1. 継続性の高いストックビジネスが売上高の7-8割を占める
通信キャリア各社から直接依頼を受けるインフラ関連業務については、5GやWi-Fi設備などの構築、工事、運用・保守・監視等があるが、ベイシス<4068>においては構築・工事などのフロービジネスは売上高の2-3割に過ぎず、7-8割を運用・保守・監視等の継続性の高いストックビジネスが占めている点が大きな強みとなる。ちなみに、キャリアについて、調査時点では(株)NTTドコモとの取引実績はないものの、ソフトバンク、楽天モバイル、KDDIのキャリア各社と取引を行っているほか、各社の通信規格に対応している点も強みとなる。
IoTについては、電力会社やガス会社との取引実績が多く、現在はアナログメーターから通信機能を備えたスマートメーターへ切り替えるための大規模なプロジェクトの比率が高い。現在の主力のスマートメーター設置においては、電力会社向けの設置はピークを通過したとみられるが、ガス会社向けが本格化している。また、電力会社向けにおいても、耐用年数や新製品に伴う切り替えのほか製品の故障などによる安定した需要が見込まれる、また、それ以外にも、防犯カメラ、マーケティングカメラ、ビーコン、水位センサー、漏水センサー、見守りセンサー、湿度センサー、温度センサー、開閉センサー、スマートロック、保育IoTマットなど多岐にわたり実績を拡大しており、特にAIカメラやセンサーに関する案件の受注拡大を目指している。こちらについては、現在フロー寄りのビジネスではあるものの、大量の機器設置後の保守・運用・管理といったストックビジネスが増えてきており、今後、IoTビジネスが本格化するとともにストック寄りに構成が必然的にシフトしていくことになると弊社では考えている。また、通信キャリアによる5Gの人口カバー率が90%を超えているといったことを目にするが、これは、6GHz未満の周波数帯である「Sub6」となる。30GHz~300GHzの周波数帯である「ミリ波」と比べ減衰が少なく、広域まで電波が届き、障害物があっても、ミリ波に比べて回り込んで届くという特徴がある。ただし、速度と同時接続の性能に関してはミリ波に大きく劣ることから、Sub6で面においてカバーし、ミリ波によってようやく5Gを実感できることから、5Gに関連した需要は引き続き継続することになると弊社では考えている。
2. 大手通信工事会社とは得意領域が異なり競合しにくい
また、同社はその事業種類から、大手通信工事を手掛ける企業と比べられることが多く、ミライト・ワン<1417>、エクシオグループ<1951>、コムシスホールディングス<1721>などが類似企業として取り上げられやすい。ただし、大手通信工事会社とは得意領域が異なり、ビジネス上競合することが少ない。フロービジネスとなるモバイルの工事・機器設置については大手通信工事会社がメインとするところである。同社については現在、楽天モバイルが基地局設置に伴う設備投資を行っていることから、若干フロービジネスの部分は競合するものの、同社がメインとする運用・監視・保守といったストックビジネスで競合することはない。また、この分野の競合についてはNECネッツエスアイ<1973>などメーカー子会社と競合する部分は一部あるが、そのほかは中堅未上場企業となるため、上場会社での競合は少ない。
また、現場で工事を行う業務とパソコンで監視する業務では全く毛色が異なり、通信工事会社は現場で工事をしたいため、運用保守を敬遠する。この領域について、かつては無線機メーカーやメーカー子会社等が競合だったが、これら企業への発注金額は割高となるため、実際に作業を行っていた同社と通信キャリアとの直取引になったという経緯がある。また、テクノロジーの活用による同社の低コスト構造も相まって、現状他社が積極的に参入してくる領域ではないと見られる。
3. 社内の高い技術力を持ったエンジニアとベイシスパートナーズで全国展開
IoTの分野については、競合がほぼいない。一定の地域に数台を設置する業者はあっても、数十万個など大量のカメラやセンサーといった設備を全国的に設置しなければならないIoTの特性を考えれば、全国対応できる業者が他になく、同社は高い技術力と全国対応できる体制を整えている。社内の高い技術力を持ったエンジニアに加え、ベイシスパートナーズという存在がその理由だ。パートナー企業数は2021年6月末時点の292社から2022年6月末時点で365社に増えており、全国規模のプロジェクトに対応できる。これにより日本全国で対応が必要な施工や保守、点検作業などフィールド業務案件を同社で受注し、その対応エリアで対応可能な協力会社に発注する仕組みとなっている。協力会社ネットワークを全国に構築することによって、より競争力を高めることができる点が同社の強みであると弊社では考えている。社内エンジニアについては、第一級陸上特殊無線技士等の国家資格保有者割合が5割を超えているほか、現在も拡大させている。優秀なプロ集団がいるからこそ、全国規模のプロジェクトマネジメント力が高く、企業からの評価につながっていることが強みとなる。
4. 「BLAS」やAI画像認識などのテクノロジーを活用
もう1点はテクノロジーの活用である。特にここ数年、同社はITを活用したサービスに注力しており、独自開発プロジェクト管理ツール「BLAS」やAI画像認識などのテクノロジーを活用することで、生産性の高いサービスを実現している点に強みを持つ。実際、こうしたテクノロジーを活用することで、業務プロセスのDXにより現場から戻ったあとの事務または確認作業時間を9割以上削減するほか、業界全体の稼働率・生産性向上を推進している。
例えば電力会社のスマートメーターへの切り替えでは、1日1,000件の作業を行うなか、新旧メーター間で電力使用量の引き継ぎを行うために、交換前のアナログメーターの指針値を記録する必要がある。この記録が間違っていると料金請求にも関わるためミスは許されない。従来は、現地作業員が作業現場での指針値の記録に加えて作業が終了すると事務所に戻って工事報告書を作成し、管理者がこれを1件1件見て値をチェックしていた。そのため、作業員の報告書作成や管理者のチェックが大きな負担となっていた。
一方、「BLAS」ではAIによる画像認識やRPAを活用したチェック作業の自動化により情報管理を効率化でき、現地作業員は報告書作成のために事務所に戻る必要もないため、移動の負担も軽減できている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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