1. フロー利益は順調とは言えないが、エクイティファイナンスにより財務体質は良化
2004年3月、イメージ ワン<2667>は伊藤忠商事(株)を第2位の大株主として迎える第三者割当による新株発行(2008年3月に国際航業(株)グループが全株取得)を実施した。これが奏効し、2008年9月のリーマン・ショックや2011年3月の東日本大震災といった厳しい経済環境を乗り越えた後、2015年以降、エクイティファイナンスを活発化させ、事業構造改革と財務体質強化を加速させている。
むろん、株主価値の希薄化には十分留意する必要があるものの、パートナー戦略を伴ったエクイティファイナンスは、財務基盤の強化、事業構造改革や新規事業領域開拓、バリューチェーン強化を通じて、中長期的な企業価値増大を目指すものであり、今後の成果を見守りたい。
同社のフロー利益は、過去10期中(2009年9月期-2018年9月期)、5期において当期純損失を余儀なくされるなど、冴えない状況にあった。繰越利益剰余金は水面下にあるものの、財務体質の安全性を測る代表的な指標の推移を見ると、自己資本比率が2009年9月期末31.8%→2018年9月期末75.5%、流動比率が2009年9月期末140.9%→2018年9月期末407.1%、といずれも大幅に良化している。
この財務体質の良化は、2015年5月のEBMへの資本業務提携を伴う第三者割当による新株発行とマイルストーン・キャピタル・マネジメント(株)への純投資としての第三者割当による新株予約権発行によるところが大きいわけだが、1)厳しいながらも更新需要を迎えつつある国内PACS市場における競争力確保、2)医療分野での新規事業開発、3)GEOソリューション事業の事業構造改革、を推進する原動力となったばかりでなく、新たなパートナー戦略実現につながるものであった。
2016年11月、同社は新たなパートナー戦略として、光通信の子会社EPARKとの合弁でイメージワンゼロットを設立した。その原資として、EBM等への第三者割当増資で得た資金が活用され、2018年5月のエンパワープレミアムへの出資(この原資は、純投資目的のSBIグループ(SBIホールディングス<8473>)及び事業パートナーである光通信グループへの第三者割当による新株予約権発行)につながったわけである。
この間、「duranta」の開発、UAV(小型無人飛行機、いわゆるドローンを含む)関連事業やWebサービス事業への進出、AI技術の導入、新たなマーケティング戦略への取り組みなど、成長に対する布石は着実に打たれており、財務強化と先行投資を両立してきた経営実績は評価に値するだろう。
2. ヘルスケアソリューション事業の収益性が改善、GEOソリューション事業は量的拡大局面に
エクイティファイナンスを活用した事業構造改革の効果が、セグメント情報から明確に読み取れる。まず、ヘルスケアソリューション事業のセグメント利益率(全社コスト負担前)を見ると、厳しい価格競争や「duranta」関連等の先行投資を吸収してプラスサイドを堅持、2018年9月期には14.3%と消費税増税による駆け込み需要が発生した2014年9月期の16.6%に迫るまで向上した。直近における収益性向上は、1)VNAという自社製品の強みを訴求した営業強化策、2)モダリティメーカー等との協業という新たなマーケティング戦略、3)システム導入工程の効率化、などの効果が顕在化した結果であり、一過性の動きではないと考えられる。
次に、GEOソリューション事業のセグメント利益率(同)を見ると、継続課金型事業モデルのPix4D製ソフトウェアと売り切りモデルながら高収益のMalvern Panalytical可視・赤外分光放射計への集中に踏み切った結果、2015年9月期に大幅減収のなかで底打ちを果たした後、2016年9月期から2期連続で20%水準を実現した。2018年9月期は、Pix4D製ソフトウェアの戦略的価格改定(引下げ)や契約代理店網の組成(直販に比べ利益率は劣る)に踏み切りながらも、8.5%の収益性を確保している。GEOソリューション事業は、筋肉質への転換を経て、量的拡大を目指す新たな局面を迎えたと言えるだろう。
同社の場合、全社費用が大きいため、各セグメント利益に事業部門に負わせられない全社費用が含まれないことには留意する必要があるものの、こうした事業構造改革の進展は、2015年5月のエクイティファイナンスの成果として評価してよいだろう。
3. 2018年9月期は増収・黒字転換を達成、2019年9月期は増収・増益を見込む
2018年9月期は売上高が前期比19.3%増の1,653百万円、営業利益が同125百万円改善の40百万円、当期純利益が同128百万円改善の8百万円と、増収・黒字転換を実現した。会社計画に対しては、売上高が上振れ、営業利益は計画線、当期純利益は未達での着地となった。セグメント別に見ると、主力のヘルスケアソリューション事業は、売上高、営業利益ともに過去10年で最高を記録した。GEOソリューション事業については、戦略的価格改定の影響で営業減益となったものの、単価下落影響を数量増で吸収し、微増収を確保した。また、財務安全性指標を見ると、自己資本比率が75.5%(前期末60.4%)、流動比率は407.1%(同280.0%)といずれも一段と向上している。
2019年9月期は売上高が前期比2.8%増の1,700百万円、営業利益が同48.6%増の60百万円、当期純利益が同233.5%増の28百万円と、増収・増益を見込む。売上高47百万円増の内訳は、ヘルスケアソリューションが1百万円増、GEOソリューション事業が46百万円増となっている。この計画には、2019年10月に実施予定の消費税税率引上げ(8%→10%)の影響は考慮されておらず、予定どおり実施された場合、特にヘルスケアソリューション事業において駆け込み需要が発生することになるだろう。ちなみに、前回の消費税増税(2014年4月)が含まれる2014年9月期のヘルスケアソリューション事業の売上高は、14.7%増(2013年9月期は12.1%減)であった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
<MH>
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