―ライフスタイル変化で売り上げ拡大、納入企業にも増収効果―
新型コロナウイルスの感染拡大を背景とした外出自粛やテレワークなどで、人々のライフスタイルが大きく様変わりしている。消費行動もその一つで、これまでの「実店舗へ行って商品を選ぶ」から、「オンラインなどで商品を選び届けてもらう」へとシフトしている。感染者数の減少傾向や政府の「Go To キャンペーン」の効果などで、実店舗への人出は戻りつつあるが、いったん加速した消費行動の変化は、今後も続くとみられている。
こうしたなか、ネットスーパーなどと並んで需要が伸びているのが「生協(生活協同組合)」だ。新規組合員の増加に加え、既存組合員も注文の頻度を増やし、購入単価もアップしているという。関連銘柄にとってもビジネスチャンスが拡大中だ。
●日本最大級の消費者組織
馴染みのない人もいるかもしれないが、「生協」とは、消費者一人ひとりがお金(出資金)を出し合い組合員となり、協同で運営・利用する組織のこと。組合員になることで「Co-op(コープ)」をはじめとする実店舗や宅配が利用できるほか、共済や福祉・介護分野などのサービスも展開している。各地の生協や大学生協、職域生協などが加入する日本生活協同組合連合会(日本生協連)の組合員は2962万人(2019年度末)に上る日本最大級の消費者組織だ。
産直野菜や生鮮食品、日用雑貨などを取り扱う店舗では、地産・地消をテーマにした野菜やPB商品が多い。また宅配では、自宅玄関まで届ける個人宅配のほか、職場や近所のグループに届けるグループ配達などがあり、毎週1回同じ曜日・時間帯に配達される。これらを支える全国を網羅できる自前の物流ネットワークを有していることが強みだ。
●売上高は7ヵ月連続プラスを継続
日本生協連が9月23日に発表した全国65主要地域生協の8月度の供給高(売上高)速報によると、総供給高は前年同月比15.8%増の2486億7000万円となり、7ヵ月連続で前年実績を上回った。
内訳では、店舗が同6.8%増の849億7500万円となったほか、宅配が同21.8%増の1592億5500万円と大幅に伸びた。店舗では相場の影響から農産品が伸長した一方、宅配では行楽や帰省の自粛などによる内食需要の高まりで、全ての分類で伸長したという。
特に宅配が伸びている背景には、ネットスーパーがスポット的な注文に対応している一方、生協は週1回などと定期的にまとめて配達する仕組みであることから、すみ分けができていることが挙げられる。また、定期的に配達されることから、利用者(組合員)の生活のリズムに組み込まれ、定着しやすいといったメリットもある。従来から「置き配」にも対応しているので、非接触による宅配購入も支持されているようだ。
●生協向けが好調な秋川牧園
生協の好調を背景に、生協とビジネスでつながりのある銘柄にも、足もと業績が堅調なものが目立つ。
秋川牧園 <1380> [JQ]は、鶏卵・鶏肉などを製造販売しており、生協及び宅配会社を主な販売先とする生産卸売事業と直販事業を展開。8月7日に発表した第1四半期(4-6月)は、営業利益8300万円(前年同期700万円の赤字)と営業損益が黒字転換したが、特に生産卸売事業の好調が牽引役となった。同社では、第1四半期決算発表と同時に21年3月期業績予想を営業利益で1億4800万円から2億200万円(前期比2.1倍)へ引き上げたが、飼料価格の値下げとともに足もとの販売好調が寄与する見通しだ。
cotta <3359> [東証M]は、菓子 やパン 、弁当などの包装資材や食材などを販売しており、8月12日に発表した第3四半期累計(19年10月-20年6月)連結決算は、営業利益4億4400万円(前年同期比32.1%増)と大幅増益となった。巣ごもり消費の影響で菓子、パンを自宅で作る需要が急増したことが牽引役となったが、生協への生活雑貨品販売を主力とする連結子会社ヒラカワの好調も寄与したとしており、特に4-6月期の生協向け売上高は前年同期比53%増になったという。また、今後も生協の組合員増加に伴う伸長が予想されている。
●スクロールは生協向けカタログ通販が伸長
アイケイ <2722> [東証2]は、自社企画の雑貨や食品、化粧品などを製造から流通まで一貫して手掛けており、販路別では生協ルートが売上高の約4割を占めている。7月14日に発表した20年5月期連結決算で、売上高は前の期比4.9%増の184億8300万円となったが、テレビショッピングが牽引役となったほか、生協ルートなども伸長した。21年5月期は売上高192億6800万円(前期比4.2%増)、営業利益6億5900万円(同11.6%増)を見込むが、生協マーケットの深耕開拓を成長戦略の一つに掲げており、成長継続への期待が持てる。
スクロール <8005> は、衣料品や生活雑貨を中心とするカタログ通販 を主力に、通販事業者の支援を行うソリューション事業やeコマース事業などを展開しており、カタログ通販事業では全国の生協組合員約800万人に向けて毎週カタログを送付している。7月31日に発表した第1四半期(4-6月)連結決算は、営業利益が25億9200万円(前年同期比2.3倍)と大幅増益となったが、巣ごもり需要の好影響を受けたカタログ通販事業が全体を牽引。これを踏まえて、21年3月期通期業績予想を営業利益で19億円から34億円(前期比58.5%増)へ上方修正した。また7月以降も売上高は2ケタ増で推移している。
このほか、ロングライフパンを生協を通じて販売するコモ <2224> [JQ]や、生協を通じて掃除関連用品などを提供するダスキン <4665> 、生協の物流システムを手掛けるトーヨーカネツ <6369> なども注目したい。
株探ニュース
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