3. 2021年6月期の業績見通し
イード<6038>の2021年6月期の業績見通しは、コロナ禍が業績に与える影響が不透明なことから未定としている。ただ、ウィズコロナ/アフターコロナにおける市場環境については、新たな生活様式やワークスタイル、企業のデジタル化シフトが継続すると見ており、従来から推進している「メディアの360度ビジネスモデル構築」の強みを生かし、こうした環境変化によって成長が見込める分野において、M&Aも含めた積極的な事業展開を進めていく方針となっている。特に、M&Aに関しては景気が悪化していることもあって買収コストが下がってきており、優良メディアや事業を獲得する好機になると見ている。
M&Aでは2020年6月末に自動車愛好家向けコミュニティサイト「CARTUNE」を運営するマイケルを子会社化したほか、同年10月にプロトコーポレーションが運営するスクール情報検索サイト「グースクール」を譲受する予定となっている。両事業合わせて年間売上規模で2億円弱程度の上乗せ要因となるほか、アニメディア関連事業についても通年寄与により、2~3億円の増収要因になると見られる。足元の収益状況についてはEC販売やECソリューションの好調が続いており、ネット広告の需要も6月以降徐々に回復していることから、コロナ禍の動向が深刻な事態とならない限りは、収益は全体的に上向き傾向になっていくものと予想される。なお、ウィズコロナ/アフターコロナでの具体的な事業施策は以下のとおりとなる。
(1) CMP事業
ネット広告分野においては、出稿意欲の高い業界へのアプローチに注力していくほか、オンライン展示会・セミナーなどコロナ禍でも有効な広告企画提案を進めていく。2020年度はギガスクール構想の前倒しにより学校向けにICT機器の需要拡大が見込まれており、教育関連業界などの出稿意欲が高く、教育カテゴリーのWebサイト「リセマム」や「リシード」の広告収入増が期待される。また、エンタメカテゴリーでも2020年10月に「鬼滅の刃」の映画が公開予定となっており、アニメ雑誌やWebサイトでのプロモーションが行われる予定で、同サイトのPV数も増加するものと予想される。
データ・コンテンツ提供分野では、EC物販の更なる拡大に向け、巣ごもり商品の開発・仕入れ、並びにデジタルサービスの開発・展開に取り組み、自社メディアへのEC機能導入やVTuberを活用したユーザー課金型ビジネスにもチャレンジしていく計画となっている。また、BtoB分野においても働き方改革支援サービス(子会社のエンファクトリーで提供する企業向けの副業支援サービス「副業特区」など)の拡販を進めていく。
(2) CMS事業
リサーチソリューション分野については、海外調査が制限を受けるなか、オンラインでの海外向け定性調査や安全に配慮したオフライン調査を実施していく。営業活動については、自動車業界向けが当面厳しそうなことから、通信やエレクトロニクス業界向けを注力していく方針となっている。一方、ECソリューションについては、ECショップ開設の動きが活発なため、こうしたニーズを確実に取り込んでいく。2020年6月期に富士山マガジンサービス<3138>と合弁会社、(株)イデアを設立して出版社向けECサイト運営事業を開始しているが、引き合いは多いようで今後、ECソリューションの売上拡大につながる取り組みとして期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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