3. 事業トピックス
(1) 学研プラスからアニメ関連事業を取得
2020年2月に学研プラスからアニメ関連事業を25百万円で取得しており、2020年6月期下期に売上高で2億円程度の寄与が見込まれる。利益に関してはのれん償却もあるため影響は軽微と見られるが、イード<6038>では今後、アニメ・エンタメ領域を自動車と並ぶ柱の1つしていく方針であり、グローバル展開も視野に入れて積極的に事業を拡大していく方針となっている。
今回の事業取得では月刊誌3誌と別冊・ムック本などのほか、アニメ関連のWebサイト「超!アニメディア」を取得している。月間PV数は約600万PVと見られ、同社の運営する「アニメ!アニメ!」や「アニメ!アニメ!ビズ」などを含めるとグループで2,000万PVを超え、日本最大級の規模となる。今回の事業取得によって、番組制作・配信、イベント展開、音声コンテンツやVtuber、海外展開など新領域の開拓を進め、また、5G時代もにらんだコンテンツを取りそろえることで、日本のアニメ産業の成長に貢献することを目指している。
海外展開では「アニメ!アニメ!」の英語版サイト「Anime Anime global」を2019年8月末にオープンしている。コンテンツの翻訳についてはファンが翻訳家となり記事の翻訳ができるプラットフォーム「Tokyo Honyaku Quest」を活用しながら、最終的に海外のアニメファンに仕上げてもらい、運営コストの低減を図っている。現在、実証実験中だが既に数百人が翻訳業務の登録をしており、運営に関して順調な立ち上がりを見せている。今後は媒体価値を高めて、広告収入を獲得していく計画となっている。なお、翻訳の対価としては、独自トークン「HON」※を翻訳者に発行している。
※オタクコイン協会が発行するコミュニティ通貨「オタクコイン」と交換でき、オタク系のグッズ等を購入できる。
(2) 子会社で副業支援サービスを開始
子会社のエンファクトリーで2019年11月より、企業向けの副業支援サービス「副業特区」の提供を開始した。「働き方改革」の一環として、社員の副業を認める企業が増えるなかで、企業の人事部では社員の労務管理(副業の内容や労働時間のチェック)が煩雑となることが課題となっていた。こうしたなかで、同社が従来、社内で利用していたプラットフォームを今回、サブスクリプションモデルで外部提供することにした。大企業で関心が高く、既に数社がトライアルで利用するなど今後の動向が注目される。
(3) 富士山マガジンサービスと出版ECサイト運営の合弁会社を設立
オンライン雑誌書店の大手である富士山マガジンサービス<3138>と、出版ECサイト運営支援事業及び雑誌ブランドを活用したEC店舗の運営を共同で行う合弁会社(株)イデアを2019年10月に設立した(出資比率20.0%)。富士山マガジンサービスが保有する約300万人の雑誌定期購読者データベースを活用した通販事業に加えて、同社が保有するECサイト運営クラウドサービス「marbleASP ECサービス」と店舗運営に不可欠なMD(マーチャンダイジング)機能を、ECサイト運営(雑誌販売除く)で収益化を目指す出版社に提供していく。同社にとっては、CMS事業におけるECソリューションの収益増に貢献することが期待される。
自動車、アニメ・エンタメ、教育分野を注力分野として今後も積極的な事業展開を進めていく方針
4. 成長戦略
同社は今後も新規の事業開発や業務提携、M&Aを積極的に進めながら、「領域特化型メディアの拡大」×「多様なビジネスモデル」を掛け合わせた360度のビジネスモデルを構築して成長を目指す方針を打ち出している。現在は、ネット広告収入に依存するビジネスモデルとなっているが、今後はEC物販やユーザー課金等のコンシューマ(BtoC)領域、コンサルティング、EC及びメディア運営支援サービス等にも積極展開していく計画だ。
特に注力する領域としては、MaaSの高成長が見込まれる自動車分野、グローバル展開が期待できるアニメ・エンタメ分野に加え、教育分野などにも注力していく方針となっている。このうち、MaaSに関しては2017年に打ち出した「iid 5G Mobility」戦略(自動車業界における第5次モビリティ革命を支援する取り組み)により、関連するベンチャー企業との業務提携や出資案件が増えてきている。2018年7月からMaaS分野にフォーカスしたセミナーを毎月開催し、年間150社に上るベンチャー企業とネットワークを構築しており、その中から有望と思われる企業に出資または業務提携を結んで、事業化の支援を行っている。
直近では2018年8月に業務提携した(株)ジゴワッツが事業化を進める「バーチャルキー」(スマートフォンで自動車の施錠・開錠を可能とするサービス)が、スマートバリュー<9417>のプラットフォーム「Kuruma Base(クルマベース)」を利用したカーシェアサービス「Patto(パット)」に採用され、数十台の車でサービスを開始している。車内に簡単な装置を取り付けるだけのため、工事費用もほとんど掛からないのが特徴となっている。今後、カーシェアリングサービス事業者やレンタカー、カーディーラー業者向けなどでの需要拡大も期待される。同社は月額利用料の一定率をロイヤリティ収入として受け取る格好となる。
なお、同社は2019年8月に携帯電話販売代理店大手のティーガイア<3738>及び出版社の(株)ポプラ社との間で、今後の協業を目的とした資本業務提携を行い、両社が同社株式の約5%を保有する主要株主となっている。その後の取組状況について見ると、5G時代を見据えてティーガイアが取り組みを開始するeスポーツの分野でティーガイアと協業していくようだ。ティーガイアは2019年11月に米国のモバイルeスポーツ大会プラットフォーム「Game.tv(ゲームドットティーヴィー)」の運営会社であるBlueStack Systems,Inc.に日本でのリリースに合わせて出資しており、今後、リアル店舗でのオフライン大会や、協業によるオンライン大会を実施していく予定にしており、同社が持つノウハウを活用してこれら取り組みを支援していくものと見られる。
一方、ポプラ社向けでは「かいけつゾロリ」や「おしりたんてい」等の優良コンテンツと、同社のデジタルメディア、デジタルマーケティングに対するノウハウを融合することで、コンテンツのデジタル化を進めるプロジェクトをスタートさせている。いずれも、2021年6月期以降に収益貢献してくるものと予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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