1. 沿革
独立系の不動産投資運用会社。不動産私募ファンドのアセットマネジメント(以下、AM)会社としてスタートしたが、2014年頃から自己勘定投資を本格的に推進し、現在では主力事業となっている。
代表取締役社長の吉原知紀氏は、旧三井信託銀行(現 三井住友信託銀行)、モルガン・スタンレー
2. 事業概要
(1) 投資運用事業
同社は“クライアントファースト”の行動規範のもと、顧客の満足を第一に考える投資運用サービスを行っており、最も利益の出るタイミングにおいて投資案件の売買を行うため、不動産売買市況の変動等に合わせ受託資産残高も大きく変動する。現状、同社ファンドが取得対象としてきた大型物件(50億円超)は、取得競争が激しく過熱感の高い取引環境にある。リーマンショック時にも痛手を受けることなく成長を遂げてきた同社は、“無理して買わない”というスタンスが徹底されたプロフェッショナル集団である。
ファンドの受託資産残高は2019年11月期第2四半期末で13,583百万円(前期末は8,733百万円)である。増加の理由は、投資家が主体的に行う不動産投資活動において同社が期中運営のアセットマネジメント業務を受託したためである。不動産市況が高値圏にあるとの認識から、同社が主体的に投資活動を行うファンドでの取得は控えている。ただし、顧客投資家の待機資金は潤沢であり、マーケットに波乱があれば、機動的にファンドを組成し物件を取得することは可能であり、投資対象となる案件の発掘活動は引き続き行っている。
(2) 投資銀行事業
自己勘定投資が中心である。同社が組成したファンドへのセイムボート投資、PE投資(債権投資、事業再生投資、ベンチャー企業投資)、再生可能エネルギー関連投資や、M&Aにかかる助言などのアドバイザリー業務も展開している。
不動産の自己勘定投資を本格的に開始したのは2014年から。2015年2月のIPOにより手取り資金約30億円を得て潤沢になった手元資金と良好な資金調達環境を背景にした借入により自己勘定投資を加速化した。安定収益である賃料収入の拡大を主な目的とし、中長期保有を前提とするが、バリューアップ後に適宜入れ替えを行うため固定資産とはせずにすべて販売用不動産に計上している。一般的に販売用不動産は減価償却を行わないが、同社は財務健全性を維持するため減価償却を行う保守的な会計処理を採用している。
私募ファンドとの利益相反を避けるため、投資対象はファンドの投資クライテリアから外れる物件とし、10億円前後の中小規模の賃貸不動産が多い。10億円前後の物件は、ストック・流通量が多く投資機会が豊富である。取得先は個人の資産家など不動産のプロでないことも多く、そういった物件は、その不動産が本来持つ実力を十分に発揮できていない(相場の賃料とのギャップ、入居率の向上余地など)ためNOI利回りの改善余地が大きい。
2019年11月期第2四半期末の賃貸不動産ポートフォリオ(自己勘定投資)の残高は、取得価格ベースで49,130百万円(前期末比16,118百万円増)と大幅に増加した。期中増加額が17,929百万円、そのうち70.9%(12,709百万円)は買収した東日本不動産の保有分である。期中減少額は1,811百万円であり、100%が同社売却分である。所在地別の内訳は、首都圏65.2%、その他主要都市34.8%となり、東日本不動産の物件が増えた影響で「その他主要都市」が増加した。アセットタイプ別(複合ビルは主要用途で分類)の内訳は、商業41.7%、オフィス44.1%、ホテル9.3%、住居4.9%、と、商業とオフィスがメインであることに変わりはないが、オフィスが構成比を伸ばした。安定稼働時の想定NOI利回りは6.8%(前期末は6.4%)。マーケットでは高値相場が続いており、利回りを下げて投資する企業も多いなか、同社においては高値で無理な取得をしない方針が徹底されている。外部鑑定によると含み益は4,357百万円である(東日本不動産の事業内容及びポートフォリオに関しては「成長戦略」で詳述)。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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