業、ヘルステック企業としてより幅を広げることにチャレンジしています。2024年9月期に向けてはM&Aありで売上高53億円、営業利益17億円を目指している状況です。
4-2.中期経営計画と進捗状況
山本:中期経営計画に対する足元の進捗状況についてです。すでに1期目では上振れして着地しており、また2期目の今期もすでに上振れして着地できるかたちで予想を出しています。中期経営計画を着実にトレースしながら上振れしている状態を繰り返しています。
4-3.クラウドサービス導入地域数推移
山本:2階層のご説明の時に自治体に導入いただいているとお話ししましたが、こちらが当社のシステムを導入している地域数です。今の導入状況は1,333地域であり、実は東京都全域で利用していただいています。中学校区の人口3万人で1地域というイメージで、全国で最大母数が4,000地域くらいなのですが、そのうちの3割強の自治体に利用していただいている状況です。
4-4.クラウドサービス ユーザーID数と導入事業所数推移
山本:地域内で利用していただいている有料ユーザー数は10万人以上、無料ユーザー数は約7万7,000人です。また、3万8,000ヶ所以上の事業所に利用していただいており、年間で2割くらいの成長でどんどんとユーザーが増え続けている状況です。
坂本:無料のユーザーとはどのくらいのシステムが使えるのかということと、無料から有料に乗り換えてもらうために行っている営業の施策があれば、教えていただけたらと思います。
山本:先ほど、2階層の患者情報を共有する画面を見ていただきましたが、そこで医療、介護、薬やバイタルなどいろいろな情報の共有を支えるコミュニケションツールがあり、それが無料で使える範囲になっています。
山本:有料になると、先ほど1階層と記載していた法定帳票を作ったり、レセプトを作成したり、勤怠・給与計算、債権管理、経営分析などの機能がつきます。利用している方にとってはボタンが増え、機能が増えていく感覚ですので、1階層、2階層というより自分がログインした時に使える機能の幅が変わるかたちになっています。
坂本:専門ソフトは、実務的なものは有料というかたちが多いと思いますが、そのようなイメージでしょうか?
山本:そのとおりです。地域で連携することが無料で、より専門的な、保険請求や売上を立てる部分が有料というかたちになっています。
4-5.アーバンフィット店舗出店目標
山本:リアル店舗にもチャレンジしています。昨年、アーバンフィットという会社をM&Aしました。2022年9月末現在で大阪にジムを14店舗展開しており、こちらを2030年9月期までに100店舗まで拡大することを目指しています。
14ヶ所中、6ヶ所はフランチャイズです。すでにフランチャイズが付いているビジネス形態ですので、フランチャイズも含め100店舗を目指していくというかたちで開示しています。
坂本:こちらについて事前にいろいろな質問が来ていますので、少しお聞かせください。スライドに記載のとおり、御社独自の戦略は「上質な空間とイタリアのテクノジム社のフィットネス機器」と「顧客満足度の高い24時間フィットネス」ということだと思いますが、競合他社が多いということで、価格面や他社との競合優位性があれば教えてください。
山本:すでに大阪では人気のあるジムであり、かなりファンがついている状況です。開示されている他社の1店舗あたりの会員数よりも我々の会員数のほうが断然多く、今後はこれを開示していこうと思っています。
大きな差別化の要因は、まず建物などが施設としてかっこよくてマシンが良いところです。実は他社と利用料金は同じくらいですので、「大手の24時間ジムと値段がほぼ同じでこれほどクオリティが違うならこちらに来る」というかたちで集客できています。
ここに当社らしいいろいろなサービス群を加えています。例えば医療連携する部分や、よりヘルスケアに特化したようなサービスなどです。
おそらく我々は、要介護者のデータを日本一持っている会社で、いろいろな実証事業をしているため、65歳でこれくらいの値の人は75歳で絶対に要介護者になるというデータがほぼわかっています。さらに、その前の段階である40代、50代の時にこのラインを越えておかないと要介護になるということもわかっているのです。
ですので、65歳から介入する話ではなく、30代、40代、50代の時から65歳の体作りに向けたことを始めていかないと間に合わないということを、経験値から逆算しサービスを提供しようと考えています。ある意味で、要介護者を増やさない社会にしていくことにチャレンジしているわけです。
坂本:要介護者になるかならないかという段階になってから介護保険を使って施設を利用したり、「レコードブック」みたいなものを利用したりするよりも、そうならないようにもっと前から計画的に、最近よく言われるようになった「筋肉が貯金」というものを実践していくかたちですね。
山本:そのとおりです。要介護状態に起因するものは、筋肉以外の要因がかなり多いため、そこまで含めて全体的に介入していきます。ジムと聞くと、これまではどちらかというと「痩せる」「ムキムキになる」など、両極端のイメージを持たれていたと思います。
そうではなく、例えば虫歯にならないために毎日歯磨きをするのと同じように、「一生健康で、元気に活発に過ごすために、きちんとジムに行っていろいろなサービスを受けましょう」ということを実現しようと考えており、その点が差別化要因になっています。
坂本:それではやはり、対象は40代以上ですか?
山本:いいえ、20代、30代から介入します。
坂本:それからずっと継続するということですね。
山本:データ上はそのあたりの基礎値も非常に重要です。中高年というより、若い世代からずっと元気で活躍できる体づくりをしていこうと考えています。この点が他とのジムとの差別化かと思います。
坂本:もう1点ご質問です。御社は利益率が非常に高いですね。同業他社に比べても非常に高く、それは早期からSaaSビジネスをしっかりと組み上げられているためだと思います。
ただし、このフィットネスは意外と利益率が落ちるのではないかと思ってお聞きしようと思ったのですが、フランチャイズを絡めていくのであれば、おそらくそれほど利益率は落ちないとは思います。つまり、この店舗の展開は、どちらかというと直営よりもFCをどんどん広げていくという理解でよろしいでしょうか?
山本:フランチャイジーに経営して儲けていただきながら、我々もこのブランドを広めていくことを基本としつつ、旗艦店となるところは直営として出していこうと考えてはいます。
利益率が悪くなるというお話について、クラウドで40パーセントくらい利益が出ており、そのような会社はなかなかないと思います。アーバンフィットも実はかなり利益率が良いのです。
有価証券報告書では出していますが、昨期の第4四半期は売上高2億5,095万円で、経常利益が7,423万円と利益率が約3割出ています。もちろんカナミック本体に比べると下がっていますが、全体的な産業で考えるとそれほど低いわけではありません。
カナミック本体の利益率は非常に良いですが、さらにアーバンフィットも乗ってくるかたちを作っていくことで、年度ごとの伸びをさらに作るという意味で、まったく悪くないと思っています。売上高と利益額を上げていくことが最終的なバリュエーションになると思っています。
4-6.株主還元
山本:もともと上場した時から配当も出し、毎年のように増配を繰り返しています。今期は3.5円を予想しています。配当性向は20パーセント以上を基準とし、我々が会社として投資できる部分を残しつつ株主還元も行っています。
4-7.株主還元
山本:また、合計13名に20万円相当の「JCBギフトカード」が当たるという、少し変わった「抽選式優待」というものを行っています。私が株主総会で、みなさまの前でくじを引くというかたちです。
5-1.医療・介護業界の市場規模
山本:成長戦略についてです。我々は医療・介護業界、日本の超高齢社会を支えることになりますので、どの産業もこれから生産人口が減っていって苦しい中だと思いますが、逆に我々のターゲットとなる高齢者が増え続けるということです。
5-2.医療・介護業界の市場規模
山本:実はこれからが非常に大変で、「2025年問題」というものがあります。団塊の世代が全員75歳を超えるのが2025年なのですが、スライド左側の表に記載したとおり、65歳から74歳の要介護認定率は2.9パーセントで、高齢者の人口が多いといっても要介護認定者はまだ少ないのです。しかし75歳以上となると23.3パーセントになってくるため、要介護認定者が10倍くらいに増えます。
5-3.医療・介護業界の市場規模
山本:ここから先、高齢者数が爆発的に増えるということですので、市場規模も2025年以降に一気に伸びます。3.6兆円の市場規模で始まった介護業界は、2016年には10.4兆円になりましたが、28兆円まで伸びるという試算もあります。
これから非常に大きな伸びしろがある業界において、DXソリューションをテーマにビジネスを進めていくことが、我々の狙いです。医療・介護業界の市場規模が巨大だというところも知っていただければと思います。
5-4.当社の成長戦略について
山本:当社はtoC、toB、toG(Government)を支えるカナミックヘルスケアプラットフォームというものを提供しています。これからも、人生全体を支えるようなサービスを提供していきたいと思っています。
坂本:こちらに記載の健康管理PHRについてご質問です。図を見ればわかるのかもしれませんが、現状で御社はこのビジネスを、どのようにプラットフォームに絡めていくのかについて、事例をもう少し具体的に教えていただけますか?
山本:情報共有システムや医療・介護連携において、toGのサービスにかなり力を入れています。もちろん、子育て支援の分野でも自治体のソリューションに携わっています。
toBでは、先ほど医療・介護業界のDXについて触れたように、一介のソフト等を含めて効率化していくというニーズが今非常に高まっており、そのようなDX化事業を主に進めています。
toCでは、介護業界でまだ紙を使っている業務が多いため、インターネットのWeb明細のサービスなど、事務面でDX化するサービスをいろいろ進めています。さらに、先ほどお話しした「URBAN FIT24」のように、健康寿命を延伸するフィットネス事業も手がけています。
5-5.当社のM&A戦略について
山本:今、このようにそれぞれのサービス群を増やしているところです。スライドのとおり、事業領域は左のヘルスケアから右の保険サービスまで、上のリアル店舗から下のITサービスまであり、それぞれ拡大しています。
その中で特に、左のヘルスケア、左下のヘルステック分野のサービスについて、もっと重点的に拡充していく計画で、このようなかたちで、カナミックグループは今後、新規事業のM&Aを含めて、事業領域をどんどん広げていく方針です。
坂本:最後にM&Aについて、御社は自己資本比率が4割くらいある中で、M&Aの対象として具体的にどの分野を目的としているのかを、可能な範囲で教えていただけますか? 財務状態やその時のイメージ、案件によって判断は変わってくると思うのですが、それらを含めて2024年9月期に向けたM&Aのイメージを、大まかでかまいませんので教えていただければと思います。
山本:我々の事業は、基本はDX、IT企業であるところが根幹です。スライドの表で言いますと、右下の分野が一番強いです。保険サービスにおけるITサービスが一番強い分野です。
今回はその反対の左側にあるヘルスケアで、リアル店舗を展開するアーバンフィットを子会社化した状況ですが、全体としては、IT分野でどんどんサービスを追加していき、左側のヘルステックや健診システム、AIシステム、受託開発などから、右側の子育てシステム、薬局システム、電子カルテまで、各領域を増やしていきつつ、リアル店舗も持ち、実際に変えていく方針です。そのようなイメージを持っていただければと思います。
したがって、リアル店鋪をどんどん出していくというより、そこに対するデータビジネスや各サービス群を増やしていくためのITサービスの拡充に、一番重点を置いています。
質疑応答:次回の中期経営計画の発表予定について
坂本:「2025年から2027年までの中期経営計画は、2024年9月期終了後に発表する予定でしょうか?」というご質問です。
山本:我々も中計出したのは実は今回が初めてで、この3年間を目標どおり着実に進んでいくところを、しっかりと毎年開示し、それが終わる年に次の3年間、第2期を発表していく予定です。
質疑応答:IRにおける開示方針について
坂本:御社はログミー以外にもいろいろなIR活動をされ、多くのお話を発信されていると思うのですが、その中で次のようなご要望をいただいています。
「株価の低迷について、社長は以前、『株価はわからないので業績でお返しします』と説明会でお話しされていました。IR等でずいぶん株価が変わってくると思います。機能改善や出店状況を適時開示したり、四半期ごとに決算説明資料を作成したりすること、あるいは月次でのクラウド会員数を開示するなど方法はあると思いますが、そのへんのご検討をお願いします」という内容です。
山本:そのあたりのご要望は認識しており、当社はIRについて適宜改善していこうと思っています。みなさまにとってわかりやすい開示をこれからも努め、開示量や見やすいような出し方など、適宜変えていこうと思っています。我々としてもIRには力を入れて今後も進めていく方針です。
質疑応答:海外展開の方針について
増井:「海外展開についてはどのあたりへの進出を予定されていますか?」というご質問です。
山本:当社は今、中国に子会社を1社持っていますので、中国市場を視野に入れてはいますが難しい領域でもあります。そのため、これからアジアを中心に人口が増えていくというところから、東南アジアなどを進出先として検討しています。
さらに、実はこれから欧米諸国でかなり高齢化が進んでくるというお話もあり、例えば東大で「柏モデル」を進めている時も世界中から視察が来ていました。日本がどのようにするのか、どのように進めていけば上手くいくのか、欧米諸国からもすごくよく見られている状況です。
そのような意味では、世界で一番長生きする国が日本ですので、世界から注目されています。一般的には、世界がどんどん成長していて日本が成長していないといわれていますが、これほど長寿な日本はどのようにして社会が成り立っているのか、非常に注目されている分、今後ノウハウを輸出できる産業になるだろうと私は考えています。その上で、これから高齢化を迎える国というのは、当社の輸出先として非常によいターゲットになると思っています。
坂本:進出の準備はいつぐらいから始められるのでしょうか? 時期など、すでに予定されていますか?
山本:2025年度から海外に進出しようと思っており、準備中です。実は最初に海外展開のお話をして以降、コロナ禍の影響でなかなか進出できませんでした。やっと今年くらいから渡航制限が解除され始めているため、これからどんどん動けるとは思うのですが、コロナ禍で少し止まっていた部分はあります。
質疑応答:新株予約権の撤回後の対応について
坂本:「新株予約権の撤回を実施されましたが、M&Aへの戦略的な影響はありますか? 今後は銀行借入を利用したM&Aを実施するのか、自己資本で賄うのか、どちらの方法を選ぶのでしょうか?」というご質問です。ケースバイケースで変わってくるとは思うのですが、そのあたりのイメージを教えてください。
山本:資金調達した部分について、いったんキャンセルといいますか、消却することで希薄化が起きない状態に持っていきました。当初予定されていた希薄化がない分、株価に対するイメージというか1株あたりの利益が減らないようにしました。
M&Aに関しては、案件ありきで借入するかエクイティファイナンスを実施するかというところはありますが、現状でも利益が毎年どんどん出ているため、それほど借入しなくても回る状態です。ただし案件ごとに、ケースバイケースの判断になると思っています。
質疑応答:期ズレの実態について
坂本:「2022年9月期に計上されるはずの案件が、2023年9月期に期ズレした点について、2022年9月期の売上を見るかぎり1億円程度だと推察します。しかし、2023年9月期の売上予想については期ズレの修正がありませんでした。期ズレの修正額はどこにいっているのでしょうか? また、何が起因しているのでしょうか?」というご質問です。今期のズレがあるかについて、教えていただけたらと思います。
山本:我々の毎年の予算の出し方として「売上は堅めに、経費は多めに」という方針で算出しています。そのため、上場してから今までの6期ずっと、だいたいいつも予想よりは上振れしてきていました。
ある程度の投資額を考えつつ、売上も堅く見るかたちで予算を組んでおり、今回ももともと開示している内容は、予算を堅く出しています。期ズレした分、余力はあるということでご認識いただければと思います。
質疑応答:電子化の進捗について
坂本:「請求書の電子化や決済の電子化を進めていると思いますが、導入状況はいかがでしょうか? 具体的な数値が言えない場合は、おおよその数値を教えていただければ幸いです」というご質問です。「電子化はけっこう進んでいるのですか?」というお話も含めて、御社の取り組みがあれば教えていただけたらと思います。
山本:介護業界は約38万事業所あるのですが、そのほとんどすべての事業所が、請求書は紙で、決済は基本的に銀行引き落としのみという方法で事務を行っています。
我々のWeb明細化サービスでは、請求書・領収書をすべてWebで見られるようにしています。実は介護保険のサービスには、医療費控除が利くサービスがあるため、年末に1年分の明細を取りたいというニーズがあります。そのため年末は、介護事業者さまは1年分すべての明細を再発行していることもあり、すごく大変なのです。
当社のお客さまは、1法人で100事業所から500事業所、あるいは1,000事業所まで抱えているところもあります。そのようなお客さまが、毎年とんでもない枚数を処理している事務の部分を、Web明細にどんどん切り替えできています。
Web明細にすることで、お客さまが自分でログインして、必要な明細をすべてダウンロードできるようになるため、そのあたりがわかりやすいと好評です。さらに当社は、Web明細化するとそこから決済もできてしまうというサービスもつけています。
つまり銀行引き落としだけでなく、クレジットカード決済や「PayPay」払い、コンビニ払いなど決済手段を増やしており、これによって実は回収率を上げることも行っています。
坂本:もし今そのサービスを実施されているとするなら、たぶんファクタリングを上手く行うと一番利幅が高いところなのかと思うのですが、そのへんのお考えはありますか?
山本:介護のファクタリングというのはけっこう実施している会社が多く、当社の競合も実は1社行っており、そこもユーザーの8割くらいがファクタリングを使っているという開示があります。
ただし、この業界はファクタリングを使いすぎているため、マージンがすごく安く、業界平均がだいたい0.5パーセントから0.8パーセントくらいなのです。
坂本:どうせ入ってくるからという信用もあるということですね。
山本:そうですね。国民健康保険団体連合会という、国からの給付分のファクタリングであるため、実は安くしなければ駄目な構造になっています。
介護業界は超零細企業によるファクタリングのニーズが多いのですが、倒産確率がかなり高いため、つまり1パーセントの企業が倒産してしまうと、回収し損ねる可能性があります。実はファクタリングをどんどん進めるのはけっこう危ない業界でもあるのです。
過去にも医療報酬のファクタリングを実施している会社が倒産した事例もあり、ファクタリングは額が大きく見えるのですが、取り入れるのはけっこう危ない業界でもあります。
我々にも一部では行っているお客さまがいるのですが、基本的にはファクタリングは利用せず、介護サービス利用者の利用料決済に関して、取引を電子化して手数料をいただくという、決済が起きたところだけ手数料を取るというかたちで進めています。
坂本:意外とマージンが薄かったのですね。
山本:そうですね。この医療・介護業界は他よりもかなり安いのです。
坂本:手数料率が高ければ、かなり儲けの出るビジネスだったかもしれないですね。
質疑応答:今後の事業拡大におけるM&A戦略と人材戦略について
坂本:「今後、会社の規模を大きくしていく上で、人材を増やしていくのでしょうか? それともM&Aを進めていくのでしょうか?」というご質問です。大きなお話になるかもしれませんが、今後実施されたいこととM&Aなどの戦略、人材戦略について、イメージを教えていただけたらと思います。
山本:実はカナミック本体は人数が少ないのです。
坂本:そうですよね。少数精鋭でされているなと思いました。
山本:そのとおりです。この部分も実は重視しているKPIではあるのです。「人を増やした方がよいのではないか」ということをおっしゃる投資家もよくいらっしゃいます。
坂本:システム会社は、それが普通だと思っている方がすごく多いです。
山本:そうですね。これは実は私が前職で富士通にいた時から思っていたのですが、だいたいの企業は「1人月いくら」で計算するのです。つまり「エンジニア1人で、1ヶ月いくらもらえます」という仕組みです。
私自身はこの仕組みが、天井が作られるように感じてとても嫌で、自分が働いてもお客さまが払えるところで終わってしまう、人材派遣になってしまうと思っています。私としては「エンジニアが作ったものがたくさん売れたらもっと儲かる」「エンジニアの給料が天井なく上がる」という仕組みのほうが好きなのです。
坂本:でもそれは、なかなか人を使う場合、難しいという面はないですか?
山本:そうですね。当社は少数精鋭で、あまり人数は増えていないのですが、売上高はどんどん上がっており、利益率もある程度ずっと上がり、社員のお給料も上げやすい状態です。
我々はこの業界におり実態がわかるため、少子高齢化社会で人口減少社会という、とんでもないスピードで人口が減っていく社会において、人材の数で売上高を上げるスタイルでは、業績を伸ばすのはかなり苦しいだろうと考えています。
そのため、1人あたりの生産性と1人あたりの売上、1人あたりの利益をKPIにおいて、社内では運営しています。カナミック本体はそのように経営しています。
ただし、これからヘルスケア企業、ヘルステック企業にどんどん成長していくというステージにおいて、アーバンフィットの事業拡大もあります。アーバンフィットでは店舗に人を置いており、無人ジムではないため、ホスピタリティジムとしてお客さまに満足していただくサービスを提供する以上は、店舗が増えていくと人が増えていくかたちにはなります。
ただし、フランチャイジーもけっこう参加しているため、そこは我々が人を抱えなくても運営できる部分です。ノウハウを提供して儲けていただき、我々はフィーをいただくというかたちができれば理想的だと思っています。
したがって、これからも従来のKPIは持ちつつ、事業展開が増えていけば少し人材は増えていくだろうと思っています。
質疑応答:2030年時点の日本と海外の売上高比率について
増井:「2030年時点の、日本と海外の売上比率はどれくらいになるイメージでしょうか?」というご質問です。
坂本:難しいですね。
山本:開示していないところですので明確なイメージは難しいですが、お答えします。今2023年時点で、日本が韓国や台湾に抜かれてきているというニュースもある中で、これからボリュームのある売上および利益を取っていくには、日本はもう1回海外に出ないといけないと思っています。
つまり、日本企業が外貨を稼げるサービスを作らなければいけないと考えています。もともと内需の規模がかなり大きかった日本が、今は外需のほうが大きい状態なので、急いで海外に出て、海外の方がお金を払いたくなるサービスをきちんと作らないといけないと思うのです。
昔はそれが製造業だったのですが、世界は今サービスにお金を払う時代になってきており、これは日本が弱いところです。日本はサービスを外に売るのが苦手ですので、我々としてはここに投資して、しっかり事業を進めていかないといけないと思っています。
したがって、2025年から海外に進出し、それから5年間でどれだけ伸ばせるかというところです。これはもちろんチャレンジになるのですが、基本的にはクラウドと匹敵するぐらいの売上高に持っていき、売上高および利益額をどんどん上げていくという成長を作れる企業にならなければならないと思っています。海外進出に向けて着実に投資していきながら、外貨を稼げるサービスを実現したいと考えています。
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