―OLC新規参入で話題、政府が関連インフラの整備後押しで物色テーマに広がり―
米ウォルト・ディズニー
●「ディズニークルーズ」で年間売上高1000億円へ
OLCは先月、新事業としてディズニークルーズを国内で展開すると発表した。首都圏の港を発着する2~4泊程度の短期航路を中心とし、価格帯は1人当たり10万~30万円台になる予定という。事業投資額は総額約3300億円と、6月に開業したディズニーシー新エリア「ファンタジースプリングス」の総工費(約3200億円)を上回る規模になる見通しだ。
ディズニークルーズは本場・米国でディズニー社が運営する人気のツアーだ。今回OLCはディズニー社とライセンス契約を結んで事業を行う。会社側では既存のテーマパーク・ホテル事業で培ってきたノウハウを生かし、「船旅においてもディズニーならではの非日常体験を展開し、新たな体験価値を創出する」としている。4年後の2028年度に就航し、就航から数年後に年間で乗客数約40万人、売上高約1000億円を目指す。
OLCの新規参入を機に国内クルーズ需要が盛り上がりをみせるとも期待されるなか、海外に目を向けると既にコロナ禍から復活を果たし活況を呈している。クルーズ世界大手の米カーニバル
●国内企業は海運2社の双璧
国内の株式市場においてクルーズ関連株は数少ないが、そのなかで筆頭格は日本郵船 <9101> [東証P]と商船三井 <9104> [東証P]だ。郵船は戦後、貨客船「氷川丸」の引退に伴い客船事業からいったん撤退していたが、1990年に再参入し客船「飛鳥」を就航。その後06年に後継船となる「飛鳥II」を投入し、短距離から日本一周、海外航路まで多様な船旅を提供している。商船三井は前身企業時代の戦前から客船事業を手掛け、89年に日本初となる本格的な外航クルーズ船を就航。現在では客船「にっぽん丸」でクルーズを提供しており、今年12月にはラグジュアリー船「MITSUI OCEAN FUJI」の投入を予定している。
上記2銘柄以外では、伊豆諸島と本土を結ぶ航路を運営する東海汽船 <9173> [東証S]がある。夏恒例の「東京湾納涼船」をはじめ、東京湾周遊クルーズや夜景クルーズなどを手掛ける。曳船(タグボート)大手の東京汽船 <9193> [東証S]は傘下で観光船事業を展開する。このほか、クルーズ旅行予約サイトを運営するベストワンドットコム <6577> [東証G]にも目を向けたい。
●マリコンは業績・配当面で魅力
クルーズ市場には国策の追い風も吹く。政府は昨年策定した観光立国推進基本計画で、25年に訪日クルーズ客数を250万人に拡大させる目標を掲げた。クルーズ船が寄港する港湾数をコロナ禍前の水準(67港)を上回る100港とするべく、旅客施設や岸壁など関連インフラの整備を後押しする構えにある。
先月には全国の港湾管理者らで構成する「全国クルーズ活性化会議」が港湾施設の整備・改修を求める要望書を国に提出しており、今後官民一体で取り組みが進められることになるだろう。こうしたなか前述のクルーズ関連とともに、港湾整備を担う海洋土木(マリコン)関連株もあわせてマークしてみたい。同関連株は国土強靱化や洋上風力発電に絡むなど切り口は多彩で、また業績や配当面で魅力的な銘柄が多い。
マリコン最大手の五洋建設 <1893> [東証P]は「東京国際クルーズターミナル」をはじめ、フェリー乗り場や港の岸壁工事など数多くのプロジェクトを手掛けた実績を持つ。今月6日に発表した4-6月期決算は増収増益で着地。防衛関係のインフラ整備などの公共投資、経済安全保障やカーボンニュートラル推進の観点からの民間設備投資の堅調が追い風となった。通期では2期連続の増収増益を見込む。
大手の東洋建設 <1890> [東証P]、東亜建設工業 <1885> [東証P]にも注目。東洋建は前期に続き今期増収増益見通しで増配も計画。足もと第1四半期はさえなかったが、上期以降に国内土木事業での設計変更の獲得による利益増を見込むため通期計画に変更はない。東亜建は前期に営業最高益だった反動で今期は減益を見込むものの、こちらも増配トレンドは継続。配当利回りは東洋建が5%台後半、東亜建は4%台半ばと高水準だ。
このほか、傘下にマリコン会社みらい建設工業を持つ高松コンストラクショングループ <1762> [東証P]や地盤改良を主力に陸上・海洋工事を手掛ける不動テトラ <1813> [東証P]、北九州地盤のマリコン中堅である若築建設 <1888> [東証P]などがある。
株探ニュース
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