―市場スタートから20年、コロナ禍の影響でオフィス需要など強弱観―
投資家の高配当利回りを求める志向は強く、株式市場では高配当利回りを背景に海運株などが急騰している。そんな高利回り志向の投資家の根強い人気を集めているのが、REIT(不動産投資信託)だ。高い分配金(株式での配当金に相当)が見込め、かつ投資口価格(株価に相当)も比較的、安定した値動きでミドルリスク・ミドルリターンが期待できる金融商品として注目度は高い。折しも、日本の不動産投資信託「J-REIT」は2001年9月の市場での売買開始から20年を迎えた。見直し機運が高まるREIT市場の足もとの動向を探った。
●東証REIT指数はTOPIXを上回るパフォーマンス
東証REIT指数は高値圏で堅調な値動きとなっている。7月中旬に2200.02と今年の高値をつけた後、一進一退が続くが、直近では2150前後と年初からは約20%の上昇を演じている。ここ急速に上げ足を速めている日経平均株価は年初から9%程度の上昇、約31年ぶりの高値に値を上げてきたTOPIXも同14%程度の上昇と、主要株価指標と比べても東証REIT指数の高パフォーマンスが目立つ。
東証には約60のREITが上場しているが、その平均分配金利回りは3.3%前後と高水準にある。東証1部銘柄の単純平均配当利回りは1.7%前後に過ぎない。また、高利回りが下値を支える格好となり、投資口価格の値動きも比較的安定していることも、人気の要因となっている。
●オフィス需要には依然として強弱観
国内外の投資家を含め根強い人気を誇るJ-REITだが、足もとの不透明要因となっているのは、新型コロナウイルス感染拡大に伴う需要の変化だ。 テレワークの普及などの影響をどうみるかだが、「新型コロナ感染拡大の一服とともにオフィス需要は回復する」との見方がある一方で「テレワーク普及の流れは変わらない」との声も少なくない。ただ、「都心の一等地にある利便性の高いオフィスは、引き続き堅調な需要は維持される」(アナリスト)との見方は多く、ブランド力のある主要ファンドのオフィス系REITは中長期で投資チャンスを迎えているともみられている。
また、巣ごもり需要が追い風となった電子商取引(EC)需要拡大で物流施設に対する需要は強いほか、テレワークによる追い風もあるマンションなどの住宅系のREITに対する底堅い需要を予想する声が多い。
●日本の超低金利環境の継続を海外投資家は評価
とりわけ、超低金利が続く日本の金融市場の環境を評価する声は多い。米国ではテーパリング(量的緩和縮小)が話題となるなど、遠からず金利引き上げも視野に入っているほか、欧州も量的緩和の縮小思惑が浮上している。しかし、日本は超低金利の環境は当分続くとみられている。超低金利で資金調達し、高利回りのオフィスビルなどに投資するという投資戦略に変化はない。
東証によると海外投資家は、今年に入り7月まで1月を除き買い越し基調を続け、累計で2400億円近い買い越しとなっている。また、地銀などを中心とする銀行も3月を除き買い姿勢を続け100億円近く買い越している。
更にJ-REITでは、M&Aに絡む動きも起こっており、米投資ファンドのスターウッド・キャピタル・グループは4月にインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人 <3298> [東証R]に対して、敵対的TOBを仕掛けた。このTOBは、結局不成立となったが、その後、米インベスコ・グループからのTOBが成立し同投資法人は上場廃止となる見通しだ。同投資法人への敵対的TOBは日本のREITの割安さに着目したものとも言われている。それだけに、J-REITへの再評価余地は大きいと言えそうだ。
●ビルファンドやGLP、星野Rリートなどに再評価余地も
個別銘柄では、オフィス系では代表銘柄の日本ビルファンド投資法人 <8951> [東証R]やジャパンリアルエステイト投資法人 <8952> [東証R]は中長期姿勢で投資妙味は大きそうだ。ともに、分配金利回りは3%前後と高い。また、グローバル・ワン不動産投資法人 <8958> [東証R]やいちごオフィスリート投資法人 <8975> [東証R]など。
更に、物流施設型では、日本プロロジスリート投資法人 <3283> [東証R]やGLP投資法人 <3281> [東証R]、日本ロジスティクスファンド投資法人 <8967> [東証R]など。複合型の産業ファンド投資法人 <3249> [東証R]や、住居型のアドバンス・レジデンス投資法人 <3269> [東証R]なども注目される。加えて、先行き経済活動再開の動きが強まった場合、星野リゾート・リート投資法人 <3287> [東証R]などホテルリートが見直される可能性もある。
株探ニュース
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