2. 主力業態・ブランドと特徴・強み
(1) レストラン事業
サンマルクホールディングス<3395>の創業の業態である「ベーカリーレストラン・サンマルク」は、“焼き立てパン食べ放題”やホテル並みのホスピタリティといった付加価値を付けることで、競合するファミリーレストラン等との違いを明確にしている。「ベーカリーレストラン・バケット」はフレンチカジュアルをベースにした料理と、店内の専用オーブンで焼き上げたこだわりの焼き立てパンを楽しめるベーカリーレストランである。「ベーカリーレストラン・サンマルク」はロードサイド・SC(ショッピングセンター)、「ベーカリーレストラン・バケット」はSCを中心に展開している。
現在の主力業態となっている「生麺専門鎌倉パスタ」は、注文を受けてから生麺を茹で上げるスパゲティ専門店である。来店客がゆっくりと食事を楽しめるよう、「和」を基調にした落ち着きのある空間にしている。SC・駅ビル・駅前商店街・商業ビルのインショップなど幅広い立地で展開している。
また同社は「生麺専門鎌倉パスタ」をパスタ業態のチェーン展開におけるリーディングブランドと位置付けて、派生業態の開発・出店を強化している。派生業態である「おだしもん」は、店内で仕込む「お出汁」をベースとしたパスタと和スイーツをメインとして提供する、“お出汁のパスタとあまいもん”という新しいコンセプトのカフェレストランである。「生麺専門鎌倉パスタ」と比較して女性顧客が多く、10~15%程度高い客単価、喫茶需要によりアイドルタイムである14時~17時の売上構成比が相対的に高いこと、喫茶立地への出店が可能などの特徴がある。2024年3月に3店舗目となるサンシャインシティアルパ池袋店を出店した。同じく派生業態の「てっぱんのスパゲッティ」は、並盛300gの“がっつり系スパゲッティ”や名物となっている“1枚ベーコンスパ”など20種類以上のラインナップ、パンチの効いた味付けを特徴とするほか、小規模店舗(25坪程度)で出店可能、早い提供時間と安い価格帯でフードホールタイプへの出店も可能で、テイクアウトやデリバリーの比率が高い(少席数をカバー可能)という特徴も備えている。
「神戸元町ドリア」は、“世界に1つしかないドリア専門店”として30種類以上のドリア、焼きオムドリア、グラタンなどを提供している。毎朝店内で仕込むオリジナルドリアライスと各種ソースの相性にこだわり、火にかけたままの状態で商品を提供している。主にSC型立地で展開している。中華業態の「台湾小籠包」は店内で手包みした自家製小籠包をメインに、点心メニューが特徴の中華料理店である。「すし処函館市場」は、北の国の新鮮なネタを、人肌握りで提供している。
(2) 喫茶事業
喫茶事業の主力の「サンマルクカフェ」は、レストラン業態で深めた品質を中心に据え、代表的なメニュー「チョコクロ」を主力とするベーカリーカフェである。高価格帯の「プレミアムチョコクロ」シリーズが大ヒット商品となり、2024年3月に山梨銘菓「桔梗信玄餅」とのコラボレーションで販売した「プレミアムチョコクロ桔梗信玄餅〜黒糖入り生地&黒みつきな粉もち〜」は同シリーズ史上最高の売上高を達成した(2024年3月末時点)。SC・駅ビル・駅前商店街・商業ビルのインショップなど幅広い立地で展開している。
「倉式珈琲店」は、厳選したコーヒー豆をサイフォンで1杯ずつ抽出して提供するフルサービスの本格的珈琲店である。和のテイストを大切にしたスイーツやバラエティ豊富な軽食も提供している。
なお2022年12月に子会社化したLa Madragueは、関西エリアにおいて喫茶店「マドラグ」を直営店で展開している。食べログ百名店に選出されるなど、京都を代表する喫茶店ブランドとなっている。
(3) 実験業態
2024年3月期末時点の実験業態としては、熟成玄米と健康的な和定食を提供する和食レストラン「奥出雲玄米食堂井上」、素材の旨味を引き出す薄皮で提供する天ぷら専門店の「天ぷら天清」、鉄板料理や焼き立てパンを提供するグリル&ベーカリーの「THE SEASON」、韓国料理と釜炊きごはんの「韓と米」、クロワッサン専門店の「RISTRETTO&CROISSANT LABORATORIO」、パンにこだわった「Petrichor Bakery and Cafe」などがある。ベーカリーカフェ「Petrichor Bakery and Cafe」はNEWoMan新宿に出店(2024年3月)した。店内づくりにこだわったパンや加水率100%の国産小麦のロデヴサンドを使用している。
(4) 特徴・強み
同社の特徴・強みとしては、創業以来の「私たちはお客様にとって最高のひとときを創造します。」という経営理念の下、セントラルキッチンを持たずに店内で調理を行うことにこだわり、できたて・焼き立てのおいしさを届ける「店内調理へのこだわり」が大きな強みとなっている。一般的に店内調理はコスト高になりがちだが、同社は店内調理を前提としながらも、スケールメリットを生かして様々な業務を仕組化して効率化を図り、生まれた時間で高品質な接客・サービスの提供に注力している。
店舗展開は直営店を基本としている(2024年3月期末の店舗数は直営店718店舗、FC24店舗)。パート・アルバイトを含めた従業員と同社の経営理念を共有し、接客サービスや店舗オペレーションの質の向上につなげている。
同社のブランド・ポートフォリオ構築戦略は、既存の成熟市場で高付加価値を求める来店客に対して高品質サービスをシステマチックに提供することで、高付加価値市場を開拓することを基本戦略としている。この戦略を実現するため、同社は独自メニュー開発によるラインナップ充実や接客サービス向上に注力している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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