メディネット<2370>は、「がん免疫細胞治療」領域の先駆けであり、バイオベンチャーである。創業者である木村佳司(きむらよしじ)氏(現 代表取締役会長)と、がんと分子免疫学の研究者であった故 江川滉二(えがわこうじ)氏(東京大学名誉教授)が東京大学医科学研究所において、当時認知されていなかったがん免疫細胞治療に乗り出したことに始まる。患者へ新しい治療法を提供すべく、「免疫細胞療法総合支援サービス」(当時)という新しいビジネスモデルをデザインし、事業化に至った。
1. 2024年9月期第2四半期の業績概要
2024年9月期第2四半期の業績は、売上高が399百万円(前年同期比14.4%増)、営業損失が658百万円(前年同期は671百万円の損失)、経常損失が632百万円(同669百万円の損失)、四半期純損失が634百万円(同676百万円の損失)となった。利益面では、売上高の大幅な増収及び研究開発費の支出時期の遅れなどにより営業損失は減少した。主力の細胞加工業の売上高は399百万円(前年同期比14.4%増)、営業損失は154百万円(前年同期は133百万円の損失)となった。売上面では、特定細胞加工物製造業での免疫細胞加工受託件数の回復及び価格改定、技術移転一時金に加え、CDMO事業の製造受託料の価格改定などにより大幅な増収となった。利益面では、光熱費等などの高騰に加え、将来の細胞加工受託案件の獲得に向けた体制整備費用や販売費の増加などにより、営業損失は拡大した。
2. 事業活動の進捗及び成長戦略
2023年9月期は新型コロナウイルス感染症の5類移行と経済活動の活発化に伴い、免疫細胞治療患者が徐々に戻ってきた。同社は細胞加工業のなかでも収益の軸足である特定細胞加工物製造業と成長が期待できるCDMO事業の両利き経営を早期に確立し、2025年9月期に黒字化することを目標としている。また、細胞加工の品目や受託メニューの拡大並びにCMDO事業の売上を拡大することで、医療インバウンド患者に過度に依存しない事業構造の変革を進めている。免疫細胞加工受託件数も回復しており、2024年9月期は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)前の水準近くまで収益の回復を目指す。
新たな細胞加工の品目や受託メニュー拡大も徐々に売上高に貢献している。同社が受託した新規加工技術「NKT細胞活性化樹状細胞(がん領域)」は、がん患者にとって免疫細胞治療法が広がり、免疫治療が新たに選択できるようになる。様々な疾患に対して臨床応用されている「脂肪由来間葉系幹細胞(ASC)」は医療機関から同社へ製造委託の問い合わせが増えており、2024年10月には加工受託を開始する予定である。
CDMO事業では、2022年9月にヤンセンファーマ(株)の多発性骨髄腫に対する製品「カービクティ(R)点滴静注」が薬事(製造・販売)承認を取得した。ヤンセンファーマからの治験製品受託製造は順調に推移し、売上高に安定的な貢献をもたらしている。ヤンセンファーマの治験製品製造受託の実績と経験を生かし、市販製品も含め製造受託を目指すとともに、新たな受託案件獲得に取り組んでいる。
細胞加工技術などのニーズの高い中国や韓国をはじめとした東南アジアを中心に、これまで蓄積してきた医療インバウンド患者のルートを有効活用して、現地の医療機関とのアライアンス推進並びに同社の細胞培養加工技術を積極的にライセンス供与していく。
■Key Points
・2024年9月期第2四半期は、特定細胞加工物製造業での免疫細胞加工受託件数の回復やCDMO事業の製造受託料の価格改定などにより売上高は大幅に回復
・細胞加工業の2025年9月期の黒字化に向けて、製造原価率の低減と売上拡大を加速
・東南アジア(中国や韓国など)の現地医療機関とのアライアンス推進と培養細胞加工技術のライセンス供与を推進
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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