2. 第5次中期経営計画
(1) 中期経営計画の概要と業績目標
2022年5月期からスタートした第5次中期経営計画「E・J-Plan2024」では、「革新・進化のための基盤整備」をテーマに掲げ、長期ビジョン「E・J-Vision2030」の実現に向けた基盤構築に取り組む期間と位置付けている。基本方針としては、1)既存事業強化とサービス領域の拡充、2)多様化するニーズへの対応力の強化、3)環境変化に柔軟に対応できる経営基盤の構築の3点を掲げ、5つのテーマ(イノベーションを生み出す体制構築、デジタルトランスフォーメーション、人財開発・育成と働き方改革、グローカル経営体制の再構築、ESG経営の推進とSDGs目標達成)に取り組んでいる。
初年度となる2022年5月期の業績が当初計画を超過したことを受け、最終年度となる2025年5月期の目標値を2022年7月に上方修正している。具体的には、連結売上高で380億円から385億円、営業利益で46億円から48.5億円、親会社株主に帰属する当期純利益で31億円から33.5億円にそれぞれ修正した。ROEは10%以上の水準を目指す。4年間の年平均成長率は売上高で2.9%、営業利益で5.9%と堅実な計画となっている。2023年5月期は営業利益で若干未達となったものの一時的な要因であり、公共事業分野では旺盛なコンサルティング需要がしばらく続くことを考えると、業績目標を達成する可能性は十分にあると弊社では見ている。
課題としては、人的リソースの拡充と経営のDXが挙げられる。建設コンサルティング業界は慢性的な人材不足が続いていることもあり、人員の増員ペースは計画をやや下回るペースとなっている。同社では採用力強化に向けて、グループ各社においてホームページの採用関連のコンテンツを大幅に刷新し、Web経由での新卒・中途入社希望者の取り込みを進めているほか、学校訪問によるコネクション強化を図っている。また、グループ全体での採用活動も新たに開始した。さらには、働き方改革に即したハイブリッドワークの実現など職場環境の改善に取り組むことで、定着率の向上や入社希望者の増加を図る。職場環境改善施策の1つとして、2024年6月に東京事業所の移転を決定した。移転先は、JR中野駅徒歩1分の新築オフィスビル(地上20階建て)で、現在の老朽化したオフィスビルと比べると環境面で大幅に改善する。移転に伴う一時費用が2024年5月期または2025年5月期に計上される見込みだが、業績に与える影響は軽微と見られる。賃借料についてはフロア面積が縮小することもあり、現状から若干減少する見通しだ。
一方、経営のDXの取り組みについては、2023年5月期より業務効率の向上や業務プロセスを可視化するクラウドサービスの導入を順次進めており、2024年5月期以降に営業プラットフォームとなる「Salesforce」や基幹システムとなる「SAP」の運用を開始すべく、開発を進めている。これら新システムはすべてクラウド型アプリケーションで構成され、堅牢で高度なセキュリティを確保するとともに、年数回のアップデートにより最新機能が利用できることになり、間接部門だけでなく、受注業務の生産性向上に寄与する取り組みとして期待される。新システムの導入効果について精緻に試算したものはないが、おおよそ1割程度の生産性向上効果が期待できるものと弊社では見ている。
なお、2025年5月期までの4年間で約40億円のイノベーション投資を実施する計画であったが、DX投資の強化や東京事業所の移転等の職場環境の改善に向けた追加投資などもあって、投資額は当初計画を10億円程度上回る見込みとなっている。イノベーション投資の主な内容としては、DXによる業務プロセス改革、生産効率改善のための投資や、BCP対策(感染症対策含む)、働き方の多様化に対応した作業環境整備に係る投資、防災・減災、老朽化インフラ等国土強靭化事業に係る新技術開発のための研究開発投資、多様な人財の採用と育成のための教育・研修関連投資などが含まれる。このうち、業務プロセスのDXを実現するための新ERPシステムの開発費用やDXツールの導入費用など新システム投資額としては2023年5月期実績で9.7億円、2024年5月期で6.0億円、2025年5月期で4.0億円、合計で19.7億円の計画となっている(当初計画は約18億円)。また、これら投資とは別枠で、M&A投資も条件に適う案件があれば進める予定だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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