NITTAN、営業利益は前年比+715%と大幅成長 北米生産効率化、舶用部品収益性改善等が寄与
2026年3月期第2四半期決算説明
李太煥氏(以下、李):株式会社NITTAN代表取締役社長の李です。本日はお忙しい中、当社説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。今回の説明会は、機関投資家のみなさまと個人投資家のみなさまの両方に向けて開催します。
当社は、内燃機関部品の分野でエンジンバルブおよび関連部品、精密鍛造歯車を主力製品として製造・販売している会社です。自動車向けエンジンバルブ事業は広く知られていますが、実は船舶用エンジンバルブ事業でも世界トップシェアを築いています。
船舶用エンジンは過酷な環境で長時間稼働するため、耐久性と信頼性が求められます。当社は、その要求に応えるコア技術を長年にわたり培ってきました。この技術力こそが当社の競争優位性の源泉です。
本日は決算説明だけでなく、当社の強みや企業価値向上に向けた取り組みについてもお話ししたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
0. 本日お伝えしたいこと

本題に入る前に、前回の説明会からの変化点についてお伝えします。
まず、当社が取り組んできた利益改善活動の効果が明確に表れ、営業利益は前年同期比で約8倍に拡大しました。この大幅な改善は、北米拠点での生産性向上に加え、2023年12月に発生した舶用部品工場の火災からの復旧と、その後の受注増によるものです。
また、業績改善に加え、日本政府の造船業再生方針を追い風に、株価が10年ぶりの高値となっています。今後も企業価値のさらなる向上と成長戦略を着実に進め、株価を意識した経営を続けていきます。
0. 本日お伝えしたいこと

投資家のみなさまから「情報発信をさらに充実させてほしい」というご要望をいただいていました。その声にお応えする第一歩として、QUICK、野村インベスター・リレーションズ、野村證券による当社のコーポレートリサーチレポートを作成・公開しました。
このレポートでは、第三者の視点から当社を冷静に分析し、これまで十分に説明しきれなかったROICやWACCなどの資本効率指標についても、わかりやすく整理されています。
当社はこのレポートを通じて、投資家のみなさまにより深い理解と安心を提供し、透明性と説明責任を一層強化していきます。今後も継続的な情報開示とコミュニケーションの充実に努めます。
0. 本日お伝えしたいこと

当社は投資家のみなさまだけでなく、本社工場がある神奈川県秦野市周辺地域でのブランド認知度向上にも取り組んでいます。
その第1弾として、月間約228万人が利用する平塚・厚木エリアを走る神奈川中央交通のバス250台に広告を展開しました。広告では、私自身とともに、「NITTAN十傑」と題し、社員10名の熱い思いを紹介し、地域のみなさまに当社をより身近に感じていただくことが狙いです。
また、この取り組みは認知度向上だけでなく、採用活動の強化にもつながる重要な施策であり、中長期的な企業価値の向上に寄与するものと判断しています。今後はさらなるエリア拡大や新たな広告展開も進めていきます。
0. 本日お伝えしたいこと

11月28日に開示しましたが、当社のメインバンクである横浜銀行グループの横浜キャピタルとの事業提携についてお話しします。この取り組みは、当社の中長期経営ビジョン「NITTAN Challenge 10」、略して「NC10」の実現に向けた強化策でもあります。
詳細は後ほどご説明しますが、これは単なる資金調達ではなく、経営課題の解決や成長戦略の実行を支援していただける点が特徴です。当社は経営支援を通じて企業価値および株価の向上を目指し、横浜キャピタルは当社の成長によってキャピタルゲインを得るという、双方にとって「Win-Win」の仕組みとなっています。
目次

では、本題に入りたいと思います。本日はスライドに記載のとおり、4部構成となっています。
第1部および第3部の前半については、執行役員経営企画部担当の村山からご説明し、第2部および第3部の後半から第4部は私がご報告します。
1-1. 会社概要

村山誠治氏(以下、村山):執行役員経営企画部担当の村山です。第1部の「NITTANってどんな会社?」についてご説明します。
まず、会社概要です。当社は1948年に設立され、今年で創業78周年を迎えています。前身を含めると102年の歴史を持つ老舗企業です。
従業員数はグローバルで2,549名、製造拠点は世界に18拠点を展開しています。売上高は2025年3月期で514億円となり、前年比4パーセント増を達成し、過去最高の売上高を記録しました。
当社は日本で初めてエンジンバルブの量産化に成功した企業であり、スライド右下に記載されているように、現在も国内トップシェアを維持しています。
1-2. 会社概要 –Globalの歩み–

当社のグローバル展開の歩みについてご説明します。前身である恩加島鉄工所は、1924年に大阪で設立されました。その後、1948年に日鍛バルブ製造として当社の歴史が始まっています。
その20年後の1968年に台湾日鍛が設立されました。1988年にはアメリカにU.S.エンジンバルブを設立し、1995年にはインドネシアと韓国に進出しました。
ちなみに、スライド中央に記載されている新和精密の設立に尽力したのが李です。これを機にHyundaiグループとの取引が始まり、その後も関係を拡大しています。
また、タイ、中国、ポーランド、インド、ベトナムなどに拠点を設け、グローバルな成長基盤を築いてきました。2022年には社名を株式会社NITTANへ変更し、昨年にはM&Aも成功させ、さらなる飛躍を目指しています。
1-3. 会社概要 –Global展開–

このような成長の結果、NITTANグループは日本に3拠点、海外ではASEANおよびアジアに13拠点、アメリカと欧州に各1拠点の合計18拠点を展開するまでに至りました。
当社のグローバル展開を支えているのは、世界中で働く仲間たちです。国籍や文化、働き方、価値観など、現場には多くの違いがありますが、その違いこそが私たちの強みです。
当社は多様性を受け入れ、尊重し、力に変えてきました。世界中の仲間が互いの違いを認め合いながら、同じ目標に向かって進んでいます。これが当社のグローバル、そしてダイバーシティの形です。
これまで築いてきたグローバルな基盤を誇りに、私たちは中長期経営ビジョン「NC10」の達成に向けて挑戦を続けていきます。
1-4. 会社概要 –Global–

当社のグローバル化とダイバーシティの取り組みに関して、海外拠点の仲間の声をご紹介します。
(動画始まる)
話者:日本本社や他のグローバル拠点との交流で「成長につながった」と感じた経験を教えてください。
Ayesha氏(以下、Ayesha):財務や業務の細部まで正確に取り組む姿勢、時間と品質を同時に重視する姿勢に感銘を受け、仕事だけでなく私生活にも取り入れたいと思いました。
話者:今後挑戦したいことや、Nittan India Techの未来に期待することは何ですか?
Ayesha:Nittan India Techはインド市場で重要な役割を果たし、品質・効率・文化的協働の新たな基準を築いていくと信じています。自分自身も学び続け、イノベーションを起こし、会社の持続的成長に貢献したいです。リーダーシップスキルを高め、NITTANに大きな価値をもたらす新たな挑戦に取り組みたいです。
話者:NITTANのグローバルチームの一員として誇りを感じた経験を教えてください。
Boopathi氏(以下、Boopathi):インドは多文化の国です。日本式のやり方とインドの文化が良い組み合わせであり、この環境で働けることに誇りを感じています。
話者:今後挑戦したいことや、Nittan India Techの未来に期待することは何ですか?
Boopathi:Nittan India Tech全体のシステム化を進めたいです。新しいプロジェクトに挑戦し、事業を拡大していくという大きな夢があります。
話者:自分の仕事が、NITTANのグローバルビジネスに直結していると感じた瞬間は?
Silambarasan氏:新規事業受注時には、本社・設計・営業・海外統括チームとグローバル競争力・ベンチマーク・品質・持続可能性について議論し、成果を上げています。
(動画終わる)
村山:ご覧いただいたとおり、現場では異文化融合が確実に進み、日本の品質文化と多様な価値観が結びつき、当社のグローバル競争力がさらに高まっていると実感しています。このような取り組みは他の拠点でもすでに展開されており、ダイバーシティを原動力として企業価値の持続的向上に努めていきます。
1-5. 売上高及び事業セグメント別比率

連結売上高および事業セグメント別の比率です。2025年3月期の連結売上高は514億円となりました。
その中で小型エンジンバルブ事業の割合は、前年比プラス3パーセントの87パーセントと高い水準を維持しています。この背景には、エンジンバルブの中でも高付加価値製品である軸中空バルブ、傘中空バルブ、盛金バルブなどの売上が伸びていることが挙げられます。
後ほどご説明しますが、当社の中長期経営ビジョン「NC10」を着実に進めることで、事業を多角化していきます。
1-6. 売上高及び所在地別比率

地域別の売上高では、海外売上高が全体の64パーセントを占めています。アジア、北米、欧州のグローバル拠点の強みを活かし、地産地消の体制を整えています。特に北米市場では現地生産体制を強化しており、アメリカの通商政策の影響も限定的と見ています。
1-7. 国内・海外 主要お取引先様比率(連結売上高)

こちらのスライドは、国内および海外の主な取引先別のシェアを表しています。
国内では、系列に属さない強みが発揮され、主要顧客との取引基盤が確立していることを示しています。海外では、特定顧客の比率が高い面もありますが、すべてのお客さまの地産地消のニーズに応えています。
1-8. NITTANの5つのコア技術

売上を支えるNITTANのコア技術についてご説明します。社名の由来にもあるとおり、「鍛造技術」が第1のコア技術です。これは主に熱間鍛造技術であり、複雑な形状を精密に鍛造成形する技術が自慢のポイントでもあります。
第2のコア技術は、過酷な使用環境で求められる材料特性を持つ金属を溶かし、必要な部位に溶着させる「盛金技術」です。これは当社が最も得意とする分野とも言えます。
第3のコア技術は、コストや機能を満たすために異なる性質を持つ金属を接合し、一体化させる「接合技術」です。第4のコア技術は、製品を規格寸法に正確に仕上げる「加工技術」です。
さらに、NITTAN恵那金属の連結化により、新たに「表面処理技術」が第5のコア技術として加わりました。これにより、今まで以上に強みを発揮できると判断しています。
この5つのコア技術を駆使し、NITTAN特有の製品を世に送り出していきます。
1-9. 当社主要製品の搭載箇所

こちらのスライドは、コア技術を活用した当社製品がどこに使用されているのかを示す資料です。
エンジンバルブおよびバルブリフターは、エンジン上部にあるシリンダヘッドに組み込まれています。また、精密鍛造歯車は自動車の後輪間にあるリヤーデフケース内や、オートマチックトランスミッション内に組み込まれています。そして、エンジンの燃費改善に欠かせない製品であるタービンハウジングも、当社グループの主力製品として加わりました。
なお、連結対象会社には含まれていませんが、バルブリフターは新和精密グループで生産・出荷しており、韓国の自動車メーカーであるHyundaiのグローバルシェアの約5割に搭載されています。
これらの部品は一般のユーザーが目にする機会はほとんどありませんが、1つでも欠ければ車を動かすことのできない最重要機能部品です。
1-10. Globalでのトップシェア ~エンジンバルブ当社推定シェア~

当社のグローバルシェアについてです。各事業領域においてトップシェアを有するお客さまと取引を行っており、その結果が反映されていると言えます。
競争が激しい四輪車向けバルブでは、国内メーカー3社の中でトップシェアを維持しています。さらに、船舶用エンジンバルブについては、中速エンジン向けでトップシェアを誇っています。当社はまさにドミナントリーダーと言える存在です。
1-11. カーボンニュートラルに向けての活動状況について

当社のカーボンニュートラル達成に向けた取り組みについてお伝えします。「NITTANカーボンニュートラル(NCN)」というグローバル方針を制定し、海外子会社を含めて愚直に展開しています。
主な施策は、再生可能エネルギーの活用と省エネ活動の徹底です。2024年度のScope1・2・3におけるCO2削減実績は36.7パーセントと、目標を大幅に達成しました。
また、当社の省エネ活動が評価され、経済産業省から「Sクラス優良事業者」として認定されています。これは当社の環境戦略が着実に成果を上げている証です。
さらに、本社工場の事務厚生棟に太陽光発電設備を導入し、同棟の電力の約17パーセントを再生可能エネルギーで賄っています。こうした取り組みは、環境負荷低減と企業価値向上の両立を目指す当社の強いコミットメントを示すものです。
1-12. NITTANの健康経営推進取組

当社の健康経営に対する取り組みをご紹介します。当社では、経営理念として「人間性を尊重し、夢と活力のある職場を創造する」を掲げています。この理念の下、従業員一人ひとりが心身ともに幸せで健やかに働ける環境作りを進めてきました。
10月に実施した「くうねるあるく+ふせぐ」では、全従業員の歩数で競うウォーキングランキングにおいて、参加36団体中13位という結果を収めました。社内でも経営層をリーダーとした対抗戦を行い、李のチームが優勝しました。
また、それ以外にも特保飲料を特別価格で従業員に販売する取り組みを実施し、健康診断結果において改善が見られるようになっています。さらに、李から従業員全員に向けた健康教育も行っています。
従業員の幸せは健康あってのものだと捉え、ワークライフバランス、メンタルヘルス、食環境整備、運動支援の4つの重点施策に取り組んでいます。
1-13. NITTANグループのCSR、SDGs活動状況について

当社グループのCSRおよびSDGsへの取り組みについてご紹介します。SDGsの中でも特に「貧困をなくそう」「質の高い教育を皆に」「陸の豊かさも守ろう」の3つの目標を重点に置き、活動を進めています。
具体的な活動としては、タイでコミュニティスクールの図書館改修支援や植樹を実施しました。インドネシアではマングローブの植林活動を行っています。ベトナムでは日本からの修学旅行生に工場見学を案内しました。
また、日本では地域貢献の一環として、秦野市、伊勢原市、厚木市の小学生向けに当社の仕事を紹介する記事を掲載したほか、秦野市に文房具を寄付して感謝状をいただきました。これらの活動を通じて、私たちは各国で企業市民としての責任を果たし、地域社会とともに歩む企業であり続けたいと考えています。
1-14. NITTANグループのCSR、SDGs活動状況について

7月に宣言した「パートナーシップ構築宣言」の概要とその狙いについてご説明します。当社は、サプライチェーン全体で共存共栄を進めることで、品質や納期のリスクを低減し、持続可能な競争力を高めることを目指しています。
この取り組みは、単なる取引関係にとどまらず、サプライヤとともに強靭なサプライチェーンを構築する共創型のアプローチです。これにより品質や納期のリスクを低減し、結果として、ROICの改善と企業価値の向上につながると考えています。
2-1. 当社グループのパーパスについて

李:第2部の「中長期経営ビジョン」についてご説明する前に、当社グループのパーパスについてお話しします。
私たちは「多様な技術を駆使し、脱炭素化社会の実現に貢献する」をパーパスに掲げています。このようなパーパスを策定した理由は、たとえ内燃機関部品メーカーであっても、持ち前のさまざまな技術を駆使することで、モビリティ業界のカーボンニュートラル達成に貢献できると確信しているためです。
2-2. “NITTAN Challenge 10”

当社の中長期経営ビジョン「NC10」についてです。スライド下段に記載のように、4つの柱をもって中長期経営ビジョンを進めています。
VISION Iは、既存の内燃機関部品の付加価値をより高め、事業の拡大を目指すものです。VISION IIは、電動化領域および異業種への積極的なアプローチにより、新たな事業を開拓することです。
そして、VISION Xは「愉快な開発」をテーマに、従業員の自由な発想からユニークな製品の開発を目指すものです。現在はゴルフパターの開発を進めています。
また、「NC10」ではスライド上段に示しているように、明確な数値目標を掲げています。売上高1,000億円以上、営業利益100億円以上、営業利益率10パーセント以上と、すべて10の倍数であること、さらに10年間での達成を目指していることから「NC10」と呼んでいます。
先ほどご紹介した横浜キャピタルとの事業提携は、「NC10」の達成とさらなる成長に向けた施策です。
2-3. 乗用車&自動2輪 パワートレイン予測 -2020~2040-

モビリティごとのパワートレインの長期予測についてご説明します。スライド右上に記載されているとおり、FCEVは燃料電池車、HEVはハイブリッド車、BEVは電気自動車、PHEVはプラグインハイブリッド車、ICEは内燃機関を意味しています。
スライド左側のグラフは、乗用車向けパワートレインの長期予測です。しかし、変動が激しく、現時点で正確に予測することは困難な状況と言えます。将来的にBEVが主流となることに変わりはないものの、当面はICEの割合が維持される見込みです。また、多くの自動車メーカーがHEVやPHEVに舵を切っています。
スライド右側のグラフは、自動2輪車向けパワートレインの長期予測です。スクーター系は街乗りが中心であり、ベトナムや中国では国策によって、また欧州では環境対応の一環として、一部の都市部で電動化が進むと予測されています。一方、趣味の領域であるスポーツ系バイクについては、ICEが一定量残ると予測されています。
2-4. 商用車&舶用 パワートレイン予測 -2020~2040-

スライド左側のグラフは、商用車向けパワートレインの長期予測です。世界的には中国や欧州を中心に、短・中距離輸送やラストマイル配送用として電動化が進んでいる一方、長距離輸送や大型トラックでは依然としてICEが主流であり、市場規模も増加すると予測されています。
スライド右側のグラフは、船舶向けパワートレインの長期予測です。脱炭素化の流れを受け、電動化よりも温室効果ガスフリーの対応技術が進むと予測されており、特に水素・アンモニアエンジンの開発が急速に進んでいます。
このような市場環境の変化に速やかに対応するため、次世代エンジン開発向けの製品開発にも力を入れています。
2-5. パワートレイン動向予測 まとめ

市場動向を包括的にまとめると、スライドの図のようになります。一番右側に示された棒グラフによると、2040年にはモビリティ全体に占めるICEの比率が68パーセントとなる見通しです。また、2020年と比較してもICEは91パーセントの数量を維持すると予測されています。
電動化が徐々に進む中でも、ICEは一定量残ると見込まれることから、当社は中長期経営ビジョン「NC10」の開発を通じて、ICEとBEVの両方のニーズに対応していきます。
2-6. NC10開発のターゲットアイテム

「NC10」開発のターゲットアイテムについては、スライドに記載したものが挙げられます。
まず、VISION Ⅰには底面鏡面化バルブやハイパー中空バルブが含まれており、これらはICEの燃費改善に寄与するアイテムです。さらに、舶用中空バルブやGHG削減対応バルブなど、ICEが最も長く残るとされる舶用業界向けのアイテムの開発を積極的に進めています。
そして、VISION Ⅱでは減速機やFCEV用モーターローター、EV向けヘリカルギアなどの開発を進めています。その詳細な進捗状況については、次ページからご説明します。
2-7. VISION I & IIの開発状況

パーパスにもあるとおり、当社は多様な技術を駆使し、モビリティ業界のカーボンニュートラル実現に取り組んでいます。
具体的には、VISION Ⅰ領域において、燃費改善とCO2排出量削減に寄与するハイパー中空バルブのほか、舶用ではアンモニアや水素といったGHGフリー燃料に対応するバルブや舶用中空バルブの開発を行っています。VISION Ⅱ領域では、FCEV用モーターローターや減速機などの電動化領域製品の開発にも取り組んでいます。
BEV、HEV、PHEV、FCEV、あるいは、より環境に配慮したICEに至るまで、幅広いパワートレインに対応することで、世界中のお客さまに環境負荷の少ない選択肢を提供し、持続可能なモビリティ社会の実現に貢献していきます。
2-8. 水素社会の実現に向けて

脱炭素社会の実現に向けた取り組みをご紹介します。これは、近い将来到来すると言われている水素社会への備えです。
スライドの図のように、協力メーカーとともに、水素のサプライチェーン「つくる」「ためる」「はこぶ」「つかう」を、それぞれの得意分野を活かして構築していく取り組みを行っています。
水素をより効率的に貯蔵・運搬するためには液体化が必要です。ただし、水素を液体化するにはマイナス253度まで冷却する必要があり、このような極低温環境においても熱膨張しない材料の需要が高まっています。
当社では、その需要に応える低熱膨張合金を開発したメーカーとの連携により、貯蔵・運搬に使用される部品の共同開発を進めています。
2-9. 電動自転車向け減速機(Nixtroid)について

電動アシスト自転車向け減速機「Nixtroid」についてです。VISION Ⅱのアイテムの中でも目玉商品と言える製品で、トロコイドタイプ減速機をNITTANならではのアイデアを基に改良したものです。そのことから「Nixtroid」という名前を付けています。
シミュレーション技術や評価実験技術に加え、3Dプリンタを活用した迅速な試作開発により、従来仕様に比べて約40パーセントのサイズダウンを実現した新仕様を電動自転車ユニットメーカーに納品し、評価をいただいています。1日でも早く量産化を実現できるよう、開発スピードをさらに加速していきます。
2-10. インド戦略について

インド拠点戦略についてです。ご存じのように、インドは人口が中国を抜き、世界トップになったと言われています。また、インドのパワートレイン動向を見ると、ICEが最も長くかつ多く残る国とされており、2040年までに現在の約2.8倍の需要が予想されています。
Hyundai Motor Indiaをはじめ、ローカルのお客さまであるマヒンドラ&マヒンドラ、Hero、Royal Enfieldから多くの新規受注をいただいており、その中には高付加価値バルブである軸中空バルブや傘中空バルブも含まれています。
これらの利益率が高い製品の増産に対応するため、建屋の増築を計画どおりに完了しました。生産能力を現在の年産1,200万本体制から倍増の2,400万本体制に高めることを目指し、引き続き設備投資を進めていきます。
2-11. NC10目標の現在値(25年4月基準)

「NC10」の目標値に対する現在の実績値についてご説明します。今のところ、単純な積み上げでは目標の1,000億円に届かず、スライドでM&A①と示したNITTAN恵那金属を含めても、600億円弱の水準と予想されています。
そこで、横浜キャピタルとの事業提携を通じて、市場戦略、ポートフォリオ経営、M&Aなどを進めることで、持続的成長に向けた取り組みを加速させ、「NC10」の目標達成を目指していきます。
3-1. 2026年3月期第2四半期(中間期)業績総括

村山:第3部の「業績動向」についてご説明します。こちらのスライドは、2026年3月期中間期の業績総括です。
売上高は前期比4.4パーセント減の244億4,000万円となりました。一方で、北米拠点の生産効率化や舶用部品事業の改善により、営業利益と経常利益は大幅に増加し、親会社株主に帰属する当期純利益は上期予想を上回る13億8,000万円となりました。
3-2. 事業セグメント別業績

事業セグメント別の業績です。昨年度まで火災の影響で厳しい状況が続いていた舶用部品事業は、生産体制の正常化に目処が立ったこと、受注増加および収益性の改善により、増収増益となりました。
3-3. 所在地別業績

所在地別の業績についてご説明します。国内市場はNITTAN恵那金属の連結化により増収となりました。アジア市場では、内燃機関車の販売不振の影響を受け、厳しい状態が続いています。
北米市場では、転注の影響で減収となりましたが、生産体制の効率化が実を結び、大幅な増益となりました。
3-4. 連結営業利益増減要因

連結営業利益の増減要因についてご説明します。連結営業利益は、前年同期比で15億1,400万円増加しました。
主な要因として、為替影響額を除いて分析すると、北米の生産体制の効率化と舶用部品事業の収益性改善による原価抑制が挙げられます。これらが利益増加に寄与しました。また、昨年度に実施したM&Aにより子会社化した2社の損益を当期から連結しています。
今後もこの好調を維持し、さらなる安定生産を図るとともに、すべての拠点で原価改善活動を進め、利益拡大に努めていきます。
3-5. 連結貸借対照表

連結貸借対照表については、スライドのとおりです。
3-6. 連結キャッシュ・フロー

連結キャッシュ・フローについても、スライドのとおりです。
3-7. 2026年3月期通期業績見通し総括

李:2026年3月期の通期業績見通しについてご説明します。今回の中間決算では、営業利益・経常利益ともに好調でした。しかし、下期においては、最近発生したお客さまの半導体調達問題やアメリカの通商政策の影響により、販売の一時的な減少が予想されています。
また、通期見通しの試算に用いた為替レートを非常に保守的に設定していることから、現時点では期初に発表した通期業績予想から変更はありません。ただし、2025年度の通期為替レートについては、多くの海外拠点が12月末のレートをもって確定するため、これを踏まえ、業績予想の修正が必要と判断した場合は、速やかに市場へ開示を行う方針です。
3-8. 2026年3月期通期事業セグメント別業績見通し

事業セグメント別の業績見通しについてご説明します。小型エンジンバルブ事業では、ホンダの北米工場における生産縮小の影響が見え始めています。
一方、舶用部品事業では、火災からの復旧とともに、受注の増加と価格改定により増収増益が見込まれています。歯車事業については、販売の減少が続く見通しですが、生産性の改善と新規顧客開拓を引き続き進めていきます。
3-9. 設備投資・減価償却費

今期の投資額は、約53億円を予定しています。国内では山陽工場の鏡面バルブに関する設備投資と基幹システムの更新投資が主な内容です。なお、山陽工場の鏡面バルブに関する設備投資は北米向け輸出品に対するものであり、この輸出品に予想される関税等については価格へ反映することでお客さまと合意済みです。
海外では、インドにおいてHyundai Motor Indiaから多くの新規受注をいただきました。そのため、建屋の増築や生産ラインの増設に向けた投資を進めています。この投資は1段階目であり、2027年度までに2段階目の投資も計画しています。
これらの投資は、スライド右側に矢印で表現しているように、主に利益を拡大するためのものです。今後も同様に利益を伸ばすための施策を講じていきます。
3-10. 中期経営計画

中期経営計画についてご説明します。現在、期初の計画から変更はありません。横浜キャピタルとの事業提携を通じて、「NC10」の目標達成を図り、さらなる成長曲線を描けるよう取り組んでいきます。
3-11. 連結売上高および連結営業利益、ROEの推移

このスライドは、連結売上高および営業利益の推移を2021年度から示したものです。
連結売上高については、自動車関連設備への投資の増加や成長が著しいインド市場における受注拡大といった明るい兆しが見られる一方で、中国経済の停滞や急速な円安による資源エネルギーおよび原材料価格の高騰といった要因から、厳しい受注環境が続くと予想されます。このため、2026年度以降も保守的な計画を立てています。それでも、自動車市場のグローバル平均成長率に近い成長を期待しています。
連結営業利益については、自動化による生産性向上や改善活動の効果、さらに全拠点・全事業の黒字化活動の効果も期待でき、大幅な増収を見込んでいます。
なお、この中期経営計画には、横浜キャピタルとの事業提携による効果は含まれていません。効果が可視化できるようになった時点で、中期経営計画への反映および開示を進めていきます。
3-12. 今後の経営改革について

今後の経営改革について、ROEやROICの改善、政策保有株式の縮減、配当性向からDOEへの転換を掲げていますが、今後の事業環境や業績見通しを踏まえ、慎重に検討していきます。これらに関して開示すべき内容があれば、決定次第、速やかにご案内します。
3-13. 横浜キャピタルとの事業提携について

ここからは、11月28日に開示した横浜キャピタルとの事業提携についてご説明します。今回の事業提携の最大の目的は、NITTANの企業価値向上の実現です。そのための「NC10」の達成に向けたパートナーシップでもあります。
横浜キャピタルによる成長支援の詳細は、事業ポートフォリオ経営の強化、既存事業の収益性向上、新たなスター事業の発掘および育成を進めることです。その手段として、戦略的なM&Aを積極的に進めていきます。
また、当社のメインバンクである横浜銀行グループと横浜キャピタルの専門的な知見を活用し、事業拡大や収益性改善に必要なさまざまなアクションを実施します。これは単なる資金調達ではなく、当社の企業価値向上に向けて伴走しながら経営支援をいただく、包括的な提携です。
3-14. 横浜キャピタルとの事業提携について

資金調達と転換型潜在株式の内容については、社債が15億円、新株予約権が10億円の計25億円です。資金使途としては、VISION Ⅰのインド戦略投資に12億円、VISION ⅡのM&Aに9億9,500万円、さらに自己株式取得に2億8,700万円を計画しています。
3-15. 横浜キャピタルとの事業提携について

株主のみなさまは株価の希薄化を懸念しているかと思いますが、希薄化率相当分を上回る株価上昇が実現しないと転換・行使ができない仕組みとなっており、株主のみなさまへの負担を最小限に抑えたスキームとなっています。
3-16. 横浜キャピタルとの事業提携について

スライドの図は営業利益のイメージです。今回の事業提携による収益性および企業価値の向上により「NC10」の利益目標を達成するとともに、当社が主体となり、グローバル企業として成長を遂げていきます。
4-1. 配当金の推移

第4部の「株主還元」についてご説明します。配当金は中間7円、期末7円の計14円を予定し、安定配当を維持しつつ、株主還元の強化も検討していきます。
4-2.株主優待制度について

昨年から導入している株主優待制度についてです。保有株式数に応じて「QUOカード」を支給する内容となっています。
スライド右下に記載しているとおり、12月11日時点の株価を反映した配当と優待を合わせた利回り率は2.64パーセントです。昨年度から株価が大幅に上昇したことで利回り率は低く見える状況ですが、さらに充実した株主優待制度の検討を引き続き進めていきます。
私どもは株主のみなさまとともに持続的な成長を目指し、企業価値の向上に努めていきますので、今後ともよろしくお願いします。以上で本日のご説明を終了します。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:インド市場への投資理由について
司会者:「社長がインド市場への投資を決定した背景は何ですか?」というご質問です。
李:インド市場は内燃機関にとって非常に魅力的な市場へと変化しつつあります。2040年までに内燃機関の需要が約2.8倍に増加する可能性があるとのことです。
また、以前のような「安ければよい」というマーケットではなく、現在ではほとんどのお客さまが高付加価値・高品質の製品を求めている点も魅力的なポイントです。さらに、インド市場は地政学的な理由から競合他社が参入しにくい点も特徴ですが、当社は12年前から進出しており、これは非常に大きなメリットだと考えています。
今回の投資を決定した主な理由は、高付加価値の傘中空バルブや軸中空バルブの新規受注を多数いただいていることです。また、現在も多くの引き合いをいただいており、今後さらに案件が伸びていくと見込んでいます。そのため、2段階目の投資も計画しています。
インド進出に際しては、お客さまや関係者から「リスクがある」とよく言われますが、現時点では現地人材の不足以外に大きなリスクは感じていません。しかし、このようなリスク分析は非常に重要であるため、横浜キャピタルの知見を活用してリスク分析を行い、事前に予防を図っていきたいと考えています。
質疑応答:現在の株価水準について
司会者:「今の株価について、どうお考えですか?」というご質問です。
村山:日本の製造業全般において、いまだ割安感が否めないと感じています。当社も同様の状況にあると認識しています。
引き続き収益性の改善を進め、PBR1倍を意識した経営に取り組んでいきます。今後も利益率の拡大や積極的なIR活動を通じて、市場で認められる企業価値の向上を目指していきます。
質疑応答:株主優待制度の拡充について
司会者:「株主優待制度の拡充について、今後どのような変更を検討していますか?」というご質問です。
李:今期は株価上昇により、当社の魅力の1つであった高い利回り率がやや目減りした感は否めません。配当金の期初計画は14円とお伝えしましたが、その場合、利回り率は約2パーセントになると考えています。私としては、3パーセント台は維持すべきだと考えていますので、優待制度も含めて検討していきたいと思います。
質疑応答:M&Aの方針について
司会者:「今後のM&A戦略の方向性を教えてください。どのような企業をターゲットにしていますか? また、M&Aによるシナジー効果をどのように考えていますか?」というご質問です。
李:現在、M&Aの候補となる会社は複数ありますが、ターゲットを絞って検討している段階ではありません。当社はグローバル企業であるため、国内外を問わず、あらゆる可能性や異業種も視野に入れて検討しています。
また、今後も内燃機関の需要が継続すると予測しているため、内燃機関部品メーカーも対象から除外していません。当社の得意分野である内燃機関部品メーカーを対象にすることで、即効性の面でも有利になると判断しています。
さらに、当社には多くの海外パートナーがいます。彼らの得意分野で連携することは、当社にとって事業ポートフォリオの多様化や次世代事業の育成につながると考えており、有望な選択肢として検討を進めています。
M&A戦略においては、横浜キャピタルとの事業提携を有効活用し、さらなる拡大を目指して戦略的に進めていきたいと思っています。
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