1. 有言実行の経営改革で新中期経営計画における初年度目標を実質的に達成
2019年3月、「企業理念」、「経営方針」、「事業戦略の骨子」、「経営目標と財務戦略」、「事業別収益目標」、「コーポレート・ガバナンスの充実」、「重点事業領域」で構成される新中期経営計画が発表された。新中期経営計画では「新規事業への積極的な投資により健康と環境を創造する企業へと変革」することを目標とし、既存事業の積極展開と新規事業への積極投資を柱とする成長戦略がはっきりと示されている。これまでの中期経営計画と比較すると、1)従来に比べ目線の高い経営目標数値を掲げながらも、結果にこだわる経営姿勢であることを強調している、2)新規事業への取組方針を示したロードマップ(数値目標を伴った工程表)が明快である、といった点が特筆される。
新中期経営計画の最終年度である2021年9月期における経営目標数値を見ると、売上高40億円、営業利益8億円、ROE10%以上となっており、前経営陣が2018年9月に公表した数値(売上高23億円、営業利益2.5億円)を大きく上回っている。そして、とりわけ目を引くのが、単なる数値の羅列ではなく「戦略的な資金調達、資金効率、機動的な経営判断、復配」等をキーワードとした成長を支える財務戦略が明記された上で、従来の売上高目標、営業利益目標に加え、ROE目標が掲げられていることであった。新中期経営計画の初年度に当たる2019年9月期目標と実績値を見ると、有言実行の経営改革が迅速に進められた結果、売上高とROEは文句なしに達成、営業利益については未達ながら、経常利益以下の利益動向を勘案すれば実質的に目標を達成したと評価してよいだろう。
2. 明快なロードマップに基づくPDCAサイクル
新規事業への取組方針を示したロードマップが明快である点に注目する理由は、経営におけるPDCAサイクルが回しやすくなるためである。PDCAサイクルとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)を繰り返すことで、継続的に業務を改善する手法であり、サイクルをスムーズに回すためにはロードマップにおける具体的な時間軸とKPI目標の設定が必須と言える。同社の新経営陣は、既存事業の再構築を迅速に完了し、電子カルテ事業や太陽光発電事業、幹細胞培養液事業に対する取り組みもロードマップに沿って実行している。今後は、1)参入済み新規事業の計画数値に対する進捗状況、2)比較的大きい業績貢献を見込み、2020年9月期から取扱いをスタートする計画の大型風力発電事業、バイオマス発電事業への取組状況、等に注視していく必要があるだろう。
3. 2020年9月期は中期経営計画に沿った業績達成を目指す
2020年9月期通期業績の会社計画は、売上高が前期比38.3%増の2,600百万円、営業利益が同433百万円増の390百万円、経常利益が同48.0%減の360百万円、当期純利益が同23.4%増の300百万円と、中期経営計画の2年目に沿った内容が見込まれている。なお、事業別売上計画によると、電子カルテ事業による売上増貢献を250百万円、新規事業立ち上げによる売上貢献を400百万円と見込んでおり、計画達成に当たっての難易度は初年度に劣らず高いように見える。とはいえ、初年度は計画未達に終わった電子カルテ事業では、PDCAサイクルを回した結果、サポート要員の充足が完了、再生医療関連では幹細胞培養ロボットの開発が進んでいるもようである。また、バランスシートやアライアンスを積極活用するビジネスモデルの場合、外部分析者では想定できない案件が準備されている可能性もあり、有言実行の結果にこだわる経営力に期待したい。
一方、2019年3月に公表された新中期経営計画において「財務状況の改善を急ぎ、2021年9月期での復配を目指す」とされていた株主還元実施については、2020年9月期末にも前倒し実現される可能性が高まってきた。配当を実施するためには、フロー利益の改善はもとより、配当原資となる繰越利益剰余金の欠損を解消する必要があったが、資本準備金を530百万円取り崩し、繰越利益剰余金の欠損を全額補填することが決定されたことによる。株主還元は、資本コストや資本効率の管理するうえで重要な選択肢であるだけに、復配の前倒し実現を目指す経営姿勢は高く評価されるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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