ドーン<2303>は、地理情報システム(GIS)を活用したシステムの開発・販売を行う企業である。中央省庁や地方自治体、電力会社などでの採用実績が多く、信頼性の要求されるシステムに定評がある。GISエンジンソフトのライセンス販売や受託開発を長年にわたり事業の柱としてきたが、近年は防災や防犯関連のクラウドサービスで業績を伸ばしている。主力の「NET119緊急通報システム」が全国の消防で採用され、人口カバー率は56.5%と過半数を超えた。災害情報共有サービス「DMaCS」も好調に推移している。次期の主力商品として、消防向けの映像通報システム「Live119」が期待されている。
1. 主力事業・サービス
同社の近年の成長の原動力となっているのが、クラウドサービス「NET119緊急通報システム」である。聴覚や発話に障がいのある人のためのシステムであり、スマートフォン・携帯電話のインターネット接続機能を利用して、簡単に素早く119番通報することができる。急病やけが、地震や風水害・火災などの緊急時に、自宅からの通報はもちろん、GPS機能を利用しているため外出先からも通報でき、受信側はすぐに居場所を特定できる。操作性の良さやシステムとしての信頼性の高さが評価され、2015年12月には東京消防庁、2016年10月には大阪市消防局で稼働が開始し、全国の自治体への横展開に弾みがついている。同社では、この他にも複数の自治体・消防・警察向けにクラウドサービスを展開しており、2021年5月期では、クラウド利用料収入の売上高構成比は46.5%に達している。
2. 2021年5月期の業績概要
2021年5月期の売上高は1,119百万円(前期比6.5%増)、営業利益339百万円(同17.2%増)、経常利益343百万円(同16.4%増)、当期純利益237百万円(同18.4%増)と6期連続の増収増益を達成した。売上高に関しては、前期より受託開発売上がやや減少したものの、防災・防犯等の自治体向けのクラウドサービスにおいて既存契約の継続に加え新規契約が積み上がったことにより全体として増収となった。
3. 2022年5月期の業績予想
2022年5月期の業績は、売上高で前期比9.0%増の1,220百万円、営業利益で同9.1%増の370百万円、経常利益で同8.7%増の373百万円、当期純利益で同6.8%増の253百万円と、7期連続の増収増益を予想する。営業利益率に関しては、前期並みの30.3%(前期は30.4%)を予想する。不足する開発人員の本格的な増強を行う計画であり、製造原価及び販管費の増加を織り込んでいる。
4. 成長戦略・トピック
同社は、自動運転時代を見据えた社会インフラ整備にも携わっている。2021年7月、同社が公益財団法人日本道路交通情報センター(東京都千代田区)及び(株)トスコ(岡山県岡山市)と共同で応募提案した「交通規制情報のデータ精度向上等に係るモデルシステムに関する調査研究」が、「戦略的イノベーション創造プログラム※第2期」に採択された。自動運転車が一般道の複雑な交通状況に従って安全に走行するためには、車両センサーが周辺のリアルタイムの状況(歩行者や周辺車両、道路標識・道路標示)を認識する技術とは別に、センサーでの感知が難しい交通規制その他の交通環境に関する情報が、静的なデータ(準静的、準動的データ含む)として車両に記憶され、3D 地図上で高い精度で表現される必要がある。この技術は、ダイナミックマップ(交通規制など刻々と変わる膨大な情報と、道路標識情報などの静的情報を組み合わせたデジタル地図)と呼ばれ、自動運転のキーテクノロジーとして注目されている。三者共同により、ダイナミックマップを構成する交通環境(特に交通規制)に関する情報の整備のための技術要件を研究し、モデルシステムの開発を進めていく。
※SIP、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が司令塔となり、府省の枠や旧来の分野を超えて科学技術イノベーションを実現するために創設された国家プロジェクト。
■Key Points
・2021年5月期は、防災や防犯関連のクラウドサービスがけん引し、6期連続の増収増益を達成
・2021年5月期におけるクラウド利用料収入の売上高構成比は46.5%に
・2022年5月期も堅調に増収増益を予想。開発人員を本格的に増強する計画
・自動運転のためのダイナミックマップ整備に向けたプロジェクトに参画
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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