ZEDHDは、Web3関連のコンサルティング企業であるチューリンガム株式会社などを傘下に持つ持株会社である。
事の発端は、クシム現経営陣となる代表取締役の田原弘貴氏による金融商品取引法166条2項1号または同法167条の重要事実に該当するインサイダー情報漏洩が当時クシムの社内調査委員会にて認定された事実に加え、同氏が代表を務めていたチューリンガム社の暗号資産管理に重大な不備があったことに由来するクシムの決算遅延にある。その後、2025年2月3日にクシムの旧経営陣が公表した、借入金返済のための代物弁済によるZEDHD株式の譲渡につながった。クシムは、カイカフィナンシャルホールディングス(カイカFHD)に対する529百万円の借入金返済のため、ZEDHDの株式にて代物弁済した。この譲渡により、ZEDHDはクシムの連結子会社から外れ、ネクスグループの傘下に入ったとされる。
一方で、クシム現経営陣はこの譲渡は無効であると主張し、それゆえ、自らは株主だからとZEDHDの臨時株主総会招集許可決定を大阪地方裁判所堺支部に申し立て、その許可決定により株主総会開催を試みていた。ネクスグループは企業統治の公正性及び株主利益保護の観点からクシムを相手に議決権行使禁止の仮処分を申し立て、2025年8月13日に東京地方裁判所による決定でこれが認められていた。それに対して、クシムが原決定の取消しを求める保全異議を申し立てていたものの、東京地方裁判所が本件保全異議申立を退け、8月27日に原決定を認可する旨の決定をした。なお、クシムにて開示された「異議申立てに対する決定の受領及び抗告申立てのお知らせ」において、『本件決定は、(中略)中間報告書の内容を踏まえた判断となっていない』との記載があるものの、本件認可決定はクシムの「調査者からの調査報告書(中間報告)の受領について」において公表された神垣清水弁護士作成の中間報告書が疎明資料として提出され、当該中間報告書を引用したクシム側の主張を踏まえた上での決定となる。
ネクスグループは、今回の決定により、クシムと争いのある株主権はネクスグループに帰属し、クシムにはないものと一応認められ、ZEDHDの経営安定化につながると評価している。今後の本案訴訟において株主地位の有無が最終的に判断される可能性は残るものの、当社は引き続き企業価値及び株主利益の保護に努め、ZED HDの持続的な成長を支えていく方針を示している。
裁判所の仮処分決定の要旨と意義
東京地裁はクシムによるZEDHDの株主総会における議決権行使を、引き続き禁止する決定を下した。
今回の決定は、クシムが形式的に株主総会招集許可を得ていたとしても、実質的には議決権を行使できる立場にはないことを改めて確認したものだ。
裁判所は、仮処分という非訟手続きに基づき、ZEDHDにおける企業統治の公正性やネクスグループの株主としての利益保護を重視し、クシムによる議決権行使を禁止する判断を明確に示した。
ZEDHDの臨時株主総会等に与える影響の見通し
クシムによる議決権行使禁止の仮処分
仮処分決定により、クシムは2025年9月3日に開催予定の臨時株主総会において議決権行使を禁止された状況となる。
株主名簿との不一致によるリスクの抑制
ネクスグループは「正式な株主名簿と異なる構成で株主総会が開催され、議決がなされるおそれがある」と強く警戒している。今回の差止めはそうした「手続きの公平性確保」にも資するものとなる。
法的行為としての予防的防波堤
裁判所は仮処分により法的な保全措置を取った。クシムが株主総会を通じて会社支配を行おうとする動きにより、ネクスグループに回復し難い損害が生じないことが予想される。
今後の法的対抗措置の布石
もっとも今回の仮処分決定はクシムの株主資格そのものを最終的に否定したものではない。ネクスグループは引き続き「ZEDHDにクシムの株主地位は存在しない」の立場を取り、今後は株主地位を本案訴訟にて確定する意向である。
<NH>
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