―アストロスケールに視線集中、M&Aや投資SNS関連などに関心高まる―
6月IPOがスタートする。今月は11社が登場する。中小型株は依然として冴えない展開が続くが、新鮮味があり成長期待も高いIPO銘柄に対する関心は強い。特に、今月は5日に話題の「宇宙ベンチャー」企業が登場する。6月IPOの第1号が人気化すれば、後に続く銘柄への盛り上がりも期待される。ただ、個別銘柄の人気には差がつき明暗が分かれそうだ、との見方も少なくない。
●1カ月程度の休養期間を経てIPO市場が再開へ
6月IPOでは、スタンダード市場に1社、グロース市場に10社が上場を果たす。昨年の18社からは7社の減少となる。4月には6社が登場したが、5月は学びエイド <184A> [東証G]の1社にとどまった。このため、6月は1カ月程度の休養期間を置いて本格的にIPOが再開する格好となる。直近のIPO銘柄では、学びエイドの初値は公開価格に対して32%上昇したが、上場後のセカンダリー(流通)市場では軟調に推移。4月IPOも1社の初値が公開価格割れとなるなか、全体的にはやや盛り上がりに欠けた。
中小型株の値動きを示す東証グロース市場250指数は年初から10%強下落しており、5月には一時コロナ暴落時の2020年4月以来の水準に落ち込んだ。この中小型株の不振については、「時価総額が小さく海外投資家の投資対象から外れている」(市場関係者)点が指摘されているが、「グロース市場に上場し、実際に急成長している企業が少ない」(アナリスト)ことを問題視する声も出ている。これらの点が、以前に比べてIPO銘柄に対する熱気が薄れる要因にもなっている様子だ。
●宇宙ベンチャー関連で「3匹目のどじょう」狙いも
そんななか、6月IPOが始まる。その一番人気銘柄は、何と言っても5日に新規上場するアストロスケールホールディングス <186A> [東証G]だ。同社はスペースデブリ(宇宙ごみ)の除去や人工衛星の寿命延長、点検・観測などの軌道上サービス事業を展開している。具体的には、宇宙の軌道環境を安全に維持するためのデブリの除去や、衛星運用終了時のデブリ化防止のための除去、衛星の寿命延長などを手掛けている。
同社の業績は赤字が続いており、資金吸収額も240億円近辺と大きい。ただ、想定発行価格720円に対して、仮条件は750~850円が提示され、その上限で発行価格は決まった。国内外での公募増資を行い、海外公募株数も引き上げられ、海外投資家の人気も強かったとみられている。宇宙ベンチャーでは、すでにispace <9348> [東証G]とQPS研究所 <5595> [東証G]の2社が株式公開しているが、両社ともに初値は高騰し流通市場でも高い人気となったことから「3匹目のどじょうを狙った買いが集まりそうだ」(市場関係者)と期待が膨らんでいる。もっとも業績面など不透明要因も多く、「短期売買向きで長期投資には向かないのでは」(同)との声も少なくない。
●インテグループやPostPrimeなどに関心
続いて、11日にD&Mカンパニー <189A> [東証G]が上場する。上場日は11~17日のいずれかの日とされていたが11日に決まった。同社は医療機関に対する経営サポートを手掛けている。14日にはChordia Therapeutics <190A> [東証G]が登場する。同社はRNA制御ストレスを標的とするがん治療薬の開発などを行っている。前期を除き業績は赤字基調にある。
18日にはインテグループ <192A> [東証G]が登場する。同社はM&A仲介業を手掛けている。M&A関連企業は数多く上場しているが、「上場後も堅調に業績を伸ばしている企業は少なくない」(アナリスト)と投資妙味を指摘する見方も出ている。資金吸収額は20億円強の見込みだ。19日にはライスカレー <195A> [東証G]が上場する。同社はSNSデータ分析ツールを駆使した企業のマーケティング支援及びブランド販売事業を手掛ける。
20日にはPostPrime <198A> [東証G]が登場する。同社は金融・経済情報プラットフォームのSNS「PostPrime」を運営。投資家・YouTuberとして活躍する高橋ダニエル圭(高橋ダン)氏がCEO(最高経営責任者)を務めている。「マーケットで知名度の高い高橋氏の会社の株式公開であり、上場時には人気を集める可能性がある」(市場関係者)との声が出ている。資金吸収額は10億円強の見通しだ。
●再上場の豆蔵デジタルホールディングスなど注目も
同じく20日にはスタンダード市場にタウンズ <197A> [東証S]とWOLVES HAND <194A> [東証G]も上場を予定している。タウンズは体外診断用医薬品、研究用試薬などの開発・製造販売を行っている。WOLVES HANDは高度医療まで対応可能な動物病院の運営などを手掛けている。続く21日にはMFS <196A> [東証G]が登場する。同社はオンライン住宅ローンサービス「モゲチェック」の開発・提供などを行っている。
27日には豆蔵デジタルホールディングス <202A> [東証G]が上場する。同社はクラウドやAIなどのコンサルティングサービスを手掛けている。20年まで旧東証1部に上場していたが、MBO(経営陣が参加する買収)による上場廃止を経てグロース市場に再上場することも話題を集めている。発行価格は未定だが、想定発行価格ベースでは今期予想配当利回りは4.6%前後と高いことも注目されている。資金吸収額は60億円強の見通しだ。28日にはロゴスホールディングス <205A> [東証G]が登場する。同社は北海道を拠点に注文住宅事業などを展開している。
6月IPO一覧
コード
上場日 ・上場市場 企業名 主幹事
6月5日 186A・東G アストロスケールホールディングス 三菱UFJ、みずほ
11日 189A・東G D&Mカンパニー 大和
14日 190A・東G Chordia Therapeutics SBI
18日 192A・東G インテグループ SMBC日興
19日 195A・東G ライスカレー みずほ
20日 198A・東G PostPrime みずほ
20日 197A・東S タウンズ 大和、三菱UFJ
20日 194A・東G WOLVES HAND SMBC日興
21日 196A・東G MFS SMBC日興
27日 202A・東G 豆蔵デジタルホールディングス SMBC日興、三菱UFJ
28日 205A・東G ロゴスホールディングス SMBC日興
(注)東Sは東証スタンダード、東Gは東証グロース
株探ニュース
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