PCIホールディングス、確かな技術力と優れたM&A戦略で大きく拡大 8期連続で増収増益を達成
第8回 個人投資家向けIRセミナー&講演会(第2部)
阿部貴博氏(以下、阿部):みなさま、こんにちは。PCIホールディングスの阿部と申します。本日は足元の悪いなか、こんなにたくさんの方に当社の説明の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
当社は東証一部に上場しており、証券コードは3918です。(語呂合わせで)「サンキューいっぱい!」ということで、もし機会がありましたら、当社のホームページ等もご覧いただければと思います。
本日は、会社説明の時間を30分いただいています。資料をすべて、細かくご説明しますと、1時間から1時間半ぐらいかかってしまいますので、主要な点だけご説明して、いくつかのページは割愛させていただくことをご了承ください。では、資料に沿ってご説明したいと思います。
IT、あるいは組込み系のお話をするときには、若干、専門的な用語が多くなったり、なかなかお耳になじみのない言葉も出てくるケースがありますが、なるべく平易な言葉で、あるいは身近な例をたくさん用いながら説明したいと思います。よろしくお願いします。
安心・安全・豊かな社会に貢献する会社
では、まずは「PCIグループとは?」ということで、当社は、ITをもって「安心・安全・豊かな社会に貢献する会社」を社是として、企業活動を営んでいます。
基本情報
会社の基本情報ですが、2005年4月に設立した、まだ社歴の浅い会社です。上場してからも5年程度ということで、まだまだこれからの成長過程にある会社ととらえていただければと思います。
所在地は港区虎ノ門で、ちょうど霞が関の官公庁界隈の隣のブロックに会社を置き、日本政府から発信される情報をいち早くキャッチして、当社の事業に結び付けたいという思いもあり、ここに社屋を設けています。
代表者は2名で、会長の天野が創業者です。そして社長の原口が新規事業、M&Aを担当しております。のちほど当社の成長戦略のなかでご紹介しますが、この2人が両輪となって会社を運営しています。
資本金は10億円を超えていますが、2019年9月期、今年の9月の決算で、売上高は約165億円と、まだ規模の小さな会社です。
従業員は9月末現在で1,253名、エンジニアと言われるITのプログラマーやSEが1,000名を超えています。その1,000名のエンジニアたちに加えて、パートナー企業様とも連携して活動していますので、総数で1,500名程度が当社ビジネスに関わっているエンジニアととらえていただければけっこうです。
グループ運営体制
当社の運営体制です。PCIホールディングスは純粋持株会社ですので、実業と言いますか、実務的なところは特徴ある各グループ会社の事業に任せている構造です。
ですので、PCIホールディングスは上場企業として守らなければいけないガバナンスの部分、あるいは情報の適時開示、そして一番大事な資金部分を担い、このようなものでグループ企業を支えているという構造です。
具体的に何をしている会社?
では、PCIグループが何をしている会社なのかについてです。IT関連であることはわかったけれど、というところだと思いますが、事業内容の主力は、お客さまのオーダーに基づく受託型ソフトウェアの開発です。中身はのちほど紹介しますが、さまざまな分野におけるITソリューション、自社が開発してきたサービスを展開しています。
おもにBtoBで成長してきまして、取引先の多くは上場企業ならびに上場企業群です。
また、これは当社の強みでもあるのですが、上位20社における契約のリピート率は100パーセントを続けていまして、この上位20社が毎年増えている状況です。安定的な収益基盤が当社グループを支えているとご理解いただければと思います。
そして、開発したソフトウェアがどこで使われているかについてですが、一番得意なのは自動車分野です。最近では自動ブレーキシステムであったり、各種センシング、それからコマーシャルでも数多く見られますが、自動運転や自動走行といった分野のソフトウェアに関わっています。
それから、みなさまもお持ちだと思うのですが、スマートフォンのアプリも当然開発しますが、スマートフォンを制御する組込み部分も担っています。
また最近では、太陽光発電設備の遠隔監視システム、植物工場の受発注システム、生産管理のソフトウェア開発も行っています。
当社グループの事業領域
展開している事業領域の説明に移ります。繰り返しになりますが、当社グループはITを主業として担っていますが、これを4つの区分に分けて事業展開しています。
1つ目が、スライド左上のエンベデッドソリューション事業です。こちらが比較的参入障壁が高く、先ほどの事例で申し上げますと、自動車をメインにした組込みと呼ばれる世界です。
次に、右上のビジネスソリューション事業の部分です。こちらは金融機関、銀行、証券、生損保、各自治体さまなどからソフトウェアの開発、アプリケーションの開発のお仕事をいただいて事業を展開しています。
右下の半導体トータルソリューション事業についてですが、当社はITですので、生産ラインを持って半導体を作る側ではなく、半導体の設計や仕上がった製品のテストを担っています。
また、エレクトロニクス総合商社であるレスターホールディングスとも資本業務提携しています。先方はハード側の商社ということで、そちらでお客さまからいただいたソフトウェア開発等を、当社グループ企業2社が担っているという構造です。
最後に、左下のオレンジ色の部分ですが、IoT/IoEソリューション事業を展開しています。ITの世界では、IoT、IoE、ICT、IIoTといった言葉がたくさん出てくるのですが、当社もこの領域を成長戦略として捉えています。
どうしてもエンベデッドソリューション、ビジネスソリューション、半導体トータルソリューションにおいては人材型に頼ってしまうところがあります。そうすると、やはり多くの雇用を支えなければいけません。
また、パートナー企業様を集めなければいけないというところですが、IoTに関しては自社開発したものになりますので、これを軸にしていくことによって、今よりも高いレベルの営業利益率のボリュームを出していきたいと考えています。
用語解説 ~エンベデッドシステム~①
エンベデッドシステムの解説になります。先ほどお話ししたエンベデッドソリューション事業のなかで提供しているソフトウェアは、簡単ですが、「半導体(LSI)に企画通りの機能をさせるためのコンピュータシステム」と説明させていただければと思います。
具体的な例をお話しします。車のお話ばかりで恐縮なのですが、駐車場に自動で駐車してくれるシステムがある車がありますよね? つまり、ハンドルから手を放してボタンを押すと、勝手に停めてくれるものです。それは、センサーでいろいろな障害物を認知して、ハンドルを切って、アクセルを踏んで、ブレーキをかけて止めるという仕組みです。これは、すべてソフトウェアが制御してコントロールしています。
「ハンドルを◯度で切りなさい」「ガソリンの抽出量を◯パーセントにしなさい」と、全部制御しているのです。この制御するためのソフトウェアがエンベデッドシステムだととらえていただければと思います。
用語解説 ~エンベデッドシステム~②
こちらのスライドは用語解説ということで、細かくご紹介しています。のちほどご覧いただければと思いますが、このあとの質疑応答のなかで深く聞きたいということがあれば、ご回答したいと思います。
これまでの当社グループ
これまでの当社グループを振り返りながら、どういう成長をしていくのかというお話をしたいと思います。
これまでの当社グループは、先ほどご紹介したような確かな技術力をベースにした、堅実なビジネス基盤を背景に成長してきました。また特徴としては、当社は持株会社ですので、M&Aを積極的に実施してきた企業群です。
M&A戦略によるグループ拡大の変遷
M&A戦略によるグループ拡大の変遷ということで、これまでのM&Aの歴史をスライドにしてみました。
一番左側が2005年4月です。社名が変更になっていますが、M&Sという企業を立ち上げて、設立当時から純粋持株会社でいこうというコンセプトを掲げています。グループ会社群はページの下に社数が書いてありますが、2013年以降、会社群を買収しながら増やしてきました。
途中で1社、MBOがあったり、あるいは事業再編ということで事業領域が同じ会社を1つにまとめたりということも行いながら成長した会社です。
今後もこの成長戦略に変更はありませんので、いいお話があったり、いいご縁があれば、当社の事業領域、ポートフォリオを拡大するためにも、いろいろな会社に参画していただきたいと考えています。
実績及び通期予想
M&Aの結果、前期末現在では、8期連続の増収増益を達成することができました。前期実績を約165億円で置いていますが、今期は174億円ということで、巡航速度で達成できるペースの計画を出しています。
これからの当社グループ①
このような安定的な事業基盤をもとにして、では当社グループはどこに向かっていくのかという説明をさせていただきます。
これからは、やはり来るべきIoT、IoE社会へ貢献したいと思っています。IT技術をもって、みなさまの「安全・安心・豊かな社会に貢献する会社」という社是に則って貢献していきたいと考えています。
具体的には、自動走行・自動運転、AI、位置情報、または画像認識等へソフトウェアを提供しながら、収益の向上を図っていきたいと思っています。
これからの当社グループ②
さらに、来るべきConnected World、つまり、すべてのものがインターネットなどいろいろな通信で繋がるという世界におけるサイバーセキュリティにも進出しています。
のちほどご紹介しますが、「最強そして究極」と呼ばれるエンドポイントセキュリティ製品「AppGuard」のメーカーへの出資と同時に、製品の取り扱いを開始しています。
IoT/IoEサービスの一例
IoT/IoEサービスの一例をご紹介します。先ほどのお話のとおり、当社はBtoBが多いため、なかなか皆様の目にとまるような製品、あるいはソフトウェアがなく、ご存知ないかもしれないため、わかりやすい例をお話しします。
1つ目は、AEDのリモート監視システムです。これはグループ子会社がすべて提供しています。いろいろなビル、テナントのなかにAEDが設置されているのですが、あれは命に関わるものですので、実際に使おうと思ったときに使えないということは、絶対に許されません。
そこで何が必要になってくるかです。起動したときに電源が入ること、電気やパッドが消耗して反応しないことがないか、この2つが絶対に必要です。
メーカーからお話をいただいたときには、「今は、実際に目視することでしか監視できません」ということでした。それでは時間も労力もかかりすぎるため、なんとか通信技術を使って解決できないかということでお話をいただき、進めてきたのがAEDのリモートサービスです。
具体的には、AEDのなかに通信回線を敷き、電池の残量、パッドの消耗度合いという情報を、スライドの左下にあるようなグラフで表示します。パソコンでもスマホでも見られるサービスで、これは国内、国外問わず、AEDのメーカーと組んで進めています。
もう1つが、通信事業です。実は、当社がM&Aをした「りーふねっと」という会社があるのですが、こちらの会社は「0067」という通信事業者の番号を持っています。国内には通信番号を持っている会社が数社あるのですが、この「0067」という番号を使うことによって、通信サービスも提供できます。資料でご紹介しているのは、会員登録なしにプレゼント応募やアンケートに答えることができるサービスです。
年末年始によく放送される番組があると思うのですが、あの番組を見ていると、画面右上にテロップで「誰が〇〇する」「誰が優勝する」といったアンケートや懸賞が出てくると思います。これはすべて「0067」の回線を使って提供しているのです。
当社ではそれを提供することによって、放送局とメリットをシェアしています。例えば、懸賞応募のためのはがきをもらわないため、個人情報を預かる必要がありません。また、携帯キャリアのドコモやau、ソフトバンクと提携しているため、そちらの回線を使わせていただくことによって、当社はインフラを整備する必要がありません。
そして1回構築すると、あとはそのサービスを展開していくだけですので、非常に利益率が高いということです。これが先ほど申し上げましたIoT/IoEを当社の成長戦略の軸に置いている理由ということになります。
りーふねっと社は、売上高はまだ小さい規模の会社です。ただし営業利益率は、当社のグループのなかでも高いです。
世界市場におけるベストセラーGPS端末「Trackimo」
これもIoTの位置情報という部分の戦略の1つです。イスラエルから持ってきた製品で、「Trackimo」というものになります。
スライド中央に「海外市場における主要顧客」とありますが、世界中でもっとも売れている部類に入るような製品で、それを当社グループ会社が日本国内の総販売代理店として持ってきました。
使われているシーンですが、老人の見守りです。夜に徘徊される方や道に迷ってしまう方がいらしたりするため、介護シューズのメーカーと組んで、かかとにこの端末を入れて、どこにいるかを24時間見られるようなサービスです。
機能としては、赤っぽいスイッチでSOSボタンが付いています。このSOSボタンを押すことによって、管理している、つまりコンソール側を見ている人にアラートが飛び、「この人は今、危険な状態にある」というのがわかる端末を用意しています。これはAmazonでも売り始めて、非常に好調に販売が進んでいます。
サイバーセキュリティ
続いて、サイバーセキュリティの「AppGuard」です。これは当社で取り扱いを始めて約2年になります。特徴としては、未知のマルウェアブロックということで、どういうものでもOSを侵すことがなく、完全防御です。20年以上破られたことがない技術で、もともとは米国の国防関係、特殊調査機関といったところで使われていた製品になります。
『IoT/IoE社会=Connected World』への貢献
このようなIoT/IoEへの取り組みですが、グループ会社で一連の循環構造ができています。まだ規模は小さいのですが、そのように考えています。
エンベデッド分野でもお話ししましたように、お客さま、メーカーから「このような製品を作りたい」「このような企画にしてほしい」とファーストコールをいただきます。そこで、エンベデッドのソフトウェア、半導体の設計テストというところでソフトウェアを提供していきます。
それが実際のチップセット、基盤などに組み込まれて、みなさま、あるいはいろいろな企業のサービスのなかに入っていくということです。そちらで実際に使われた結果、BigDataが吸い上げられて、それをメーカーにフィードバックして、次の製品の新しい企画にもっていくというかたちで、当社のなかで1つのプラットフォームができたと思っています。
IoT/IoE①
IoTやIoEは、よく言われる言葉です。「Internet of Things」「Internet of Everything」ということで、いろいろなものがインターネットを通じてつながる社会。このIoT/IoEのそれぞれ頭文字を取っているわけですが、当社では、今お伝えしたような成長戦略のもとに、ある言葉を考えました。
IoT/IoE②
それが「It’s our Turn」、「It’s our Era」です。「そろそろ当社の出番ではないか」「当社がみなさまのお役に立つ時代が来たのではないですか」と考えて、一層IoTやIoEの部分を伸ばしていきたいと思っています。
中期ターゲットについて
中期ターゲットと株主還元のお話をしたいと思います。当社は、具体的な中期計画、中期ターゲットで、何年後に売上高がいくら、利益がいくらという数字は出していません。先ほどご紹介しましたように、M&Aをすると、売上高の計画が大きく上振れすることが非常に多いからです。過去の実績を見ていただくとわかると思うのですが、前年比で35パーセント増など、やはり上振れてしまうのです。
今期の計画は、前期比で売上高が5パーセント程度の伸び、営業利益率も5パーセント程度と置いています。我々は、スライドの表の青字の部分、つまり既存ビジネスでどこまでできるのかというところだけを見ています。
ですので、M&Aであったり、ご紹介したような製品がしっかり売れていくと、売上高も営業利益も上がっていくというビジョンを持っています。しかし、そのような蓋然性の低いものを計画に入れてしまうと、投資家のみなさまをはじめ、ステークホルダーの方々へご迷惑をかけるかもしれないリスクもありますので、当社では、今見えている非常に確度の高い数字をみなさまにお示しするというのが当社の方針です。
株主還元について
続いて、株主還元です。当社は当然、株主のみなさまへの還元を経営の重要課題に置いています。まず配当方針ですが、安定した配当を維持し、配当性向30パーセントから50パーセントを考えています。上場前から配当を継続しており、今期の12月20日に株主総会を開きますが、そこでご承認いただくと、前年比で5円増配となります。
それから、2020年9月期、来年12月に決議いただければ、62円というかたちで増配を行っています。
また、過去には2回ほど自己株買いも行っていますが、規模はまだ小さいです。約1億5,000万円、2億5,000万円という金額ですが、いろいろな施策を用意してみなさまへの還元を考えています。
当社グループのCSR・ESG・SDGs
収益をステークホルダーのみなさまと分かち合いながら、どう社会貢献するかというところですが、CSR、ESG、SDGsという目線も持っています。複数取り組んでいるのですが、今日は2つだけご紹介します。
1つは、早稲田大学の理工学部と、産学連携というかたちで実務的な研究を行っています。研究室の先生と一緒に取り組んでおり、当社の主要なエンベデッド、5G通信、画像認識といった分野で連携しています。
また、立教学院の立教池袋中学校、高等学校に数理研究部というものがあるのですが、そちらの生徒さまへのご支援も行っています。
なぜ数理研究部にサポートしているのかというご質問をいただくのですが、彼らはVRやAR、ゲームが好きな世代なわけですが、ハードウェアが買えなかったり、そのようなものを結ぶネットワーク技術がないということで、そこを当社が支援しています。
ここ3年くらい、彼らは成果を出しています。年に1回、フランスのラバルという小さな町で世界的なVRコンテストがあり、学生部門や成人部門などは関係なく、世界中から集まるのですが、「ぜひ参加して、展示してください」ということで、彼らはそのコンテストに招待されます。
つまり、手を挙げて選ばれるのではなく、優先的に来てくださいというかたちです。そこまでの技術を持っている子どもたちですので、(サポートを開始して)まだ3年目ですが、これからも支援していきたいと思っています。
今日は(このセミナーの会場で)当社のロゴが入ったエコバッグをお配りしています。こちらはノベルティで作っているわけではなく、ミャンマーの子どもたちのための学校を作ろうという企画があり、当社はそこに参画して、その一環としてこのバッグの製作を委託しています。
これからビニール袋が廃止になっていくと思いますので、カバンの中に入れておいていただいて、お買い物のついでにでも、ぜひご愛用いただければと思います。ただし、1つだけお願いがあります。バッグを使われる際は、ロゴが外に見えるようにして、「あ、PCIだ!」とわかるようにしていただけるとありがたいなと思います。
証券コード
長くなりましたが、最後にもう一度だけ言わせてください。目にしたら思い出していただきたいのですが、「安心・安全・豊かな社会」「エンベデッドと通信技術」「IoTとセキュリティ」、そして証券コードは「3918、サンキューいっぱい!」のPCIホールディングスです。
長い時間、ご清聴ありがとうございました。
坂本慎太郎氏より質問
八木ひとみ氏(以下、八木):阿部さん、ありがとうございました。それでは、質疑応答に移らせていただきます。ここからは、ログミーファイナンスのエバンジェリスト、坂本慎太郎さんも加わって、質疑応答を行いたいと思います。坂本さん、今のプレゼンを聞いて、機関投資家であればどこが気になりますか?
坂本慎太郎氏(以下、坂本):本日はご説明ありがとうございました。事業内容として、システム関連の事業を営んでいますが、どんな事業を行っているのかであったり、特徴の部分がわからないという方がいらっしゃったため、詳しく説明していただいて、理解が深まったと思っています。
全体的に、システム関連の企業では、ここ2年から3年、やはり車載系の仕事がすごく増えています。各社を見てもそうなのですが、そこの利益率が非常に高いというところがあって、システム系の会社の収益を押し上げたところがあります。
もう少し詳しくお話しすると、すごくここは参入障壁が高く、車載で組み込むため、ミスをするとリコールが起こってしまいますので、信頼感がある会社でないと、仕事を頼まないわけです。
ですので、「ぽっと出」の会社にお願いすることはありません。PCIの場合は昔からずっとその仕事をされているため、自動車メーカーもそうでしょうし、部品メーカーもそうでしょうし、そういったところとリレーションをずっと組まれているというところは、非常に強みかなと思っています。
そこをベースに、いろいろとM&Aを実施したりして事業領域を広げているわけですが、そのなかで気になったところを質問させていただきたいと思います。
それ以外のポイントとしては、やはり株主還元の部分かなと思っています。
32ページですが、非常に意欲的に配当されていますし、加えて自社株買いもされているというところは、株主に向いた経営をされている証拠です。M&Aもしていくにも関わらず、配当性向がしっかり50パーセントも出しているというところは、非常にすばらしい経営だと思っています。
利益が横ばいの年もありましたが、増配を切らさないようにという意志も、投資家としては非常にポジティブに映るのではないでしょうか。
それでは、みなさまからの質問もたくさん来ていますので、私からは1点だけ質問させていただきたいと思います。
御社の事業を見ると、4つのセグメントがありまして、大小いろいろあります。そのなかでも、足元はIoTの部分が少し伸びているのかなというところで、これからの展開として、IoT/IoE社会への貢献というところがありますが、こちらの業績の伸びの背景を教えていただきたいと思います。
さらに、先ほど車載、組込みの話もありましたが、IoTは自動運転、AI、画像認識等々のビジネスチャンスがこれからどんどん増えてくると思っています。そこで、未来に向けてのお取り組みと、将来的な売上と利益のイメージをもう少し詳しくお聞かせいただけたらと思います。
阿部:ありがとうございます。まさに当社の成長戦略のご質問をいただきました。まず、IoT/IoEソリューションのこれまでの伸びについて、成長の過程は2つあります。
1つは、おっしゃられたような技術力と信頼性が求められるエンベデッドのなかで、当社は自動車関連が強い会社です。
また、以前はガソリンエンジンだったものが、EV、電気自動車になると、システムを全部入れ替えなくてはいけません。つまり、何をどう制御するかになってきます。そうすると、エンベデッドのなかで培った技術力とお客さまとの関係性、とくにメーカー……当社ではとくに絞っていないのですが、その関係性が重要です。そして、自動運転や自動走行の際に何が必要かと言うと、やはりセンシング技術と通信力です。
道路の情報で、例えばセンターラインに沿って走ろうとすると、そのセンターラインを画像で認識します。あるいはブレーキを踏むときに前方の物体との距離を何で測るかという部分もあります。
ミリ波レーダーを飛ばしたり、あるいはインフラのなかにビーコンを仕込んでおいて、通過すると作動するようなものであったりと、そのあたりは全部連動している技術になります。エンベデッドで培った技術が組み込まれることでIoTになっていきます。
もう1つは、ビジネスソリューションのなかでもお話ししたところです。いろいろな金融機関や通信キャリアともお仕事をしていますが、通信技術に関しては当社も持っているため、非常に入りやすい側面があります。
これが自社開発となると、複数年かかってしまいます。車であれば3年から5年かかってやっと製品になる、あるいは製品にならないケースもあります。そのリスクをヘッジするために、IoT/IoEの分野で特徴のある会社をM&Aというかたちでグループの傘下におさめています。先ほどご紹介いただきましたように、成長の速度が非常に速いわけです。
利益の部分も、もともとは数億円だったものが今は2桁まで見えてきていますので、トップラインを上げながら、サービスを展開することで利益を上げていきたいと思っています。
具体的な視野となると、いろいろな業界動向であったり、世の中の進む方向で変わってくるところがありますので、今はなかなか申し上げることができませんが、やはりIoT/IoEを成長させるために、M&Aも積極的に伸ばしながら、一方で安定的な収益、ビジネスソリューション、エンベデッドソリューションも伸ばしていきたいというのが、我々の成長戦略です。
八木:ありがとうございます。それでは、会場のみなさまからいただいた質問を紹介していきたいと思います。
質疑応答:開発エンジニアの国内・海外比率や採用施策について
坂本:たくさんのご質問をありがとうございます。それでは最初の質問です。「多くのソフトウェア開発企業は、ベトナム等の海外に開発要員を抱えているようですが、御社の約1,000名の開発エンジニアの国内・海外の比率を教えていただけますか?」とのことです。また、「優秀な開発エンジニアを採用するために、御社が行っている施策を教えていただきたいです」というご質問もいただいています。
御社の場合は、海外で開発は少ないのかなとは思うのですが、人材の強みを含めて教えてください。
阿部:まず、エンベデッドソリューションに関しては、まさに今おっしゃったように、お客さまのところにスタッフが常駐しないと開発が進まないというケースがあります。それは、お客さまの環境と言いますか、実際のモデルカーを使って動かすというものは、やっぱり現場に行かないとできないためご一緒しています。
また研究開発、先端的な未来技術についても、当社のエンベデッドのスタッフが入っていますが、メーカーの方も「日本の方がいいです」とおっしゃいます。やはり、機密情報の関係もありますので、そこだけはというご要望もあります。秘密保持もしっかりしています。
ビジネスソリューションに関しては、ベトナムのお話なども増えてきていますが、当社の事業所のなかにも、数名ほど海外の方がいらっしゃいます。
半導体トータルソリューションのところは、一緒に取り組んでいるメーカーがルネサスとソニーです。この2社で、だいたい売上高の60パーセントから70パーセントぐらいを担っているのですが、メーカーが海外(に部門を構えている)というお話も出ているため、今はベトナムにある企業と資本業務提携を結んで、現地で開発したり、現地スタッフを招き入れています。
先日も、半導体のシスウェーブという会社に行ってきたのですが、2人ほどベトナムの方が来ていました。日本語ができないのですが英語が話せたため、ずっと英語で会話していたら、非常に優秀な方で、TOEICも900点以上とのことです。
優秀な方が日本に来て学んだものを自国に持って帰り、自国の技術を磨いています。つまり、国のレベルを上げていきたいということで取り組んでいるケースが多いです。
また人材の育成、教育のところですが、幸いなことに2019年4月で、当社グループには60数名の新入社員が入りました。その方々は4月から6月の3ヶ月間缶詰状態で、プログラミングなどを全部叩き込みます。
これは、当社の新入社員だけではなく、いろいろなパートナー企業の新入社員も一緒に研修しますが、やっぱりライバル心があって切磋琢磨するわけです。そこで培ったものを持って、お客さまのところに7月から9月までOJTというかたちで現場に行きます。そこでお客さまとのコミュニケーションを学んだり、自分が進みたい方向について考えます。
エンベデッドの特徴的なところとして、技術者を育てるということで大学と提携して、現地に寮を借りて研究所に勤務できるのですが、自発的に手を挙げた方に勤務してもらっています。
そのスタッフが帰ってくるとその人が講師になって、先端技術を自分たちのグループのメンバーに伝えていくという構造ができつつあります。このあたりが、メーカーを含めてパイプが強くなっていく理由かなと思います。
手を挙げて自ら参画できるため、この会社にいて「これ、おもしろそうだからやってみたい」など、誰も取り組んでいないから自分で手を挙げてイノベーションしたいという者も増えてきています。
そのようなおもしろみのある環境が提供できるようになってきたことも、将来的な優秀なスタッフの育成には役立つかなと思っています。
質疑応答:競合他社について
坂本:次の質問に進みます。「先ほど御社の人材の強みというお話をいただいたのですが、おもな競合他社を教えてください」とのことです。事業領域が広いため、簡単にお答えいただくのは難しいかなとは思うのですが、ポイントとしてはやはり車載の部分で、他にも競合他社がいらっしゃると思いますので、まずはそのあたりを教えていただきたいと思います。また、ほかのセクターでもよいので教えてください。
それに伴って、「上位20社の契約リピート率が100パーセントというのも御社の強みだと思うのですが、その理由があれば教えてください」という質問です。
阿部:個人の方、機関の方を含めて、投資家から「当社のコンペティターはどこですか?」と聞かれるのですが、なかなか答えが難しいです。PCIホールディングスという上場企業で見ると、純粋持株会社のため、コンペティターとなると難しいです。
自動車分野でのコンペティターについてですが、棲み分けがしっかりしているところで、ブレーキ回り、インパネの電飾系、ウィンカー、エンジン、ガソリン系のそれぞれのところで、最近エンベデッド系の企業が上場しています。
車載機器であったり自動車であったり、そのあたりはあまり「バチバチやる」というよりも、1つの車を作っていくなかで、みんなで協力しているというところがあります。
一方、IT業界は全般的に人材不足が深刻です。とくにエンベデッドの技術者は、本当に枯渇しています。人さえいれば、ソフトウェアを作れれば、もっと先進的なことができるようになるというところがあり、当社としてはエンベデッド技術者をどう育成してお客さまのご要望に応えられるか、というところが1つのテーマだと思っています。
また、ビジネスソリューションと言われるアプリケーションのところは、上場、未上場を含めて数多くのソフトウェアハウスがおり、ここは「バチバチ」と競いながら案件を取りにいっています。そのような事業環境ですね。
そして上位20社の契約リピート率のところですが、やはり信頼関係だと思います。人材育成にも力を入れていますし、当社は離職率が非常に低いとも言われています。実はIT業界の平均で見ると離職率は10パーセントを超えていて、とくに若手は3年以内に30パーセントは離職するような世界が到来しています。
そのなかで当社グループは離職率が1桁前半で、人が辞めないところも、お客さまが安心して発注できる理由だと思います。
あるプロジェクトに参画している方が辞めるなど、進んでいるプロジェクトの途中で、一身上の都合で抜けてしまって別のスタッフを投じるというのはお客さまが困ってしまうため、離職率が低いということもリピートにつながっていると思います。
質疑応答:不景気の際の対応について
八木:別の質問で、「ソフトウェア業は不景気に弱いイメージがあります」ということですが、不景気への対応をお聞かせいただけますでしょうか?
阿部:当社が上場する前に東日本大震災がありましたが、そのときが当社グループの歴史のなかで非常に危うい状況になりました。
そのときは、ビジネスソリューション領域で、ある地方の銀行向けアプリケーション、ソフトウェアを開発していたのですが、震災が発生したとたんに開発ストップになりました。そんなことをしている場合ではなく、まずは行員たちの命を守るのが最優先ということで開発が止まってしまい、業績が落ちました。
そのショックを本当に肌で感じています。日本国内では自動車産業が一番強いと思っていますので、やはりエンベデッドのところでは自動車を中心に進めていきます。
また、みなさまが日常で使っていただくサービスのなかに、当社のソフトウェアや製品を入れていただくことによって、景気の波をリスクヘッジできるのではないかと思っています。
足元では、半導体です。世界中で半導体不況が来たため、当社の半導体トータルソリューション事業も、決算書等を見ていただくとわかるのですが減益になっています。下がるだろうと予想はしていたのですが、ほかのメーカーが剥落していくなか、当社は最後までがんばっていたため残ったのですが、3ヶ月ぐらい遅れて不況の波が来たような印象です。
ただし、足元ではまた案件が増えてきているため、ここは本当に現場のがんばりとお客さまからの信頼あってのものかなと思っています。
質疑応答:配当性向や株主優待について
坂本:これは必ず、みなさまが興味を持つ質問で、株主還元についてです。先ほどお話ししたとおり、御社はかなり成長している企業にもかかわらず、配当も出しますし、自社株買いも積極的に行っているということで、僕のなかではすごくいい企業だと思っています。
質問としては「配当性向はどのぐらいを目指していますか? 数字の目標はありますか?」という質問です。あとは、これだけ意欲的に配当を出されていて配当の意識が高い企業は、株主優待はなくてもいいかなと思っているのですが、「株主優待についてのお考えをお聞かせください」という質問をいただきました。
阿部:株主優待のところはいろいろ経営層と意見交換していまして、何がいいのかというところで、上場来から議論しているテーマです。
どんな商品券がいいのか、また特産品はどうかという意見もあるのですが、当社は東京の会社ですので、特産品もなかったりします。そのなかで、配当というかたちで、みなさまに「利益の果実」を早急に届けることが大切だと思っています。またIT業界は事業スピードが速いため、結果もけっこうすぐに出てきます。
その意味も含めて、2019年9月期から中間配当も行っており、企業の成績の結果をいち早くみなさまにお届けするというところに取り組んでいます。それから、配当を2回行うということは、それなりに財務体質もしっかりしていないとできないことですので、そのあたりも当社の自信の表れとしてとらえていただきたいと思っています。
配当性向の目線は、連結配当性向30パーセントから50パーセントを目安にしています。50パーセントを超えている期もあるのですが、その目線で引き続き進めたいと思っています。
質疑応答:今後のM&Aの方針について
坂本:M&Aについての質問も多かったです。「M&Aについて、積極的に実施ということですが、今後も実施する可能性があるのでしょうか?」という質問です。また、現状ではM&Aした会社で低収益事業もあるのではないかと思います。ここはたぶん、全体的なバランスも考えられていると思うのですが、この低収益事業で買収したところを高収益事業に変えた例などもあれば、みなさまもイメージしやすいのかなと思いますので、あわせて教えてください。
阿部:M&Aに関しては、引き続き継続していきます。手元にも複数社の案件が来ており、タイミングが合えば、あるいは先方との合意が得られれば、またグループのなかに増えていくと思っていますので、ここはブレーキを踏むことなく、どんどん推し進めていきます。
また低収益企業というところで、グループのなかで営業利益率が高いところと低いところがあるのですが、低いからダメかと言うと、決してそんなこともありません。その事業は残存者利益と言いますか、競合があまりいないため、継続してそのままでいいと思っています。
ダイレクトに取引しているところが大手企業であったり、外資系の有名な企業であったり、要はグループのシナジーといったものが生み出せるといった判断のなかで、グループのポートフォリオに置くという戦略もあります。
減収減益はよくないのですが、一定ラインを保っていてくれれば、ほかの企業から収益機会が得られるという意味でも、そのまま置いていることはあります。
現在、7社の子会社がありますが、当社グループに入って減収減益になった会社は1社もありません。全社増収増益です。それが、トップラインがへこむことなく伸びてきているということに繋がっていると思います。
八木:それでは、お時間となりましたので、これにて終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。
会場で寄せられたその他の質問と回答
会場のみなさまから寄せられた質問について、セミナー当日は時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問1:M&Aで売上は上昇しているのに、利益率の伸びが低いのはなぜでしょうか?
回答1:要因はいくつかございますが、M&Aにより発生するのれんの償却も一因です。当社の営業利益はまだ低い水準にございますので、付加価値が高く成長性のある会社が当社グループに参画すると、その償却費用が負担となります。ただし、営業損失を計上するようなM&Aは実施しておりません。
<質問2>
質問2:利益率が物足りないように感じます。今後の成長性を売上に求めるのか、利益に求めるのか、方針を教えてください。
回答2:当社グループの企業規模は満足する水準にはないと考えております。引き続きM&Aや研究開発への先行投資も一定額実施しながら企業価値の向上に努めてまいりたいと思っております。
<質問3>
質問3:5パーセント増収で5パーセント増益と、控えめな予想だと思いますが、その理由は先行投資でしょうか?
回答3:当社の業績予想には成長戦略であるIoT/IoEソリューションやM&Aの影響は織り込んでおりません。そのため、既存事業のみの業績予想を開示しております。
<質問4>
質問4:M&Aのパイプライン案件を何件くらい検討していますか? 差し障りない範囲でその状況も教えてください。
回答4:常に複数の、そして、新しい技術を保有した企業の案件を手元に保有しております。当社グループの方針をご理解いただける企業様とのご縁をこれからも継続して探してまいります。
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